砂砂粉粉
本当に中身がありません。思い付きで書きました。
凄く乾いた風が吹く。砂浜の砂がなぜか全部きな粉でできているような想いがして、一つまみ舐めてみると
「きな粉味だ」
道雄瑠は口の中が粉っぽくなり、あわててドリンクを探したが、まともな自動販売機がないのだ。
「飲むきな粉餅、なんだこりゃ」他にも飲む麦こうせんとかホットケーキの粉とか、ただの最中とか、口の中が乾いた道雄瑠には、余計に水が欲しくなるラインナップだった。
「待たせたわね」
道雄瑠が振り向くと、花柄のワンピースに黒いコートを羽織った妙齢の女性が海の家の日陰で佇んでいた。
「倉巣イーヴァさん、おひさしぶり。今日は泳がないのですか」
イーヴァはかぶりを振って顎をしゃくり上げ道雄瑠を見据えた。
「私がカナヅチだと知ってて、そういうこというのね」
「小学生時代からもう八年は経っている。そろそろ泳ぎをマスターしたかと思ってね」
「おあいにく様、今日はビジネスの話を持ちかけにきたの」
と言うと彼女は厳かにつばの広い黒い帽子を投げ捨てる。帽子は途中でカラスの群れになり飛び去った。
「またマジックの腕を上げたんですね」
「そう、にもかかわらず拍手もないのね」
機嫌を損ねてはと道雄瑠は拍手をすると、イーヴァが後ろ歩きをしながら話しかける。
「ここの砂がきな粉だと知ってるのは、私と道雄瑠と海の家の主人だけ」
「つまり三人で砂を売ればいいのだね」
と道雄瑠が納得しかけると、イーヴァは首を横に振って叫んだ。
「私は水が飲みたいの。さあ自動販売機を設置して」
それからというもの、ここの砂浜ではきな粉味の砂を舐めて、口の中がパッサパッサになった海水浴客たちが自動販売機に列をなすようになりました。
「砂舐めるって衛生的にはどうなんだろう」
道雄瑠の疑問は水平線の彼方に消えて行った。