俺の日常1
re:まったりと申します。初投稿作品です。文章から話の構成も含め、手探りの状態ですが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
俺の日常1
午前6時、いつも俺はこの時間に目が覚める。
それは別に早起きを日課にしている訳ではなく、ただ単純に夜更かしなんか滅多に無いため勝手に目が覚めるだけである。
家族はまだ目を覚ましてないため音を立てないようジャージに着替え、水を1杯飲んだら靴を履いて玄関を出る。
4月とはいえ少し肌寒い早朝の風を受けながら外に出るとすぐに声を掛けられる。
「おはよ、奏多。」
声の方向に向くと風になびいた長い髪を指で抑えながら俺の名前である新城奏多を呼ぶ少女。
世間的に見ても、俺の目から見ても10人いれば10人が美少女であると答えるほどの高校生にして完成された容姿を
「おはよう、玲奈は今日も早起きみたいだね。」
彼女は蘭堂玲奈。俺の幼なじみであり、隣の家の住人。
新城家と蘭堂家は母親同士に交流があり、彼女とはもう生まれた時から一緒に育ったと言っても過言では無い。
幼稚園から現在、高校2年生に至るまでずっと同じクラスであることは偶然ではなく何か得体の知れない力が働いているのでは無いかと思うほどだ。
「うん、奏多としっかりお話できるのは朝のこの時間くらいだから。」
少し不満そうに言う玲奈。
幼なじみの感情の機微はこれだけ長いこと一緒にいれば言葉にしなくとも伝わってくる。
「まあ、仕方ないんじゃない。少なくとも学校で玲奈と会話するのは、俺にとって高難易度すぎる。」
歩き出しながら会話を続ける俺たち。
俺の言ったことを彼女も理解してくれているようで、呼吸や表情から不満が少し解消したのがわかった。
「私は、いつでも奏多とお話ししたいと思ってるよ。」
「ありがとう。」
彼女の言葉にも俺の言葉にも偽りは無い。
幼なじみという関係性は高校生まで来ると仲良くしている人はそこまでいない。
少なくとも男女の幼なじみで学校でも一緒に居たら恋人なのかとあらぬ疑いを掛けられる事になるし、玲奈のような美少女にそんな噂が立てば俺にとって百害あって一利なしということもわかっている。
というか、中学の頃はそれでも話していたのだが…そのせいで俺は一年に渡って玲奈のことを当時好きだった男子学生から虐められることとなった。
そんな過去があるからか、玲奈も学校で話しかけてくることは滅多にない。
そのため朝の散歩、この時間が何も気にすることなく彼女と話すことのできる時間だ。
「最近、うちにも来てくれないからお母さん寂しがってた。」
「ああ、最後に行ってからもう1年くらい経つもんな。紫さんには申し訳ないが今後もお伺いすることはできないと言っておいてくれ。」
「もう、お母さんのことそんなに怖がらなくても良いのに。」
蘭堂家には父親がいない。
俺の記憶では一度も見たことはないので、恐らく最初からシングルマザーだと思うんだが…その蘭堂紫さんは俺の中でゴキブリの次辺りに苦手の対象だ。
その理由はいずれ語られることがあるかも知れない。
「そういえば、今日日直だった。もうそろそろ帰らなきゃ。」
暫く歩いて近所の公園についたところで公園に備え付けてある時計を見ながら玲奈が言った。
時刻は7時にあと少しでなると言ったくらい。
日直は8時には学校に着かなくてはならないので、いくら家から徒歩15分程度の高校であってもそこまでの余裕はない。
「そっか。俺はもう少しゆっくりしてから帰るよ。」
俺は日直ではないので、そんなに急ぐ必要はない。
ちょっとストレッチでも公園でしてから帰ろうかなと思っていたところだ。
「そう言う時は一緒に帰るのがマナーでしょ。女子にそれじゃモテないよ?」
玲奈は俺にも帰ってほしいようだが
「モテるとかはどうでも良いんだけど、一緒に帰ろうか。」
別に女子にモテるとか気にしてません、強がりじゃなく…。
「フフッ。奏多はわかりやすいんだから。」
笑みを浮かべながら俺の心情を勝手に察した玲奈がこちらを見る。
俺らは来た道を戻りながら、時間を惜しむように家に着くまでの間語り合った。