第138話 気づかれない寂しさ
「アリシアかくほぉ〜」
クリスティーナは歩み寄り、ミリアに吸い込まれるように抱きつく。
「ようこそいらっしゃいました、クリスティーナ様」
ミリアは抱きついてくるクリスティーナの頭を撫で、心優しい気持ちで迎える。どうやらクリスティーナに懐かれてしまったらしい。自分はたまに同性に懐かれる特性を持っており、アンゼシカお姉様も私が懐いてた時も同じ感覚なのか………。
………自分には兄弟姉妹がいない為、妹みたいで悪い気分ではない。
「また会ったなアリシア」
クリスティーナの後に続くように、アルフレッドが歩み寄る。昼間の衣装とは違い、キッチリとした金色の装飾が施された緑色のタキシード。
「アルフレッド様も、ようこそいらっしゃいました」
ミリアは頭を下げる。
「アリシア、私の衣装どう?」
クリスティーナは顔を上げ、陽気に尋ねる。サラっとしたロングヘアーに衣装は純白、白のカモミールを表現したような袖無しのドレス。そして首元には彼女がお気に入りであるペンダント。ペンダントにはカモミールの形が職人によって形成加工され、輝いている。
「よくお似合いです、クリスティーナ様」
ミリアは答える。
「アリシアァ〜~~~」
ミリアの言葉にクリスティーナはデレデレと抱きつく。
───そしてダンス会場にて………。
(ミリアさんがいる所に私アリ………今は令嬢に扮装している)
アンゼシカ(真美)は会場を歩き回るつつミリアを見守る。隻眼マスクを掛け、袖無しの灰色ドレスを着用。派手な衣装を着用したらさすがに気づかれるからだ………。今は少し仲はアレだけど、ミリアに異変があれば即座に対応出来るからである。
どうやってダンス会場に入り込んだかは………給仕係として会場に潜入し、そしてドレスアップ。
───しかし、さすがはファンタジー。貴族のダンスパーティは華やかで、まるで漫画やアニメの世界をそのまま再現したかのような雰囲気だ。前世では縁の無い世界である。
クラシックな演奏団による音色が会場に響き渡り、招待客の心を和ませる。
使用人の男性を止め………。
「とりあえず、1杯くださらない?」
アンゼシカ(真美)は使用人からシャンパンを貰い、上品に口に運ぶ。
違和感はない………。途中、他の貴族から話しかけられるが、そこは上品かつ華麗な言葉で適当に断るのである。
(とりあえず、ミリアさんにはバレてないね?)
アンゼシカ(真美)はミリアとカイエン兄妹の貴族と談笑する光景を眺める。いつもならミリアに気づかれて溺愛してくるが、気づかれない寂しさもありながら、見守るのである。




