第142話 ダンスを終える2人
そして………演奏団は演奏を終曲。同時に2人は手を取り合い、ダンスを終了。
「ハァ………ハァ………」
解放されたかのように2人は息を整え、額からは汗が行き渡る。ダンスを終えた後、身体は好調して何処か心地よい感覚だ。
こんな感覚、初めてだ………。と、アルフレッドは言葉では表せない気持ちが全身に行き渡る。
アンゼシカ(真美)はテーブル席からダンスの光景を眺めていた。このイベントはアルフレッドとミリアのダンスイベント、ダンスが苦手だったアルフレッドにミリアが少し強引に誘い、自身のダンスによりアルフレッドにダンスを克服させる流れだ。
そしてアルフレッドはミリアに一目惚れし、作中のED後にプロポーズし、陛下に就任する設定だ。
───ダンスを見物していた招待客は沈黙。
そして………1回の拍手、2回の拍手。拍手は徐々に伝染し、喝采が会場に響き渡る。
(……………)
アルフレッドは拍手喝采に沈黙。拍手の音はまるで降り注ぐ豪雨のように………。
2人は観衆達に一礼し、テーブル席に戻るのである。解放感によりアルフレッドの足取りは浮いており、カタカタと震えていた。
(フム、中々なダンステクニックだな………ダンス嫌いで有名なアルフレッド君をあそこまでリードするとはな………)
テーブル席から眺め、拍手するホセ公爵。
「待ってくれアリシア………」
途中、アルフレッドはミリアを呼び止める。
「どうかなさいましたか?」
ミリアは立ち止まり、アルフレッドに視線を向ける。
「君は何者だ?メイドにしてはあのダンス、ただのメイドではないな?」
アルフレッドは尋ねる。悪い意味ではなく、良い意味で………。ダンスが苦手だった自分をまるで出玉を転がすように上手くリードし、それで………。
「それは………」
ミリアは考える。
(しまった、気持ちが高ぶって思わず………)
アルフレッドは思わず沈黙してしまう。気持ちが高ぶったら口数が多くなるのが悪いクセだ。自覚はしているが、本能的に出てしまう。
するとミリアは………
「少し小さい頃、ダンスを習っていてそれで自分なりにアレンジを加えて………」
「そうか。変な事を聞いてすまなかった」
アルフレッドは謝る。
「いえ、アルフレッド様も中々なダンスでした」
「………そうか、ありがとう。その、君とのダンス、楽しかった。苦手だったダンスが少し好きになったよ」
アルフレッドは言った。しかし何故だろう。相手はメイドなのに、この場で彼女と言葉を交わすのに何故か緊張してしまう。




