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素直になれない俺と彼女たち  作者: re:まったり
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バスケと単純

俺は大谷拓哉。


バスケと女の子が大好きなスポーツマンだ。

インターハイ予選に敗れてから、部長に就任した俺はいきなり困難に直面することになったんだ。


「だ〜か〜ら〜、それじゃダメって言ってんじゃん。これだから拓哉っちは。女バスの方が成績残してるんだからコート譲るのは当然でしょ。」


「んなもん、関係あるか!平等に決まってんだろうが。」


そう、女バスとの体育館の使用権を賭けた戦いだった。


元々体育館にはちゃんと使用に関するルールがある。

この第二体育館は主にバスケ部と、バドミントン部が使っている。

しかし、バドミントン部は土日のみ使うため、平日はバスケ部が自由に使うことができる。

ここで問題なのはバスケ部には男子と女子で分かれていること。


雛元高校は元々バスケ部はすごい小さな部活で男子と女子が1つの部活だった。

それからしばらくしてバスケ部にも人数が増えて、男子部と女子部に内々的には別れている。

それでも学校では大きなくくりとしてバスケ部は男女で1つの部活として申請されているのだ。


理由としては男子も女子も担当している顧問が同じため。

基本的に雛元高校では顧問は複数の部活を掛け持ちできない。

それは顧問の過剰労働を抑えるためである。


ここで男子部と女子部を学校に公に申請して分けてしまうと別の顧問が必要になることになり、片方の部活はなくなり同好会になる可能性すらある。


だからこそ公にはバスケ部と申請し、内々的には男子部、女子部と分かれているという複雑な状態になっているのだ。


「男子が譲ればいい話じゃない。そんなに強くないんだし。」


女子部員は男子との夏の大会成績を比較して、ここぞとばかりに強気になってコートの使用権を譲れと言ってくる。


「おいおい、そりゃねえだろ。大会成績で決めるんだったら去年は男子部の方が良かったのに男子と女子は同じ量だったじゃねえか。」


男子部員としても夏休みは朝から夜まで気兼ねなく部活に打ち込める重要な時間。

おいそれと譲ることなどできない。


「おい、お前ら落ち着け。」


俺は加熱する口論を収めるため間に入る。


「部長も何とか言ってくださいよ。こいつらマジで無茶苦茶なこと言ってくるんすから。」


俺は女子部員に向き直ると


「俺らだって真剣に練習してる。お前らが成績を残していたとしても、そんな強引な言い分でコートを独占されるわけにはいかない。」


女子部員に対して引かない態度を示すことが大事だ。

奴らは一度引いたら次々と用件を飲ませようとするだろうから。


「何言ってんのよ。万年赤点男が。最近まで補修漬けで全然練習に参加してなかったじゃない。」


「ッグ。」


女子部員の1人が俺の言葉など物ともせず交戦的である。

そして、それ自体は事実だから何も言えない。


「それとこれとは…俺が補修漬けでも他の部員には関係ないんだからよ。」


自分の恥などもうどうでも良い…後輩に恥ずかしい姿を見せることになっても彼らの使うコートだけは何としても守る。


「先輩、私あの人に先週告白されたんですけど…。」


「え、私も。マジないんだけど。」


女子部員のヒソヒソ声が聞こえてくる。


「あ〜〜〜〜!!聞こえん、聞こえん。俺は断固としてこの場は譲らないぞ。」


何故か冷たい視線は女子部員以外からも向けられている気がするが、気にしない。

俺は何としてもこの戦線から逃げ出しはしない。


「じゃあ、バスケで決めるってのはどう?」


しばらく黙っていた女バス部長の北島が意見を出してくる。


「澪どういうこと?」


女子部員も気になるようで、北島に聞く。


「私たちと男子で勝負すればいいんじゃない。拓哉っちも譲る気がないなら正々堂々勝負で決めれば文句ないじゃん。」


北島は男子と女子でバスケの試合をするつもりか…でもそれだと


「男子の方が圧倒的に有利じゃない。いくらうまくても男子の体格相手じゃ私たち不利よ。」


まあ、当然気づくだろう。

俺にも気付けたんだから。


「だから、ハンデを付ければいいじゃん。それぞれ男子3人、女子2人でチームを組んで試合をするってことなら不利ってことはないでしょ。」


「おいおい、それって部員以外のメンバーを入れるってことかよ。」


「そういうこと。拓哉っちたちは女子2人頑張って集めてチームを組むってこと。」


「無茶言うんじゃねえ。俺らに協力してくれる女子なんかいるもんかよ。」


そもそもチームが組めなけりゃ試合にもなりゃしない。


「拓哉っちは逃げるのか〜…まあそりゃそうだよね、拓哉っちに協力しても負けるってわかってるんだから、協力するはずないし。」


「な、何だとぉ!!勝てるに決まってんだろ。人数さえ集まりゃお前たちなんか一捻りだっての。」


北島の明らかな挑発であることは誰の目にも明らかだったが、俺は冷静さを失って乗ってしまう。


「ぶ、部長!?」


部員たちの正気かって声は聞こえるが、そんなもの、今の俺には届かない。

何故なら俺は勝つと確信しているから。


「なら、決まり。1週間後の午後1時に試合開始でいいよね。それまでは今まで通りのスケジュールでそれぞれ練習するってことで。」


「望むところだ!!いつでもかかってこいや。」


俺は滾る炎を全身から燃やしながら、打倒女子部を成し遂げると心に誓った。








「部長、本当に大丈夫なんすか。」


練習後部員が尋ねてくる。


「任せておけ、俺には切り札があるからな。」


俺は自信満々にそう告げる。


「マジっすか。女子を集められるってことっすよね。」


「無論だ。それに女子部なんかよりもバスケの上手い女子を連れてくると約束しよう。」


「そ、そんな逸材が。」


俺には見えている、勝利への道が…!!!










「で、どう言うことなんだよ。」


俺は夕方になって急に自宅に訪れた友人、大谷拓哉に怪訝な瞳を向ける。


「お願いします、蘭堂さんに助っ人を頼んでもらえないでしょうか!!!」


それはそれは見事に綺麗な土下座であったのだった。



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