気づいたら既に立っていた
暇つぶしに書きます。
現代とは世界観が明らかに違う世界、少女は立っていた。彼女は、自分がいつからそこにいたのか知る由もない。気づいたらそこにいたのだ。周りを通り過ぎる魑魅魍魎は、彼女を気にも留めない。体と世界との境界ははっきりとせず、黒いモヤのようなものが取り巻いており、見ているだけで生気を吸い取られそうだった。
少女の最後の記憶はコンビニに行こうと靴を履いて玄関の扉を開けたところまでで、以降の記憶はまだ更新されていない。当然ここでずっと立ち尽くしているわけにもいかず、何かしなければと思った。これまで先人たちの恩恵にあずかってのんきに生きてきた少女に、この世界で一人でどうこうする力はもちろんなく、何かに頼らなければすぐに空腹やらなんやらで死ぬのは明らかだ。
「すいません、ちょっといいですか?」
恐る恐る、一番人型に近い何かに話しかけてみた。それはこちらに振り返って、何かを考えてから、答えた。
「なにかな。」
意外にも言葉は通じた。なぜ言葉が通じるのかは不思議だが、それは後回しだ。
「ここってどこなんですかね?どうも私、道に迷っちゃったみたいで...」
ここが地球ではないことは確かだったが、いきなり異世界から来たなんて言ったら変な奴だなと思われそうだったので踏みとどまった。
「君は『表』から来た人だよね。よくいるんだよね、君みたいに迷い込んじゃう子。とりあえず、君一人じゃどうもできないだろうし、付いてきてよ。ここらへんも危険だしね」
「は、はあ...そうなんですか、よくわからないですけど」
どこから喋ってるかもわからないそれの声は、やけにはっきりと聞こえてくる。『表』というのが何を指すのかはわからないが、付いていく他はない。
「ここが僕の家だよ。意外と綺麗でしょ?」
「そうですね。私がいた世界の家とは全く違いますけど...」
1時間ほど歩いただろうか。彼の家は丘のような所にあり、白いなめらかな妙な物質で作られていた。道中はお互いの自己紹介、この世界のこと、様々なことを話した。
どうもこの世界は、私がもといた世界の裏にあるというのだ。人間たちの感情、想像、願望が具体化されたらしい。少女が最初いた大通りのような場所にいた怪物はそれらしい。
「入ってよ」
ライアスは私を家に招き入れた。たいして変な点はなく、まあこんなもんかという程度の内装だった。当たり前といえば当たり前なのだが、電子機器などは一切なかった。
「さっきも話したけど、ここは君がもといた世界の裏側。実際には存在しないんだよ。だから通常、君みたいな表の人間が来ることはないんだけど... 実は僕にも理由はよくわからない。」
「つまり私はもう帰れないっていうことですか?」
「そうとは言ってないよ。ただ、今現在では原因も戻る方法もわからないってだけさ。だからこれから色々と探っていこう。」
とんでもないことに巻き込まれたものだ。突然異世界に送り込まれたあげく、帰る方法もわからないとは。まあもとの世界に対する未練は対してないのだが。