第144話 ホセ公爵と談笑するカイエン兄妹とミリア
すると、談笑中の3人に自然と入り込むように………パチパチと拍手して………。
「盛り上がっているようだねアルフレッド君」
落ち着いた口調、コツコツと足音を響かせて談笑中の3人の元に歩み寄るのはホセ公爵。
「ヨハーソン公爵閣下、この度は社交会にお招き頂き、ありがとうございます」
ミリアは頭を下げる。同時にアルフレッドはホセ公爵に視線を向け、緊張感を整えて頭を下げて敬意を払う。
「ありがとうございます」と、クリスティーナも兄に続き、軽く両手でスカートを上げて敬意を払う。
ホセ公爵は上機嫌な表情を浮かべ、腕を組む。
「先程、君達2人のダンスを眺めていたが、中々な芸当であった。初めは落ち着いた流れから、そして情熱的なダンスに社交会は盛り上がり、私も思わず魅入ってしまったよ………」
「恐縮です」
ホセ公爵の言葉に、アルフレッドはビシッとお辞儀。
「ここに来れなかったジェームズとニーナもこのダンスを見たらさぞ喜んだであろう。君の魅力は上がって周りの女性達も放っておかないだろう………」
ホセ公爵は軽く眺める………。
───アルフレッドを好意的に眺める熱い視線、それはドレスを着用した複数の女性貴族達である。ダンスは貴族にとってはステータスとして見られる。
ホセ公爵はアルフレッドを眺める複数の女性貴族に………。
「君も女性関係には気をつけるといい。貴族をステータスにする女性は向上心が高くて情熱的だからな。良かったらこのパーティで興味のある娘に話しかけて出会うのも良い。ジェームズとニーナもそうだったな………」
ホセ公爵は思い出話を語る。
「公爵、自分はまだ婚約には………」
「そうか。そう言えばダンスの話をしていたんだな、自分は少し酔ってしまったようだな………」
ホセ公爵はほろ酔い気分で笑う。
───ホセ公爵を交え、賑やかに談笑するカイエン兄妹とミリア。内容はカイエン兄妹の両親の思い出話や領地運営のアドバイス、そして話題に行き着くのは国内の反民族支配主義によるテロ、王国の隣国である共和国との東側地域の領有権の主張。王国は一方的に東側地域を王国東部として主張し、軍の部隊を派遣して戦争準備を整えている。
王国の東部の領有権主張、そして長年実施している民族支配政策は間違っている………王国貴族の者達は分かっている。しかし、王国の政策に異議を唱え、親民族派の者と判断されたら逮捕され、監獄に投獄され、場合によっては処刑されたりするのでこの社交パーティでしか話せない。




