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素直になれない俺と彼女たち  作者: re:まったり
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新城奏多の過去4

俺は玲奈と公園に2時間ほどいた。

冬の寒い時期ではあったがそんなことも気にならないくらい、玲奈が手元で無事にいることが何よりも嬉しくて。

玲奈も俺から離れる素振りがなく、気づいたら2時間と言う時間が過ぎていたのだ。


先に口を開いたのは俺だった。


「何で、玲奈は俺が先輩から暴行を受けてるって分かったんだ?」


「最初は勘だったかな…奏多は喧嘩するような人じゃないし、そうなると誰かに何かされてるんじゃないかって。」


「まあ、そうなるか。」


「それから、奏多が毎日何かされてるとしたら部活かクラスの人が可能性が高いかなって。そうしたら大岸先輩が奏多のことを話しているのが聞こえて。」


「そうだったのか…。じゃあそれで、脅すって方法を取ったんだな。」


「うん、奏多を本当にすぐ解放してあげるにはあの人の弱みを全てバラしてしまうのが早いけど、それだと奏多が報復を受けるかもしれないし。」


裏で玲奈が俺のためにそんなに動いてれてたことに気づかなかった。

いや、俺が気づいてとしても止め切れる自信がないだろう。

それほど俺は当時玲奈に対して、負い目があったのだから。


「俺は玲奈がこんなに危ないことをするなんて思ってなかった。だから、今はすごくホッとしてる。玲奈に怪我とかなくて。けど、こんな危ないこと二度としないで欲しい。」


俺は玲奈に伝える。

玲奈から離れようと言ったのは俺だが、こんな行動に出るなら寧ろ離れない方がよかったのではないのかと思うほどに。


「奏多が私から離れないでいてくれるなら、こんなことしないよ。でももし奏多が傷ついていることに気づいたなら私は自分を止められないと思う。」


直接止めると言う方法を取らなかったとしても、俺に何かあれば止めることはあるかもしれないと言うところか。

玲奈に無茶をさせないためには俺が玲奈から離れず、大きく傷つかないようにしなくてはならない。

それしか俺には思いつかなかった。

そもそも、俺が先輩たちに目をつけられたのは玲奈の幼なじみでありとても親密な関係であることが知られ過ぎていたから。

なら、そうではないと言ってしまえばいい。


「なあ、玲奈1つ相談があるんだけど…ーーーー」











そして、中学も卒業が迫っている朝、俺は玲奈と公園に散歩をしにきた。

あの日以来毎日のように、人に見られない早朝に散歩することにした。


「学校で奏多と話せないのは、やっぱり寂しいな。」


玲奈はブランコの周りの柵に腰を掛け、足をぶらつかせながら不満げに言う。


「仕方ないだろ、と言うよりもう1年もそうしてきたんだからそろそろ慣れてくれ。」


「でも…ううん、仕方ないよね。全く会えなくなるわけじゃないもの。」


「ああ、今でもこうして会えてるしな。」


学校では幼なじみだったけど、今はそんなに仲がいいと言うわけではないくらいの関係になっている。

表向きには。

そこが玲奈の妥協した限界点だった。

なので、俺の家に来たりは時々している。

健人も勝手に結構来てるしな。


「奏多は今の学校生活楽しい?」


玲奈は俺にそう尋ねてくる。


「楽しいか…それはわからないな。前までは目標があったんだけど、今は何気なく過ぎ去る1日1日がすごく穏やかで心地いいんだ。」


中学生にしては枯れ過ぎてるのかもしれない。

あれもこれもしたいなんて思うことはない。

ただ、安心して毎日を過ごしていければそれが今の俺にとっての幸せになるだろうから。


「そっか、私はね…どっちも。奏多と話せる時間が減ったのは悲しいし、辛いけど、そのおかげで奏多が傷付かずに済むならそれは嬉しいことなの。」


「そっか、…ありがとうな。見守ってくれて。」


「ううん、それは私のしたいことだから。それに奏多は私のこと大事に思ってくれてるって改めて思うことができたから。」


玲奈は胸の前で両手を握り、目を閉じて何かを噛み締めるように表情を緩ませる。

俺は玲奈に何かを与えられたことなんて一度もないと思っていた。

実際玲奈の才能をとても遠い存在だと感じて、距離を置くことを考えたのも以前と同じような関係をずっと続けていくのは無理だと感じたから。

そして、それ自体は間違いではない。

同じ関係は続けられないし、それが玲奈を押さえ付ける枷になってしまうと考えているのは今も同じだ。

けど、玲奈自身が俺といることを望んでくれていて、人に比べられない時に幼なじみとして時を過ごすのはいいのではないだろうか。

いずれこうして話すこともできなくなるかもしれない。

それでも今はこの距離感で玲奈と接していきたいとそう思ったのだった。





その後は高校生になった後も玲奈とは朝散歩したり、SNSで連絡を取ったり他の人がいないときには話すようにしていた。

猫の面の女に脅かされるまでは。

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