第140話 ダンスに誘うミリア
「貴族たるもの、ダンスは上手くなりたいと思っていたんだけど………やっぱり自分には………」
アルフレッドはタメ息を吐き、テーブルに着席し、ネガティブに頭を抱える。このパーティを機に、苦手なダンスを克服したいのは本心だ。ダンスが苦手な訳、社交ダンスになると2人だけの世界と言う意識によってあらゆる緊張が働き、気持ちが硬直してしまうからだ。
アルフレッドの姿に、クリスティーナは見兼ねた様子で歩み寄る。
「お兄様は、苦手なダンスを克服したいですか?」
クリスティーナは真摯な姿勢で質問する。
「まあな、けど無理な願いだけど………」
するとアルフレッドの言葉に対し、クリスティーナはミリアのスカートを掴み、口を開く………。
「アリシア、お兄様のダンスを相手してあげて下さいな………」
「私が、アルフレッド様と?」
「お兄様は貴族相手だと緊張するのです。メイドのアナタなら、少しは安心するハズです」
クリスティーナは提案。
「それなら、私も協力を致します」
ミリアは快く了解した。使用人たるもの、招待客には満足した気持ちで帰って欲しいからだ。それに………ダンスには自信はある。
そしてミリアはアルフレッドに歩み寄る。
「アルフレッド様、私とダンスの相手をしてくださいませんか?」
ミリアはスカートを両手で軽く上げ、アルフレッドに言った。
意気消沈しているアルフレッド。ミリアの言葉に対して視線を向け、ネガティブな口を開く。また、ダンスに誘った女性をガッカリさせてしまうのではないか………。と、気持ちを踏みとどまるアルフレッド。
女性からのアプローチが苦手なのは、自分の自信がない性格からであり、逃げてしまう。
「君が………僕のダンスの相手を?」
アルフレッドは殻から様子を伺うような声。
「はい」と、アルフレッドの言葉にミリアは笑顔で軽く頷く。
「僕はご覧の通り、ダンスが苦手だ。もし君が僕の相手をしたら………」
「アルフレッド様、行きましょ」
ミリアはウジウジしているアルフレッドの手首を掴んで引っ張り、ダンスに誘う形で連行する。
「ちょっ………君っ」
テーブル席から立たされ、アルフレッドは強引に引っ張られて連行するミリアに困惑。
「アリシア、アルフレッドお兄様、がんばって〜~」
クリスティーナは手を振り、見送る。
自分を引っ張る彼女の背中姿は………それはとても大きかった。まるで殻に閉じこもり、次の一歩を踏み出せない自分を導く者のような………。
少し強引だか、彼女の(何か)の魅力に惹かれる自分が僅かにいる。
会場内にて談笑する招待客を次々と潜り、そして………。




