第106話 王国、ギルドに破壊された少女の過去
「冒険者ギルドなら、アンタ達も敵だッ!!」
口調は怒りに任せ、少女はクルクルと尺杖を構え、駆ける。同時に2体の獅子達は咆哮を響かせて少女に続いて行動を開始し、アレックス達に襲いかかる。国内の民族を支配し、さらに戦争準備を進める王国。
そして悪徳な依頼募集によって王国の自然や伝統、文化を破壊して実質、王国に協力して利益を得ている冒険者ギルド。少女にとって何もかもが敵だ………。
返せ、私の家族を…………。
私の故郷を、伝統を、村のみんなで過ごした幸せな生活を、それを王国が、ギルドが………。
「アァアアアアッ!!」
許さない、許さない………何もかもが………。と、少女は遠距離からジャンプ。そしてアレックスに狙いを定め、全体重を尺杖に集中させ、振り下ろす。
「クソッタレがッ!!」
自身の過去に憤った少女の怒声に、アレックスは激を吐き、ロングソードを振るって少女を弾き払う。
小さい身体にしては随分と腰の入った一撃を与えやがる………。と、アレックスは驚くのである。
「ギルドなんかに、王国なんかにっ」
棒撃を弾き払らわれ、少女はクルッと体勢を空中で整えつつ尺杖を構え直してダッシュし、アレックスの右側に移動。すると、少女の中間距離に影が行き渡り、思わず顔を上げる………。
「立ち直りが遅いっ」
───アレックスは少女が体勢を整えた同時、狙いを定めてロングソードを振るう。
少女は察知して尺杖を構え、アレックスの剣撃をガード。そして口を開くのである。
「アンタは自分がこっちの立場ならどうする?今の王国がどんな状況か知っているのかっ!!」
と、少女は訴える。
するとアレックスは跳び下がり………。
「そんな事は知っている。だけど国の取り決めは、俺達ギルドではどうしょうもないッ!!けど………」
「けど何だ?」
「お前達が家族を、故郷を滅ぼされて怒る気持ちは分かる。国の政策を止める事が出来たら止めたいし、けど、暴力では何も生まれないし、憎しみが生まれるだけだ。テロ以外、他にも方法があるバズだッ!!」
アレックスは主張。少女の過去と自分の人生は正反対。少女の過去に感情移入し、自分なりの答えを出そうとしたらまるで暗黒の扉に手を伸ばすような気持ちに襲われ、入ってしまえば戻って来れないような感覚が立ちはだかる。
もし、自分が少女側に立てば………同じ事をしていたかも知れない。
アレックスの世間知らずな主張に、少女は………。
「アンタに、私達の何が分かるッ!!」
少女は尺杖を構え、怒りの急襲を仕掛ける。
「全く、相変わらず短気な性格は変わってないな?リーシャ」
アレックスの前に立ち、少女の棒撃をガードするのはサウル。




