一話【ここが異世界のはずがない】
俺の名前は新条悠人。
健全な大学生だ。
そこそこの大学にも行ってるし、運動もできる。教授からも気に入られていて大学院への道も確実。
そんな充実した人生に、君たちみたいな小説サイトにうつつを抜かす時間は必要無いんだよ。
「君、新条君だよね? 今から合コン開くんだけど人数足りなくて....よかったら来てくれない? 新条君、顔整ってるし!」
人生充実してると思い込みたいだけの虫ケラか。
こういうのには正直にきっぱりと断った方がいい。
「すみません。明日はプリキュアを見るために朝早く起きなければいけないので」
そう、明日は日曜日! プリキュア、仮面ライダー、戦隊もの の3つが続けて放送される週に一度の黄金の日! そんな日を合コンなどで寝坊していい訳がない。
「あぁ....そう? じゃ、じゃあまた....」
なんだあの軽蔑したような視線は。
お前のような下等生物の方がよっぽどみじめで気持ち悪いがな。
「君、珍しい服着てるね」
見知らぬ女性に話しかけられた、背は高校生くらいか? 俺の服は至って普通だ。なぜか今日は頭が残念な奴に話しかけられることが多い日らしい。
「私の服は標準服だが?」
そう。私は高校の学ランを未だに着ている。標準服は自分が誠実な人だと主張してくれる素晴らしいものなのだ。
「ふーん。そうなんだ」
彼女は興味なさげの反応を返してきた。
「なんなんだね君は! いきなり人に話しかけておいてその反応は! 私の服がおかしいのなら君の方がよほどおかしいと思うがね」
言ってやった。あまり女の子にこんなことは言いたくなかったが、ここまでムカつく反応をされたら誰でも怒るであろう。
だが、本当に彼女の見た目はおかしいのだ。
透き通るような白髪、ラピスラズリのように青い瞳、金色のボタンの付いた紺色のコート、おまけにクソ可愛い。
少なくとも俺が一度も見たことがないくらい美しかった。
「この服見たことないの?」
「あぁ」
何言ってるんだこの小娘は。早く話を終わらせてくれないか。
「君、異世界から来たでしょ?」
本当に頭がおかしかった。
「はぁ? 異世界? そんなもの存在するはずがないじゃないか。第一にここは僕のいる世界で君もここにいる。そうだろ?」
「ううん。異世界だよ。周りをみてごらん」
冗談だと分かっていても気になってしまうのが私の性分だ。そう思いながらあたりを見渡した。
「な、なんだここは」
「ね?」
彼女は誇らしげに言った。
本当にここは異世界だったのである。
まるで中世ヨーロッパのような街並みだ。
例えヨーロッパだったとしても、天まで届きそうな巨大な城が聳え立っている。確実にヨーロッパではない。いや現実ではないのか?
「ここ本当に異世界なのか?」
もう疑いようが無いが、確信に至る最短の質問だ。
「うん。ここは君から見たら異世界。そして君は召喚されたんだと思うよ」
召喚? 何を言ってるんだ? 俺には全く分からない単語だ。画面の前のお前らみたいに小説サイトに時間を潰すのにもこういう時だけ意味があったのだな。
そんなことはどうでもいい俺はいち早く元の世界に戻りたいのだ。
「じゃあ早く帰してくれ」
彼女はキョトンとした表情で答えた。
「それはできないよ」
「なぜだ?」
こっちに来れたのならあっちにも戻れるはずだ。
「だって召喚したの私じゃないし、召喚術式というのは名前の通り召喚するだけ。つまりもう一つの世界に召喚させることはできないの。あなたの世界に召喚術式があったら話は別だけど....」
なるほど。とりあえずは戻れないといことか。
潔く諦めた方がいいだろう。
本当に今日は災難な日だ。
読んで頂きありがとうございます。今回もう一つの作品と並行して、このなろう作品を作っていくことにしました!是非次話もよろしくお願いします