第130話 メイドに勤しむミリア
次、野菜の皮切りを終え、メイドのミリアは2人組の招待客を客室に案内し、荷物を運んで廊下を歩いていた。隣には社交パーティに招待された平民夫妻。夫妻の年齢は40代、町で何らかの功績を評価され、公爵様から社交パーティに招待状を受け、参加を承った。
そして客室に辿り着き、荷物を置くミリア。別の使用人やメイドが部屋をメイキングしていた為、高級感を漂わせる室内となっている。
───すると男性の方が親しい姿勢で口を開く。
「公爵家の社交パーティに招待を頂き、ありがとうございます」
と、夫妻と共に頭を下げる。
「こちらこそ社交パーティに参加を頂き、ありがとうございます」
ミリアも王族家に代々伝わる作法による姿勢を活かし、両手でスカートを軽く上げ、頭を下げる。
すると男性は、ミリアの立ち振る舞いに、思わず………。
「君は………メイドなのに、貴族みたいな振る舞いをしているね?」
(ハッ………)
───男性のセリフにギクッとなるミリアは貴族に憧れていた。と、適当にクスクスと誤魔化してやり過ごす。今は追放された身、表向きでは体調不良により代理大臣が陛下をしている。元は王族であるとバレてしまえば、大変な事になるからだ。
「本日は公爵家主催の社交パーティに参加頂き、ありがとうございます」
ミリアは招待客に対し、立ち振る舞うのである。
その後も………2組の招待客を相手に同じ作業。荷物を預かり、招待客を客室に案内したり、勤しむのである。
王室で身につけた礼儀作法を立ち振る舞い、自分が姫様とは気づかないものの、やはり貴族ではないか………と、思われる事もある。自分でも王室にいた頃は、貴族と接する時は礼儀作法で立ち振る舞うのが常であり、クセである。幸い、知っている貴族の方はいない。もし疑われても(貴族に憧れを抱いている)と、伝えて誤魔化せばいい。
★★★★★★
───次、館外の庭園にて他の招待客達が昼間のパーティを楽しんでいた。テーブルには軽食のスイーツが所狭しと並び、招待された貴族と平民達が談笑を楽しんでいた………。昼間と夜にてパーティは行われ、夜はダンスパーティの予定である。
一方のミリア。料理が無くなった皿を下げ、厨房から別の料理を運んだり、招待客の案内したりと勤しんでいた。
(フゥ…………)
額からは流れる汗を払い、ミリアは働く。
王族の姫からメイドに転身、悪く例えれば転落。しかし、彼女はあまりメイドと言う立場は悪い気はしない性格である。むしろ好きな方であり、王族主催の社交パーティでは余計な神経を使わなくて済むからだ。




