第128話 ロメロ、ホセ公爵の正体
(あれは一体、どういう意味だろう………)
ホセ公爵が去り際に言い残したセリフに、ミリアは何処か心に引っ掛かったような気持ちになりつつ、中庭テラスを掃除するのである。今は考えている場合ではない、目の前の作業に集中するだけだ。
とりあえず、他の使用人達と一緒に中庭を掃除するのである。自分で説明するのはアレだが、かつて城で王族として暮らしていた者とは思えない程、真面目にメイドをしている。
★★★★★★
───すると、ミリアが見えない所から………。
(フム………)
場所は2階の廊下。中庭テラス全体を見渡すように、掃除中のミリアを眺めているのはロメロ。
ロメロの元に1人の男性が歩み寄り、そして尋ねる。
「ここに帰って来るのは久しぶりだな、ロメロよ」
「お久しぶりです、公爵様………」
ロメロは敬意を払い、お辞儀。
「彼女の様子はどうだ?」
ロメロの隣に立ち、話し掛けているのはホセ公爵。
ホセ公爵の質問に、ロメロは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ………。
「大丈夫です………皆には馴染めていますし、心配はないかと………」
ロメロは答える。本当の事は今は伝えられない。
「そうか、ならよい………。このバカげた民族支配と軍事力の強化、かつてこの国を支配していた悪魔と戦った同志として、そして国を変える為、我が娘が彼女を計画追放して陛下となって、今思えば………」
ミリアを追放して罪悪感を感じるホセ。
「ミリア様を守るように公爵様から命令を受けた身です。これからもお任せ下さい」
ロメロはビシッと敬意を示し、頭を下げる。
「そうか、お前にミリア様を任せる………」
ホセ公爵は言った。
さらに他のメイドと一緒に掃除をするミリアの姿を見て、ホセは名残り惜しい様子で口を開く。
「キレイになったな………若かりし頃の彼女の母君にそっくりだ」
「はい。剣や魔法の実力や状況の判断力、冒険者としての器量は申し分ありません。時に女性に溺愛する癖はありますが………」
「そうか………ところで、君の正体はバレてはいないか?」
「はい、大丈夫です。彼女には変な不従事を引き起こして解雇された執事として説明し、それに王族と公爵家は歴史上では断絶関係、ミリア様は公爵様の事は知らないかと………」
「なら良いが………お前のその冷静かつ地味な閃きに毎回驚かされたが、これからも彼女を見守ってくれ。亡きアリシア王妃の為にな………」
ホセ公爵はホッとひと安心しつつ、ロメロに頼む。
「承知しました………」
ロメロは礼儀正しく応える。




