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『帰還』そしてモノ

『アレ』の『モノ』ほど怖い物はない。人故に。

(戻ったっ!)半分脊髄に身を任せ一気に体勢を下げる。


(どうやら俺が『あの世界』にいる間は干渉はできなかったようだから、もし今のヤツが敵の攻撃だったとしたのならば、『あの世界』から『戻ってきた』タイミングは一番攻撃されるタイミングとなる。 今は『警戒』の時・・・!)

数秒かけてゆっくり辺りを見回す。人影が無い事を確認。



―――ゆっくりと、その場に身を伏せる。

(・・・もし『戻ってきた』直後に攻撃してこなかったとしても、慎重なヤツであれば『様子を見て遠くから観察する』という選択を取ることもあり得る。 暫くは迂闊に行動できない)



まあ、仮説の内の一つの『コレは攻撃で、この世界では心臓が止まるが、この世界では心臓が止まっても生きていける』は消えたと思っていいだろう。 『一生閉じ込める』タイプとしては解放されるのが早かったし、そういうタイプでなかったとしても『戻ってきた』タイミングに合わせて攻撃や脅しをかけてこないのは不自然だ。



・・・で、残るのは『コレは攻撃で、この世界では心臓が止まる。が、俺の特殊能力で心臓が止まっても生きていける』という方だ。


コレがかなり問題で、『あの世界で死んだ』はずの俺が生きているとバレたら、いきなり『あんな世界』に閉じ込めてくるヤツであればほぼ間違いなく物理攻撃に訴えてくる。 俺は喧嘩経験もないし、あったとしても中学3年レベルじゃあ無理がある。今は我慢の時間だ。



(・・・・・・・伏せる時に、ケモノ共のかぐわしいモノが落ちていないか確認するのを忘れていた。 起き上がったら渾身の(ウォー〇ー)寝間着(ファッション)に茶色いワンポイントがついている事もありえる・・・・)





・・・・・待てよ。 ていうかコレどのタイミングで起き上がればいいんだ?


渾身の寝間着にかぐわしいモノがついてるんだかついてないんだかわからないシュレディンガーのモノ状態で長時間伏せているというのは、割とクるモノがある。


『攻撃者』がいるかいないのかすらもわからない、いるとしてもいつまで見ているのかわからない。

『不確定』は、『不安』を呼び起こし、『不安』は身体に悪影響を及ぼす。



(・・・緊張からか? 汗が凄いな・・・・・ もし『モノ』がついていた場合、水分は『モノ』のタチの悪さを増幅させる。 滲んだ『モノ』の不快感はシャレにならない・・・・・)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


もう限界だ。 『世界』から脱出してもう10分は経っただろうか、もう辺りも暗くなってきた。 もういいだろ。というかまだダメだったとしても限界だ。もういいだろもう。

嫌だぞ。俺これ以上こんな思いするの嫌だぞ。『モノ』は嫌だぞ。『攻撃者』はもう別に最悪いいけど『モノ』は絶対嫌だ。




(限界だ・・・・・もう起き上がるしかない・・・・!)

周囲の警戒を怠らないようにしながら、ゆっくりと足から起き上がる。 人影、気配は依然無し。

自分の渾身のウ〇ーリーの無事を確認。 草や土は多少ついているが、『モノ』の影はない。



(・・・『モノ』の脅威が去った事は確認できた。 『攻撃者』は・・・・今のところは確認できないな。流石に去ったか、それとも元から居なかったかのどちらかだろう)


『対象の死』を近くまで確認しに来ずに、ただただ遠くから観察するだけ・・・ということはないだろう。 寧ろ確実に止めを刺さなければ息を吹き返す可能性まであるのだ。 ・・・まあ、それこそ天文学的な確率とまで言っていいが、心配性なヤツなら気にするだろうな。


(・・・もし『遠くから観察するだけ』のタイプなヤツだとしても、ソイツは『自分の能力』を過信している。 『自分の能力』に絶対的なナニカを感じているから、近くで確認せずとも十分だと考えているのだ。 だとすれば、『死亡確認』にそれほど時間をかけはしないだろう)




――――――つまり、『あの世界』は『タイム』の能力だ。 確認も兼ねて『詠唱』する。


「タイム!」

―――そう言い終わった瞬間、周囲が闇に覆われる。


やはりそうだ。 コレの一体何が『時間系』能力なのかはまだわからないが、もうここまで来ればほぼ確定だ。『タイム』は、『この世界』を作り出す。




心臓に手を当てる。 鼓動無し。

(ああ、というかさっき『戻った』時に脈拍を確認するのを忘れていた。 もっとも、そんな暇はなかったが・・・・)



口と鼻を同時に塞いでみる。 呼吸をやめた時特有の違和感というものはない。

(・・・だが、あまり続けると怖いな、流石に。 この実験は一旦中止しとこう)



見回す。視界に広がる闇。歩く。視界に広がる闇。屈む。視界には闇。跳ぶ。視界は闇。

(この世界には『重力』と『底』があるのか? 『地面を蹴ってジャンプ』できたし、ジャンプした後『地面に着地』したぞ・・・)




――――軽く確認しておきたい事は確認し終わった。 とりあえず『この世界』から脱出したいが・・・どうればいいのかまるで見当もつかない。適当に叫んでみよう。


「『時よッ! 『再始動』しろォーーー!』」

叫んで『みようとする』が、どうやらこの世界は音が響かないようだ。

(仮説完成。『この世界は完全な真空空間だが、呼吸をせずとも生きていける』)


「『タイム・クローズ』」「『ギガゴリラエクストリームハイパークロスタイム!!』」

(ダメか。 というかそもそも、さっき『戻れた』時は一体どんなトリガーで戻ったん―――)


などと考えていると、遥か遠くに光を見た。


――――――次の瞬間、目の前に広がる闇は書き換えられた。





(・・・・時間経過か。一先ず脈拍の確認だ)心臓に手を当てる。一定のペースを保った振動が手に伝わる。 止まるのは『あの世界』限定だな。これでほぼ確定だ。





(・・・・『時間経過』の正確な時間を計る為にも、もう一度『あの世界』に行くとしよう――)


「タイム!」

視界は闇に包まれる――――――

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