俺の日常2
俺の日常2
公立雛元高等学校。
俺の通う高校であり、至って普通の高校だ。
スポーツ校、進学校のどちらでもなく普通の学力の人が普通に試験を受ければ合格できる学校。
俺にとっては家から近いと言う理由で即決したのだが、玲奈は確か家から遠い進学校と迷っていたはずだ。
結局は家から近い方を優先する辺り、やっぱり俺の幼なじみと言ったところか。
教室に着き、席に着くなりすぐに後ろの席の男子生徒が話しかけてくる。
「おっす、奏多。今日はいつもよりちょっと早いな。」
「まあな、予定より時間余ったから早く学校来た。」
彼の名前は大谷拓哉。
去年からクラスメイトであり、友人と言っても間違いはないだろう。
次期バスケットボール部主将と噂されているらしいが、授業後すぐに帰宅するような俺にはあまり関係のない話である。
「そういや、今日俺も偶然早く登校したんだけどよ、蘭堂さんに話しかけられちまったぜ〜。羨ましいだろ。」
ドヤ顔しながら話しかけてくる、拓哉。
「そりゃよかったな。どうせおはようって声かけられてどもりながら「お、おはよう。」って上擦りながら答えたくらいのことは想像つくが。」
「な、なんでわかるんだ!奏多、いつからエスパーになったんだよ。」
「大体話しかけられたって喜んでる奴の典型的なパターンだからな。」
玲奈は男性と基本的に話すことが少ない。
中学の時は誰とでも気軽に話す性格だったが、それ故に勘違いした男子が告白し玉砕すると言う悲しい末路を何度も見てきて、彼女自身悟ったのかあまり男子に話しかけることも無くなった。
それでも高校に入ってからの1年間で30人の男子生徒を振ると言う記録は打ち立てたらしいが。
「ちぇ〜。奏多ってあんま女子にがっつかないよな。ーーーまさか、ホモだったりしないよな?」
両手をクロスさせて、後ろに下がる拓哉に少し俺はイラついたが
「んなわけあるか。俺はれっきとしたノーマルだ。人並みの恋愛感情もある。」
そう言うと飽きたのか、席に座り直した拓哉が
「じゃあ、誰か好きな人いんのかよ?」
「今はいないな。」
「そういやお前蘭堂さんと幼なじみなんだろ?それこそ羨ましいぜ。」
俺らのことを幼なじみであることを認識している人は多い。
なまじ家から近い学校を選んだために中学の同級生も多く在学しているので俺が玲奈の幼なじみであることは知れ渡っている。
「幼なじみって言ったってただ隣の家に住んでるってだけだ。滅多に話すこともないよ。」
俺はしれっと嘘をつく。
学校では幼なじみであっても今はただの知り合いってレベルってことになっているから、今でも毎朝話すくらい仲がいいことは伏せている。
「まあ、そうか。幼なじみって言っても奏多と蘭堂さんじゃ釣り合わないもんな。」
拓哉の何気ないこの一言に俺と玲奈の関係性が集約されていると言ってもいい。
誰が見ても釣り合わないと思うだろうし、現に俺だってそう思ってる。
中学の頃虐められたのもあって嫌でも玲奈と自分の差は痛感している。
「そう言うこと。それにお前だって知ってんだろ、去年俺が女子にフラれてるって。」
「あ〜、あったな。一年の6月くらいだっけ?」
「そうそう。」
一年生の頃俺は1人の女子に告白した、結果は玉砕。
自分自身、恋愛ってものに憧れていたのもあった。
彼女にとってみればそこまで親交のない男子に告白されて戸惑ったことだろう。
勿論、平凡な俺だって誰でも良いから付き合いたいなんてことは言わないがその子とどうしても付き合いたいって気持ちより恋愛ってどんなものなのか知ってみたいって感覚だったのがしっくり来る。
結果的にフラれてしまったので、これ以上語ることもないがそんな気持ちで付き合ったとしても長続きしなかったと思うのでフラれて良かったのだろう。
「俺たち早くリア充になりたいよな〜。」
「いつかはなれるんじゃない。」
「いつかっていつだよぉー!」
拓哉は悲痛の叫びを零しながら、机に突っ伏した。
俺は拓哉と話すために後ろに向けていた体を前に戻す。
教室の前の方では女子が数人群を成していた。
玲奈を含む、このクラスのカースト上位の女子3人グループ。
そこまでまだ教室に人がいないので彼女たちの声が聞こえてくる。
「昨日、竹下先輩ちょーかっこ良かったんだけど!シュートバンバン決めてさ。」
確かサッカー部のマネージャーをしている本橋香織がエースの竹下先輩とやらの話をしていた。
拓哉がすごいイケメンでサッカーのエースとかチートだろ!!って愚痴を言っていた気がする。
「ヘ〜、やっぱ竹下先輩って凄いのね。文化部だから全然知らなかったわ。」
続いて答えたのは春沢優。
彼女のことはよく知ってる、美術部で一年生にして絵画部門の全国大会に出るほどだから。
「もう、玲奈も優も興味なさすぎでしょ。彼氏のいる優はともかく玲奈は気にならない?」
「私は別に、そんなに気にならないかな。」
玲奈が少しだけこっちを見たきがしたが、気のせいか。
ってか、あんま盗み聞きみたいになるから良くないな。
そろそろ聞くのやめ
「だって、私好きな人いるし。」
玲奈がそう言った途端クラスが一瞬時が止まったように静寂に包まれ、その後それを掻き消すように盛り上がり始めた。
その言葉に俺も驚いていた。
玲奈に好きな人がいるとは…胸の中に少しモヤッとしたものを感じた気がした。