第113話 悪夢(ナイトメア)
ミリアは息を切らし、ひたすら走る。
黒い景色、周囲は倒壊した建物。獄炎のような炎が広がり、地面には無数の死体が転がる。
───ッ!!
ミリアはショートソードを振るい、敵を次々と斬り伏せる。敵は反民族支配主義の構成員、脱げたフードから覗かせる死顔。瞳孔は開き、口から血を吐き出す。
それでも………ミリアは走る。
額には返り血、かれこれ、何人の人を斬り伏せたのだろう。人を斬れば最初は震えるが、何人も斬り伏せたら慣れた。人を殺して慣れて、自身が人間ではないような感覚だ。
自分を守るため、人を殺せば殺される………だから敵を倒すのである。
───そして………1体の構成員を両断し、ミリアは辺りを眺める。
「マスク・ド・a様ッ!!」
ミリアは安心した感じで呼び叫ぶ。目の前には愛しきマスク・ド・a。しかし………。
アンゼシカ(真美)は無言で大聖剣を抜き、片手で担ぎ上げる。
「マスク・ド・a様?」
どうして………と、ミリアは分からない様子。
「悪魔よ、貴様をこの場で葬ってくれる………」
アンゼシカ(真美)は大聖剣を片手で突きつける。
「悪魔?私はミリア、ミリア・ミア・シュバルツッ!!」
「違う、お前はミリアではない。罪なき者を殺し、そして人々から大切なモノを破壊した悪魔だっ!!」
アレックスは憎しみの声を響かせ、出現。
そして、デビッド、ロメロ、サウルも出現し、戦闘体勢を整える。
ミリアは両手を眺め、自身の姿に絶句した。
その姿は、無限のD(インフィニティD)。それは人間ではなく、悪魔とも言える姿だ。人を何人も殺し、最後は自身の姿を忘れてしまった姿だ。
怒り、憎しみ、悲しみの視線を向けられたミリア、そして辺りに行き渡るのは、テロの構成員ではなく、一般市民………。皆、敵だと思って殺した人達だ。
「違う………私は………」
無限のD(インフィニティD)のミリアは震え上がる。
カエせ………家族ヲ、私達の全てを………
悪魔め、貴様はコノ世界から………
辺りから殺された亡霊達が次々と地面から出現し、怒りと憎しみ、悲しみをぶつける。
───ヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
無限のD(インフィニティD)は、悲しみの咆哮。
皆に悪魔と罵られ、全てを裏切られた感覚。
そうだ………全てを破壊しなければ………
自分を守らなければ………でなければ………
───そして………。
「うそ………アレックスさん、デビッドさん、サウルさん、ロメロさん………。マスク・ド・a様?」
元の姿に戻るミリアは辺りを眺める。アレックス、デビッド、サウルにロメロ、マスク・ドaの死体が転がり、震え上がる。自分の身を守る為、殺してしたのだ………。




