2..
佐波委に言われて素直に背もたれにだらんと身体を預けた僕は、目を閉じた。
ーー会えるだろうか、あの娘に。
最後に目にしたあの娘が提示したんだ。また5年後に。って。
寂しそうな後ろ姿が目に焼きついている。
~♪
ちょう
ちょう
提灯が~
持っていき~
持っていき~
お山は暗いで ばあさんが~
睨んでおるで~ 持っていき~
~♪
僕は、先ほどから一定の間隔で流れている曲に回想を邪魔されてむっとした顔をした。あまり気にならなかったからスルーしていたけれどよく解らないが微妙に不安になるメロディなんだ。流石に続くと流石の僕も気になる。僕は、横で目を閉じている佐波委の腕を軽く引くと、こそっと、彼に愚痴をこぼした。
「佐波委、この曲、……なんか僕いやなのだけれど、君、きにならないの?」
一瞬ぱっと驚いたように佐波委が、僕の方をずれた黒いキャップのつばからのぞく左目を見開くのが見えて、その目に僕はびくっとする。説明が難しいのだけれど、佐波委の表情になにか怖いものを感じて。
一拍置いて、佐波委が、ボソッとささやいたのが聞こえた。
「……聞こえるのか……見えては居ない……ああ。あの差異夜の生き残りか……道理で……」
ぼそぼそっと何か言っている様子に僕が訳も解らず何となく奇妙に思っていると、佐波委は、口にした。
「……バスの後をついてきてんだよ。……お前は見えなくて良かったな……。ぜってえ、連中に聞こえてること気づかれるんじゃねえぞ?余計なこと考えず寝ろ」
「???う、うん?」
よくわからないままに僕は頷き、素直に目を再び閉じたんだ。