1,今日もショッピングモールは平和です。
マイペースで投稿していきます。
よろしくお願いします。
ここは魔法都市にあるショッピングモール。
魔法都市は面積が10万平方kmほどの島国であり、2つの大きな大陸を結ぶ海路の真ん中に位置している。
もともと大陸から離れ、魔法の研究者たちがひっそりと研究に明け暮れる静かな国だった。
しかし、技術の発達に伴い、大陸間の人の移動や貿易が多くなり、中継点である魔法都市は、宿屋や商店が栄えていった。
研究者達は、自分達の場所が奪われたと怒っていた。
しかし、ある時ひとりの研究者が、巨大なショッピングモールを作ろうと言い出した。
ショッピングモールの売り上げを研究費として使えば、今まで大きな悩みであった、金が足らなくて研究が進まなくなることがなくなるだろうと。
みんな研究に没頭するだけでお金には無頓着な人だらけだったので、お金に困らなくてもいいというのはありがたいと、すぐに協力者が集まり建設が始まった。
その結果できたのが、この島全体に広がる巨大なショッピングモールである。
このショッピングモールには大陸間の交易により、世界中のありとあらゆるものが集まり、さらに最先端の研究による優れた魔道具も売っているため、今日も世界中の人々が訪れ、賑わっている。
〜市場エリア 海産物コーナー〜
海に面しているこのショッピングモールでは、漁港も備わっていて、毎朝活気のある海産類の荷上げが行われている。
そのため、市場エリアには漁港から直接送られてくる、新鮮で生きのいい商品が取り揃えられている。
「おい、漁港で大物が上がったから、助けが欲しいってよ!」
ガタイのいい漁師のような男が、朝から息を切らしてはしっている。
「本当か、俺もすぐ行くよ。ちなみに何が来たんだ?」
同じくガタイのいい男がすぐに道具をまとめ始める。
「なんか勇者達が、バカでかいクラーケンを倒してきたみたいだ。解体が追いつかないらしい。」
「そりゃえらいもん持ってきたなぁ。
伝説級の海の怪物を倒せるとは、さすが勇者は規格外だ。」
支度を終えると、男達は駆け出していった。
〜漁港エリア〜
「おーい手伝いに来たぞ!」
「よく来てくれた!お前さんらはあっちの足を頼む!」
「任せろ!」
全長が50mはありそうなクラーケンの死体の上には、ガタイのいい男達が大勢で解体に励んでいる。
「こりゃ解体しがいがあるなぁ。」
「見ろよこの足、吸盤切って敷いたらベットになるぜ。」
冗談を言いながらも、ダブルベットほどある大きさの吸盤を、手際良く解体していく。
足も半分ほど解体が終わってきたところで、突然叫び声が聞こえた。
「ぎゃあ〜!助けてくれ!」
解体中の足の付け根の方から、男達が足の先に逃げてきた。
「なんだ!?」
「どうした!?」
逃げてきた男に尋ねると、
「腹を捌いてたら、中から幼体が大量に出てきたんだ。
こいつ出産間際だったみたいだ。」
「なるほど。」
逃げてくる元をたどると、色々なところをクラーケンの幼体に吸い付かれ、噛まれている男達が騒いでいた。
「…。」
2人はポカーンと口を開けたまま、お互いの目を見てうなずいた。
「よし! 向こうはあいつらに任せよう。」
〜グルメエリア〜
「わぁ〜、すごいすごい!
ねぇパパ!好きなの食べていいの!?」
幼い娘が父親の膝に抱きつき上目遣いのキラキラした目で父親を見つめる。
「そうだな!今日はエリの好きなのをなんでも食べていいぞ!」
「やったぁ〜!!パパ大好き!!」
あまりの娘の可愛さに、父親は気持ち悪いにやけ顔になっていた。
横では母親が少しため息をつきながら、息子の手を握っている。
夫婦と幼い姉弟の4人は、グルメエリアの賑やかな人ごみに混じっていった。
…
「ねぇ!パパ!あたしこれ食べたい!!」
娘が店の前で立ち止まり、指をさした。
「おっ、なんだ?」
父親は娘の指の先のメニューをみる。
『クラーケンの幼体の踊り食い 〜回復薬を添えて〜』
「お嬢ちゃんお目が高いねぇ!
今朝上がったばかりの新鮮なクラーケンの幼体だよ!
生きのいいままの、踊り食いが1番うまいよ!
一杯どうだい!?」
威勢のいい店主の前には、娘の顔と同じ大きさのクラーケンの幼体が、大皿の上で気持ち悪いほどうねうねしている。
「え゛っ、こっ、これ?」
父親は異様なオーラを放つクラーケンの幼体をみて、引き攣った顔をしている。
「うん!この可愛いイカさん食べたい!」
娘はキラキラした目で父親を見つめる。
「かっ、可愛い?」
幼体とはいえ、姿形はクラーケン。子供の感性はわからない物だ。
父親は再び料理名を見る。
「回復薬を添えて?」
どういうことだと思って周りを見ると、踊り食いに挑戦していたカップルの男が、クラーケンを食べるどころか、正面から顔をかじられ、彼女に頭から回復薬をかけられていた。
「あぁ。」
娘の頭がクラーケンに丸呑みにされている映像が頭に浮かび、顔を青くした父親が、必死に娘を説得しようとする。
「エリ、クラーケンが可愛いなら食べないであげた方がいいんじゃないかなぁ?」
「やだ!食べちゃいたいくらい可愛いの!」
娘は少し泣きそうな顔をしている。
父親はうっ、と怯みながらも、
「そ、それは比喩で、本当に食べるわけでわ…」
「ひゆってなに!?
パパなんでもいいって言ったじゃん!」
「うぐっ!」
娘の迫力に押されて、父親は助けを求めるように母親に声をかける。
「マリ〜。」
「さぁ、カイトちゃん。私たちはあっちでハンバーグ食べましょう。」
「わーい!ハンバーグ!たべるー!」
母親と息子の姿はすでに小さくなっていた。
「マ゛リ゛〜っ!!」
〜管理エリア 中央監視室〜
「戻ったぞ〜。」
「あっ、オーナー。見回りお疲れ様です。
今日はどこいってたんですか?」
多くの監視カメラの映像が写されているモニターの前に座っている男が振り向いて、オーナーを見た。
「うん、今日は市場とグルメを見てきた。」
オーナーは少し疲れたように、隅にあるソファに腰掛け、上を向き、ふうとため息をつく。
「今日の様子はどうでした。」
モニター前の男はその姿を見て、ちょっと苦笑いをしながら尋ねた。
オーナーは、顔を正面に戻し、ニコッと笑って答えた。
「そうだな、今日もショッピングモールは平和だな。」
ショッピングモール魔法都市店は、今日も平和に1日が過ぎていきます。
エリパパ「ギャ~!!」イカ足ブチブチ
エリ「おいしい!!」イカ足モグモグ
エリママ「パパお疲れ様。」回復薬バシャー!




