プロローグ
───〈謁見の間〉───
「ミリア・ミア・シュヴァル女王陛下、アナタを王位継承権から追放処分とするッ!!」
彼女の名はアンゼシカ・ヨハーソン将軍、年齢は25歳。
流れる滝のように、艶かな紅赤の長髪、ガッチリとした四肢、泣きぼくろの女性騎士は鋭い眼光を光らせつつ、強い声を響かせる。重厚な将軍マント、袖無しの鎧、騎士用の短いスカートを着用し、脚部には軍用ブーツ。
ガチャと音を立て、自分の身長位の高さを誇る大聖剣を女王陛下に突きつける。
───そして、女性騎士の周囲には大勢の配下。配下の騎士達はガチャとランスを突き立て、女性陛下を威圧。
女王陛下、ミリア・ミア・シュヴァルツの父君、クロフォード王国先代国王陛下イザーク・ミア・シュヴァルツは独裁者である。
政策のと言う名の弾圧。民族、宗教、文化、あらゆる思想の全てを支配し、国民に対し重税や徴兵、物資徴発、監視体制など実施し、反抗的な者達は全て粛清して来た。その父君は崩御し、王位継承権は娘に引き継がれるハズだった……。
アンゼシカ・ヨハーソンは大勢の配下を味方に付け、国を変える為、民を導く為、クーデターを引き起した。
(………………)
女王陛下のミリアは金色の長髪で表情を隠し、沈黙。かつて小さい頃、遊び相手として家庭教師の役割をしていた強い眼差しのアンゼシカを見つめる。
あの頃の彼女は優しく、強く、勉強を学んだり、剣術や魔法を教えてくれたり、色々と遊んでくれたり……母親を亡くしたミリアにとっては母親のような存在だ。
ミリアは父を知っている……小さい頃から怖い人で意見する事は許されない。異論を唱えたら粛清、追放、投獄された大臣もいる。恐らく彼女は王族の血筋を排除し、自身が国政を務めるのだろう。彼女の気持ちは分かる、私では歴史を繰り返してしまうからであろう。
緊迫感が空気を支配し、騎士達の微かな甲冑の音がカチャカチャと響き、沈黙……。
───軽く頷いたミリアは玉座から立ち上がり、アンゼシカの側に歩み寄り、鉛のような重い口を開く。
「今まで父上の命に仕えて頂き、ありがとうございます。国の事、民の事は頼みます………」
ミリアは皆に一礼し、謁見の間を歩み去る。去り際、深紅のカーペットを踏む彼女の後ろ姿は、どこか納得がいくように潔い。
そしてアンゼシカ・ヨハーソンはこの場から去りゆくそんな姫君の背中を見守るのである。
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