第99話 夢の中、誘(いざな)いによる涙
「南無三ッ!!」
アンゼシカ(真美)は覚悟を決め、瞳を強く閉じた。深夜の時間帯、ゲームをしていて、ボス戦にて他のキャラが倒れ、回復アイテムが無い中、最後の必殺技を放つような状況に似ている。
結果、奇跡的にボスは倒せた。その時は(ヨッシャッ!!)と、大声でガッツポーズをし、下から母に(やかましい)と、怒られた思い出がある。
うう、ヴヴヴッ………お姉様………。
思わず苦悶を浮かべ、無限のD(インフィニティD)のミリアは黒剣をギリギリの所に止めた………。位置は頭部、もう少し前にズレていたらザックリと両断され、この世からオサラバしていただろう。
「やったか?」
悶え苦しむミリアに対し、サウルは不安な様子を伺う………。
「ああっ………ガアッ…………お姉様ッ………」
無限のD(インフィニティD)のミリアはフラフラと左右に動き回り、黒剣を振り回し………そして地面に突き刺す。全身から漏れ出すように放出される光。ミリアの精神力、そして皆の思い出がDの誘いの声による支配を上回り、徐々に解放されつつ………。
全身から放出される光は消え、元に戻るミリア。フラフラな身体、地面に倒れ落ちそうな所を………。
「ミリアさんッ!!」
アンゼシカ(真美)はダッシュ。駆けつけて両腕を広げ、ガシッとミリアを抱き支える。
Dの誘いの声に解放され、白濁する意識のミリア、ぼんやりと姿が映し出されるのは………。
「………お、ねぇ様?」
ミリアはか細い声を出す。視界に映るのマスク・ド・aがアンゼシカお姉様とダブって見えた。
そして………ミリアは手を地面にパタリと落ち、力なく気絶。体力と精神が消耗し、意識がシャットダウンした………。
★★★★★★
ミリアは漆黒の世界にて、逃げ走っていた。息を切らし、ただひたすら走る。少しでも立ち止まれば飲み込まれ、支配されてしまう。
───ッ!!
ミリアは立ち止まった。
目の前にいるのは無限のD(インフィニティD)の人影。
我に全てを………汝は我に………。
汝は我に身を託し、力を授けよう………。
「私は、アナタの言いなりなんかにならないッ!!」
ミリアは叫ぶ。
否、我はそナた………。
我のチかラを授ければ、汝の願いは思うがまま、そナタが敬愛するアンゼシカ・ヨハーソンを取り戻すことも可能であろう………。
無限のD(インフィニティD)は人影は両手を広げ、ミリアを優しく誘う。
「アンゼシカ………お姉様を………」
ミリアは思わず反応した。アンゼシカお姉様を、強くて優しいアンゼシカお姉様を取り戻せる………。
思わず涙を流し、あの頃の記憶が思い浮かぶ。
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