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第126話 中庭テラスにて………。




 ホセ公爵の長話を終え、社交パーティに向けて使用人達は館中を掃除。廊下、壁、天井をホコリ1つ残さず、マスクを着用した衣装を身に着け、ヨゴレを払い落とす。大きな花瓶に装飾の鑑賞花を供え、各客室をメイキング。


 社交パーティに招待されたのは周辺貴族と称えた平民を含め、50人程である。当初は70人だったが、20人はテロリストの警戒もあってか辞退している。


(この光景、私は覚えてるかも知れない………)


 天気は快晴。心地よい風が広がり、ミリアは2階の中庭テラスにて他のメイド達とホウキを持って掃除したり、他は使用人は中庭から外に集中して、不審物の観察をしたりする。


 すると、ミリアに記憶の中に映し出される………。中庭テラスにて1人の女性が赤ん坊を抱え、この中庭テラスを訪れていた………談笑しているのは若い頃のホセ公爵、そしてその他貴族達。その女性の面影はミリアに似ていて、恐らく生前の………。


 映し出された記憶はうやむや、今は思い出せないだろう………。


(…………)


 ミリアは女性が座っていたベンチを眺める。

 思い出そうにも、思い出せない………まるでもう少しで手の届きそうな位置なのに、手が届かない。今、記憶の中で映し出されるのは女性に抱きかかえられ、赤ん坊は無邪気に笑って周囲を和ませている。


 すると、中庭テラスの扉が開き、周囲の使用人達は頭を下げる。


「準備中に失礼する。何か変わった事は無いか?」


 入って来たのはホセ公爵。近くにいるメイドに尋ねる。


「いえ。今の所、異常はなしです」


 メイドは答えた。


「うむ、ご苦労。引き続き、準備と警備を続けてくれ」


「かしこまりました、公爵閣下っ」


 メイドは頭を下げ、持ち場に戻るのである。周囲の警備に集中する理由、それはテロリストによる襲撃を警戒している。テロリストにとって王国貴族は敵対関係にある。王国が実施している政策を支持し、様々な情報や資金を提供して協力している。しかし、王国の政策に協力する貴族は賛否に別れ、賛成派と否定派と分かれているのが現状だ。

 

 どちらかと言えばホセ公爵は、王国の民族支配政策には否定派であるが、どの勢力にも資金や情報も提供していない。しかし基本的に王国貴族は、テロリストの敵、襲撃してくる可能性も否定できない。

 

───それに、ホセ公爵は王国軍が東部に集中し、軍を派遣して共和国との戦争準備は否定派である。

 

(誇り高き、ヨハーソン家の祖先達よ、事態は最悪まで迫っている。どうか、我が娘に、王国に幸があらんことを………)


 ホセ公爵は風に当たり、悲哀に満ちた様子で黄昏れるのである。


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