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第150話 皮肉になる思い出




 ミリアはとあるドアの前に立ち止まった………。

 この書斎室の向こう側から(何か)を感じるのである。その(何か)により、ミリアに緊張感が行き渡り、まるで異界の入口のように………一度、入ってしまえば自分自身が戻ってこれないと言う気持ちが膨れ上がる。


 ミリアはゴクッと息を呑み、冷汗を流して………。



───ミリア様っ!!


 過去、城で過ごしたアンゼシカお姉様の思い出が記憶の中から浮かび上がる。私は姫君、彼女は世話係の立場であり、初めはお互い緊張したが、次第に打ち解けた。



───ミリア様は花は好きですか?


───あんまりぃ………。と、庭園で花を眺めるアンゼシカに、ミリアは答える。その頃は花は好きではなく、花粉症になりやすかったからだ。その時、くしゃみをしてお姉様が鼻水を拭いてくれたのは良い思い出だ。


 次、小麦畑にてミリアとアンゼシカは並んで寝転び、思い切り笑い合う。


(お姉様………)



───アンゼシカお姉様、もっとスピード上げてっ


───了解しましたミリア様っ


 大平原にて、幼少のミリアはアンゼシカが乗る馬に乗せてもらい、風を切って駆け走る思い出。壮大な青空、まるで違う世界のように広がる平原、波が行き渡る風。あの時のアンゼシカお姉様の背中は大きく、ずっと抱きつきたくなる程、温たかかった。


 そんな思い出にミリアは………。


(どうしてだろう………何か少し怖いや………)


 ミリアは書斎室の前。困惑した笑みを浮かべ、臆してしまう。自分は知りたい気持ちがある、いや知らなくてはいけない。アンゼシカお姉様の事、しかし何て記されているかと言う(怖さ)がある。



───私と………ダンスの相手をしてくださいますか?


───このアンゼシカ・ヨハーソン。喜んで相手を致しましょう。


 次は王族主催の社交パーティ。ミリアは恥ずかしい様子を浮かべ、アンゼシカお姉様にダンスの相手を依頼。カチコチに緊張するミリアをアンゼシカお姉様はリードするようにダンスを披露する。


(…………アンゼシカお姉様はどんな気持ちで、私と過ごしていたのだろう?)


 ミリアはドアノブに手を伸ばし、プルプルと震える。


 もし、それが嘘偽りで演じていただけなら………本当の事を知ったら私は………自分自身を維持出来るのだろうか………。楽しい思い出が今思い出したら皮肉でもあり、怖くなる。


(それでも私は………)


 しかし、立ち止まっていたら前に進めない。ミリアはパンッと両頬を叩き、決心する。この書斎室に何を書かれていようが私は、受け入れる。



───ミリアはドアを開き、書斎室に入る。


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