第165話 ヨハーソン家の歴史Part13
それはピエール私設軍が戦場に駆けつける3時間前………。
まるで張りつめるような雰囲気が広がる会食室。ひとまず気を緩めれば、糸を切られた人形のように崩れ落ちるだろう………。
───クリスは土下座の体勢を整え、頭を床にゴシゴシと付ける。そして全てを覚悟した気持ちで口を開くのである。
「俺の事はどうなってもいいから………仲間を………」
クリスは言った。仲間の為なら自分の命を捨てる覚悟である。戦士団は家族、戦士団の命は俺の命だ。俺が交渉に失敗すれば即ち戦士団の死だ………敵勢力であるギリアム公爵私設軍に敗戦し、捕虜となった仲間は処刑されるだろう。
何としても………。と、クリスはプライドを捨てた気持ちで………。
───土下座姿のクリスを見て、ピエールは少し沈黙してから口を開くのである………。
「頭を上げなさい………」
クリスはピエールの言葉に無視し、頭を床に付ける。交渉が決まるまで、どんな事をされても帰らない。
「頭を上げなさい、クリス・ヨハーソン君。話をさせてくれないか?」
「えっ?」
先程の冷たい言葉とは裏腹に、ピエール公爵の言葉に、土下座姿のクリスは頭をスッと上げる………。
するとピエール公爵は腕を組み、窓の方に向いて威厳のある様子で口を開くのである………。
「君達の事は知っている………。表向きだが、大陸北部や東部で制圧活動している蛮族がいるっウワサになっていてね………最初は脅威として良く思ってなかったが、仲間の為なら土下座もする姿を見て、勇敢な若者だと心を打たれたよ………」
「それなら………」
「私は少し君を見た目で判断していたようだ………申し訳ない。家族や仲間ましては伝統を守る、それが貴族だ。君の交渉に協力するよ」
「ありがとうございますッ!!」
クリスは感情的に声を響かせ、感謝する。まるで地獄から解放されたような気持ちであり、未だに心臓がバクバクと鼓動し、状況が受け入れない自分がいる。
───そして双方は会食テーブルに座り、再び協力の話を開始する………。
「確かに、ギリアム公爵は大陸統一を目指し、彼独自の国を作ると主張はしていた。しかしその思想は社会主義を基本とした独裁的であり、危険だ。もし野放しにすればこの国にある民族や宗教、文化が破壊されてしまう」
「そんな事が………」
「彼は我々に幾度となく協力を要請している。しかしその口調は強引で、断れば武力行使を開始すると脅してきた………我々の方から頼む、共に彼の野望を阻止しよう」
ピエール公爵は真剣に依頼。




