第3話
「えっ」
その男の顔を見た私は言葉に詰まった。
その顔は今日店に来たはずのお客さんだったからだ。
「なんなんだ!!目が覚めたなら俺の夕飯を作らんか。少し熱が出たからと言って寝込まれてては困る。俺は仕事をして帰ってきたんだぞ!」
そう怒鳴り男は隣の部屋に行ってしまった。
私はよくわからないままベッドから起き上がる。とりあえず。電気を探しつける。しかし何故か電気がつかない。
仕方なく男が出て行ったあとを追う様に部屋を出て電気のついている部屋にはいる。
「やっと起き上がってきたか。もう0時前だぞ。いくら朝体調が悪いと言ってたにしても寝すぎだろ。亭主が帰る前にご飯を作っとくのが嫁の役目じゃないのか?おい!聞いてるのか!」
「はい?何を言ってるんですか?」
もう何がなんだかわからない。しかし怒鳴り散らしてくるのでとりあえず聞き返す。
「まだ、寝ぼけているのか!?もういい。俺は先にシャワーを浴びるからその間に適当に飯を作っておけ!」
そう言って私の話には答えてくれず風呂場にだろうか行ってしまった。
この部屋にはキッチンとリビング普通の一般家庭という様にテーブルやテレビなどが置いてある。私の寝室らしき所では暗さやものの雰囲気が恐ろしく感じたがこの部屋は至って普通で怖さは感じない。
とりあえず、頭を整理しよう。私は目が覚めて見知らぬ部屋で寝ていた。するとお客様だったはずの男性が私を嫁といい、食事の支度をしてないことを怒鳴りつけてきた。うん。全くもって意味がわからない。
わからないけれど状況から察するに私はあの男性の嫁になってるということらしい。
「。。。とりあえず鏡」
私は顔を見るために洗面所に向かう。シャワーの音が聞こえるのでリビングを出てすぐのドアを開ける。やはりここが洗面所であっていた様だ。鏡を覗き込む。
「う、、、ま、そうだよね」
鏡に映る顔は50歳くらいに見えるおばさんだ。苦労しているのだろうか目の下にはクマがありシワやシミがかなりある。もしかしたらもっと実年例は若いのかもしれない。正直に言うとショックだ。失礼かもしれないが仕方ないではないか。元々はまだ、23才の新社会人である。20代の女が50歳にいきなりなったらショックだし嫌な気持ちになることくらい許してくれ。
ちなみにこの顔を見たときにやっぱりあの女は嫁ではなかったではないかと思った。
さあ、ここからどうするか。いたって冷静なのは私はまだこれが夢だと思っているからだ。夢でもすぐに冷めない時もあるではないか。よく夢の中で落ちたりしてもあべこべな状態で話が展開して進んでいき目が覚めないことがある。今もそんな感じなのではないかと思っている。
とりあえず私はリビングに戻ることにした。
冷蔵庫の中を開ける。豆腐や卵など乳製品、みそ、油揚げ、お肉。野菜室にはキャベツや白菜、大根など、冷凍室にもお肉や冷凍野菜など一通りの物は揃っている。いかにも普段から料理をしてますという形で使いかけだったりストックしているのだなとわかる様なものも入っている。
さあ何を作ろうかとりあえず言われた以上ご飯を作ってみるしかないだろう。夢ならば料理を作ってる間にでも覚めるはずだ。
しかし覚めなかった。
お湯を沸かして乾燥わかめを戻し、豆腐と一緒に味噌汁に。冷蔵庫に入ってたお肉と野菜を使って肉野菜炒め。冷蔵庫にストックしてあった常備菜を器に移してと一通り作り終わってしまった。
米は早炊きで30分。
風呂から上がった男は冷蔵庫からビールを取り出し常備菜をつまみにテレビを見ながら飲み始めている。
全ての準備が終わりご飯を机に置く。
「やっとできたか」
男は一言だけいい。黙ってご飯を食べ始める。
「いただきます」
私もご飯を食べ始める。無言が続く。けれど私としては話を聞きたい。でもこの感じではこの男は私が嫁であると思っているし現に私は嫁の顔をしているのだ。いろいろ説明して聞いても無駄なのだろう。とりあえず嫁らしく振る舞うことにした。ご飯を8割がた食べたくらいになり
「今日のお仕事はどんなだったんですか?」