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素直になれない俺と彼女たち  作者: re:まったり
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新学期の始まりとこんにちは

憂鬱になることって人ならば誰しもが経験することがあると思う。

それはテストとか、好きなアニメが終わった時とか、果ては友達と喧嘩した時とか…。

俺に関しては明日がその日であるため、寝ようと思ったのに眠りが浅くて寝れなくなってしまったのである。

では、何が明日にあるのかって言えば…夏休みの終わりである。


ここまで夏休みを例年より楽しんできた俺だからこそ、今年の夏休みが終わることに対して何か感慨深いものを感じてしまったのだ。


そうして、俺は家のベランダで外を見ることにした。

次太陽が登ってきてしまったら、いよいよ学校からは逃げることはできない。

俺は月を睨みつけ、そこから動かないでくれよと思いつつ…このまま夜が続いても困るなと言うのも思ってしまうのだから…って俺は何を考えているのだろう。

まあいいや、とりあえず…学生と言う立場である以上避けられないものに俺は直面していたのである。



「1人で何、ウンウン言ってるの。きもいよ、にいに。」


そんな俺に、後ろから声をかけてきたのは、凡庸すぎる新城家の希望である優秀な愛理さんが声をかけてきた。


「夜更かしするなよ。明日帰るんだろ?」


「にいにも明日学校じゃん。」


愛理は、明日学校の寮に帰る。

夏休みの終わりは愛理とて同じなのだ。


「私はにいにと違って、そんな学校嫌いじゃないし。」


「そうか…。それがわかってるなら兄貴を1人にさせてはくれないものかね。」


俺の真夜中の不定期に開催しているお悩みコーナーを潰さないでくれ。


「だって、にいにと話せるの最後じゃん…。」


愛理は少し涙ぐみながら…そう見えるのは俺がそう思っているだけなのか。


「確かにそうだな…。」


俺が愛理とこうして会話するのは正月にまた愛理が帰ってくるまでないだろう。

電話でもかけてくれば会話はできるかもしれないが、こうして顔を合わせて近くに寄って会話をすることはきっとないだろう。


「それなのに、にいには玲奈さんと花火大会行っちゃうし。」


「そりゃ彼女だからな。」


彼女との花火デートと比べられるものか。


「私だってそれくらいはわかってるよ。でも寂しかったってこと!」


「愛理は甘えん坊だな。」


「そうだよ。私は昔からにいににだけ甘えるの。」


「他のやつに甘えてるのは見たことないな。」


愛理は昔から確かに俺だけに甘えることが多かった。

それは、両親が共働きということもあって愛理と過ごした時間は世間一般の兄妹よりも長いことだろう。

ただし、愛理は俺の知る限り…甘えたがりの妹だった。

両親に甘えなかった分俺にそれが集中したのだろう。


「それなのに、私を放置しておくとか…にいにの癖に生意気。」


「俺はいつからお前の召使いになったんだ。」


愛理は息を吐いて


「にいには、寂しくないの?」


こちらを上目遣いで見てそう言う。

今度こそ愛理の瞳が潤んでいると確信した。


「寂しいよ。そりゃ、誰よりもな。」


もちろん、俺だって寂しい。


「そうなんだ…ならそう言ってよ。」


「今言ったじゃないか。」


「遅いってこと!にいにはもっと私に素直になるべきだよ。」


「素直ってな…。」


俺のかっこ悪いところもたくさん知っている愛理だからこそ、そう言う言葉を伝えるのはなんか気恥ずかしい。

俺のことならなんでも知っていると言う意味では玲奈といい勝負じゃなかろうか。


「私だって、そうしたらにいににもっと甘えられたのに。」


「十分甘えてたぞ。」


ゲーム一日中付き合ったり、買い物行ったりしたのを忘れたのか。


「足りないって言ってるってわかるでしょ!」


「そんな語気強めに言われても。」


「だから、次帰ってきた時はもっと甘えるから覚悟しておいてね。」


「まあ、程々で頼むよ。」


「本当に、甘えるんだから…次は怪我しないでね。」


愛理も俺が怪我したことを気にしている。

実際怪我自体は完治したものの、傷は綺麗には消えなかった。

あの時の傷はしっかりと残ってしまっている。

海に行った時も、シャツは一度も脱がなかった。

言わなければ気づかれなかったかもしれないけど、それでも自分から言うのもな…と思いつつ隠してしまっていた。


「ああ、それは約束するよ。」


もうあんな怪我は懲り懲りだ。

強いて言えば、捻挫程度の怪我だってしたくはない…痛いし。


「ならいい。ーーーじゃあ、またね。」


「おう、おやすみ。」


俺は結局愛理に何かを与えられたのだろうか。

愛理は俺に、何度も悩んだ時答えを一緒に考えてくれた。

この夏休みで俺が壁にぶち当たった時は、いつも愛理が側にいた気がする。

逆に言えば、夏休みが終われば愛理はいない。


「俺が頑張らなきゃな…。」


今日、俺は玲奈に大丈夫だと伝えた。

それはつまり、新城寧々に何かしらの終止符をつけて、元の日常を都営戻すと言うことだ。

彼女は一体何を考えているのだろう…俺に理解できる日は来るのだろうか。













夏休みは終わりを告げた。

俺にとっての高校2年生の夏はこうして終わったのだった。

しかし、夏の終わりは…同時に新たな始まりを迎えることと同義である。

学校という学生全体の話でもそうだが、人間関係なんかも大きく変わっていく。

夏休みを経て交際をしたり、部活では立場が変わったり…生徒会に立候補したりといろいろあることだろう。

ただ、少なくとも俺には人間関係の変化はなかった。

夏休み前と何かが変わったと言えば、玲奈が学校でも俺に必要以上に密着してくるようになったくらいか。


「暑いから離れてくれ。」


と言ったものの、


「奏多が遠慮しなくていい。って言ってくれたんだよね?」


と昨日のことを言われてしまっては、俺には否定する言葉は出てこない。

つまり、積極的になりすぎてしまった彼女に俺は悩まされているというわけである。

まあ、嫌なわけではないけれど…余計に注目されてしまうのはやはり恥ずかしい。

家では普通にしていることだけれど、それを人目があるところでするのはまた違ったものがある。

しかし、そんな悩みは杞憂に終わった。

思った以上に注目はされていない。

何か別の大きな話題があるのか…学校中が1つの話題で持ちきりなのか。

そんなに楽しそうなことってあったっけな。


「妙に騒がしいな。」


「新学期だから、久しぶりに話せて楽しいんじゃないかな?」


俺と玲奈は学校に着いた時から感じていた学校の異様な雰囲気が教室に入った途端濃くなったことを感じた。


「そうかもな…けど、それにしたって。」


そう言いながら自分の席に向かう途中


「玲奈、新城…2人に少し話があるの。時間いいかしら?」


春沢は俺らに向かって、教室の外を指差しながらそう言った。


「ああ、俺は構わないが。」


「私も大丈夫。」


返答を聞いた春沢はほっとしたような表情をして


「ありがとう。ちょっと着いてきて。」


そうして、俺と玲奈は春沢に続いて教室を出たのだった。








「ごめん。急に着いてきて貰っちゃって。」


俺も玲奈もなんで呼ばれたのかは分からないが…春沢が俺らをわざわざ呼んだのには何かしらの理由があるのはわかった。


「いや、それは大丈夫だけど。何かあったのか?」


春沢は…夏休みに俺に悩みを打ち明けたときとは少し違う…少しじゃないか。


「そうね。ーーー遼と別れたの。」


「え、別れた!?」


俺は驚いていたが、玲奈は何も言わずに受け入れていた。


「新城は面白いくらい驚いてくれるね。」


春沢は笑っているが、まさか滝谷と別れるなんて…なんでそんなことになったんだ。

と言うか、玲奈はなんで驚いていないんだ。


「優が別れるのはなんとなく想像がついていたけど、思ったより早かったかな。」


玲奈はなんのこともないように言っている。

そう思っていたってことは、何か知っていたのかな。


「玲奈には気付かれてたのね。」


「なんとなくだけどね。」


俺は春沢と滝谷についてそこまで詳しいわけじゃない。

夏前に2人と会った時には仲が良さそうに見えたけど、なぜ別れてしまったのか。


「私と奏多に言いたかったのは、そのこと?」


「うん、だけど…もう少しだけいいかしら?私は新城に説明する責任があったと思うから。」


「それは…」


夏休みのことを言っているのだろうか。

俺は確かに夏休みに春沢に協力すると言った。

それは彼女が自らの絵に自信を無くしていたから。

けれど、春沢が悩んでいたのはそれだけではなかったのか…とすると俺は彼女の力になることは既にできなかったと言うことになる。


「新城、そんな顔しないで。私は遼と別れたことを後悔してるわけじゃない。」


「でも…。」


「だから聞いて欲しいの。私たちのことを…1年の時に新城と私が話さなくなってから何があったのか。」


春沢には何か決意のようなものがある。

俺には確かにそれを感じることができた。


「私も聞いていいのかな?」


玲奈はおずおずと、春沢に尋ねる。


「うん。玲奈にも知って欲しい。誰でも話したいわけじゃないわ。玲奈と新城だから聞いて欲しいの。」


「そう言うことなら聞かせてもらうね。」


「ああ、俺も。」


俺も玲奈も覚悟は決まった。

なんだかんだ春沢から以前の話を聞くことは初めてだ。

彼女が何を思って今に至ったのか…それは滝谷と別れることと関係しているのか。

いや、関係しているからこそ話すのだろう。

そして…俺には何ができるのだろうと。




「そうね…あれは入学してすぐの頃だったかしらーーー」







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