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素直になれない俺と彼女たち  作者: re:まったり
20/57

告白と結果

俺は今玲奈の部屋にいる。

昨日とシチュエーションは違くとも、俺の目の前に昨日泣かせてしまった少女がいる。


「あの、今日は何で私に会いにきてくれたの?、、、昨日離れるって言ったのに。」


玲奈は躊躇いがちに尋ねる。

当然の疑問だし、普通の人なら昨日あれだけ言って次の日にこうして会いにくるのは正気の沙汰じゃない。


「ーーーまず、謝らせてくれ。ーーー昨日はあんな酷いことを一方的に言って泣かせてごめん。」


俺は深く深く頭を下げる。

少しでも謝罪の気持ちが伝わるように。


「ううん、私こそ。奏多は私のことを考えてくれたんだよね?だからそれは仕方のないことーーー…だって思うよ。」


玲奈は俯きがちにそう答える。


「いや、俺は自分勝手だっただけだったんだ。面の女のせいで玲奈に迷惑が掛かるし、俺の問題を玲奈に背負わせたくないと思ったのも本当だ。ーーーけど、玲奈を遠ざけようとしたのはそれだけじゃない。俺が玲奈にコンプレックスを抱いていたからなんだ。」


「コンプレックス?」


「俺は玲奈のように何でも器用にこなせないし、何か特別な特技があるわけでもない。自分の中で玲奈に対して劣等感みたいなものを感じていたんだ。」


「そうなんだ…。」


玲奈は悲しそうにする。

彼女自身多少は思い当たる節があったのだろう。

俺と玲奈がよく一緒にいると、釣り合ってないってからかわれたことも多かったし。


「でも、俺はそれ以上に自分の中で言わなきゃならないことを閉じ込めてた。」


玲奈は何も言わずに聞いてくれる。


「俺はそんなちっぽけな自尊心や他人の評価よりも、玲奈のことが大事だったんだ。」


「え…?」


信じられないと言う表情で俺を見つめる。


「俺、今まで時間が掛かっちゃったけど、玲奈のことが誰よりも好きだ…絶対に離れたくない。今まで酷いこともたくさんしたし、許してもらえるかわからないけど、…俺の気持ちを伝えたかった。昨日までと言ってることが真反対だし、混乱すると思う。でもこれが俺の正直な気持ちだ。」


「えっと、混乱して。ーーー奏多は私のことを女の子として好きでいてくれてるってこと?」


玲奈は何とか俺の言ってることを理解してくれようとしている。

涙が抑え切れず頬に流れ落ちていくのが見える。


「そうだな…今まで玲奈にはたくさん迷惑を掛けたし、これからもそうなるかもしれない。ーーーでも俺が好きなのは玲奈だよ。」


「そっかぁ、ーーーグスッー、ん、もう奏多は…私のこと何度も泣かせて酷いよ。」


玲奈は俺を責めるようなことを言っているが口調や、話し方はそうではない。


「ごめん、それに関しては謝っても謝れない。」


俺はもう一度頭を下げた。


「ううん、別に怒ってるわけじゃないの。確かに昨日は悲しかったけど、奏多はちゃんと話してくれたし。好きって言ってくれたから。」


「そっか、伝わったならよかった。」


俺は正直ダメかもしれないと思った。

玲奈を何度も泣かせたし、その原因は誰でもない自分の弱さが招いたことだ。

俺には数え切れないほどの罪がある。

償いができるとしたら、これから先の玲奈をどれだけ笑顔に…幸せにしてやれるか…。

それだけは覚悟してきた。

あの時、玲奈が俺を守ってくれたようにこれからは俺が玲奈を守るって。


「私も奏多のことが大好きだよ。世界で一番誰よりも!!!」


玲奈は涙を拭い、泣きはらした目で俺に好意を伝えてくれた。

その時の顔は今まで見てきた何よりも美しくて、俺が一生掛けてでも守るべきものであるって再認識したんだ。








「奏多…私たちって付き合うってことになるのかな?」


あれからしばらく2人で前のように語り合った後、玲奈は俺に聞いてきた。


「俺はそうしたいとは思ってる…でも同時に俺が今までしてきたことを考えると俺が玲奈に認められるまでは、、、とも思ってる。」


「そっか。私にとっては奏多が想いを伝えてくれただけで今までの悲しさなんて吹き飛ぶくらい幸せな気分なんだけど。」


「そうなのか…。」


「それよりも、そんな前から好きだったならもっと早く言ってくれれば良いのに。他の人の目が気になるなら堂々と仲良くしてれば良いの。それでも何か言ってくる人がいたら私が直々にどれだけ仲が良くてお似合いなのか、説得するんだから!」


玲奈は語気を強めて俺に言い聞かせる。


「やっぱ、玲奈はすごいな…。」


「ーーーというか奏多は私のこと超人か何かだと勘違いしてるみたいだけど、普通の高校生なんだから。恋だってするし、好きな人も自分で選びたいの。他の人にイケメンならおすすめだとか言われても全く嬉しくないの。」


「そうか、確かに俺は玲奈のこと勘違いしてたのかもしれないな。自分より優れてるし、できないことを簡単にやってのける。ーーーでも、それは玲奈の一部でしかないってのに。」


高嶺は教えてくれた。

俺が思っているよりも玲奈は俺との今の関係を望んでくれていて、俺1人が勝手に大人ぶって離れようとしていたことを。


「じゃあ、ーーーー俺と付き合ってくれるか?」


俺はそう告げる、それはこれからの意思表示であり恋人関係という今までの幼なじみという関係から脱却していくという言葉。

幼なじみである以上に俺と玲奈には注目が集まってしまうだろうし、俺と玲奈は今までより深く、そして互いに守り合っていく存在になるんだろう。

でも、解答は俺の思っている言葉とは全く違うものだった。


「そんな言い方じゃダメ。ーーーちゃんと行動で見せて、私のことが好きで堪らないって。」


そう言って顔を俺に突き出す。

それが意味することが何なのか、そんなの頭も察しの悪い俺でもわかる。


「あぁ、行動で示さなきゃな。ーーー好きだよ、玲奈。」


俺は言葉と共に彼女の唇に自分の唇を触れさせた。













「じゃあ、おやすみ。こんな時間までいて悪かったな。また明日。」


「ううん、大丈夫。また来てね。お休みなさい。」


私は帰っていく奏多を隣である彼の家の扉が閉まるまで見送ってから、扉を閉じた。

その後、急いで自分の部屋に入ってベッドにダイブする。


「嬉しくて死にそう…。」


顔をベッドに押し付けた状態で、声を漏らす。


まさか奏多が告白してくれるなんて…最近は色々と想定外すぎる。

2年生に入ってから、私は常に情緒不安定なのかもしれない。

考えることはほとんど奏多のことなんだけれど。


「初めてキスもしちゃって…もう〜〜〜〜。」


ベッドでジタバタする。

私がこんなになったこと今までなかっただろう。

だって奏多からはっきりと好意を向けられたことなんてなかったから。

中学の頃、奏多をいじめたバスケ部の名前はもう覚えてないけど何とかって先輩に脅迫したことが奏多にバレた時抱き締めてもらって心臓が破裂するくらいドキドキしたけれど…今日のはそれどころじゃない。


「だって、私たち2人とも初めてなんだから。」


私はもちろん、誰ともキスをしたことがない。

昔から奏多のこと一筋だったし、他の人となんて考えるだけで気分が悪くなる。

奏多がそういうことをしたことがないのも調査済みだ。


「また、したくなってきちゃったな…奏多にそんなこと言ったらはしたないって思われちゃうかな。」


思いがようやく届いた喜びと、彼から告白してくれた喜びで今はテンションがおかしくなっているのかもしれない。

きっと、そうだ。

いつもの私なら…いや奏多のことになると途端に冷静さが保てないのは昔からかもしれない。

でも今日くらいは仕方がないと自分で自分を納得させる。


「でも、何で急に考えを変えたんだろう。昨日までは私から離れようとしてたのに。」


それは間違いない。

昨日の奏多は考えた末私から離れることを選んだという感じだった。

それなのに、今日になって急に考えが変わったというのは流石に急すぎる。

勿論昨日も今日も嘘を言っている感じはなかった。

それに私が奏多の嘘を見抜けないはずがない。

誰よりも奏多のことを知って、誰よりも愛している自信があるのだから。


「誰かに…言われた?」


その可能性が最も高いだろう。

奏多が自分の悩みを誰かに相談したのだろう。

それでその人の助言で私のことの考えを改めた。

それなら昨日今日で考えが変わってもおかしくはない。


そもそも奏多は私のことを好いていたのだし、それに気づきさえすれば何も迷うことなく告白してくれたはずだ。

とはいえ、あれだけ硬く考えを固めた奏多に半端な言葉では届きはしないだろう。

それをどうにかしてしまうほどの奏多が心を許した相手がいるということなのだろうか?


「一体誰?」


私は昨日の夜から猫の面の女さえどうにかできれば奏多をずっと近くにいさせることができると思っていた。

けど、どうやらそうではないらしい。

勿論助言した人が男性である場合も考えられるが、奏多が自らのコンプレックスを男性の知り合いに打ち明けるのは正直辛いだろう。

そう考えると女性の可能性の方が高いと考えるのが自然。

そこまで奏多に信頼されていて、奏多を動かす言葉を用意できるほどの女性がいるとするならいずれは脅威になるかもしれない。


「まだ…安心はでき、ないか。」


私は恋人という関係を得られただけで慢心するほど愚かな真似はする気がない。

なぜなら空想の産物である小説やドラマですら話を楽しくさせるために恋人を別れさせたりするものだ。

現実では尚のこと男女は些細なすれ違いで破局することがある。

人為的にそれを引き起こす人だっていることだろう。

その危険性はあらゆる人に及ぶ、私の肉親である母親とて安心できない…いやあの人こそ一番危険なのかもしれないという可能性すらある。


「ふー、怖い怖い。もう、奏多はモテモテなんだから。私だけに愛されてれば楽なのにさ。」


奏多h自覚していないだろうが、何度も他の女性と付き合う危険はあったのだ。

その度に私が手段を用意し、阻止してきただけで。

でも、とりあえずこれで抑止力にはなるだろう。


「あとは噂をさりげなく広めて、否定しなかれば良い。そのあと奏多に相談すれば公開するしかないかって言ってくれるだろうし。」


一度広まった噂は何かしらの解が得られるまで収束させることは難しい。

奏多だって覚悟を決めてくれたようだし、もう公に行き合っていることを言っておいた方が奏多も実感しやすいことだろう。

これで警戒すべき女性は猫の面の女と、奏多を説得した人…どちらも私にとって知らない相手ではあるが、私に大きく形勢は傾いた。

そもそも説得した女性は奏多のことをまだ好きではないんだろうし、そうなら私が優勢になることをみすみすする必要はない。



色々考えたが、そろそろ寝るべきだろう。

お風呂に入って、ぐっすりと。

明日からは奏多と恋人関係の日常は始まるのだ。

そんなの楽しみである他ない。


「お休みなさい、、、明日からも今までもずっと愛してるよ、奏多。」

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