File 1 薄氷の上の生活
初めまして、伊織です。
実際に恋愛小説を書いてみたいなと思って始めました
二つの連載作品をなるべく交互に頑張って行きたいなと思っています。
ぜひ思いっきり楽しんでいって下さい
質問も感想もどしどし募集しています
夕陽が二人の人間を綺麗に彩っている
たったふたりだけの静寂を掻き消すかのように言った
「先輩、私と付き合って下さい。」
俺、常盤礼治は絶賛告白されていた
相手の名前は一個下の後輩氷川優希。学校内では言わずと知れた有名人である
俺は頰を掻きながら、人差し指を立てつつこう言った。
「....一応一つだけ、聞いても良いか?」
「はい...」
「お前、男だよね」
そう俺は現在ズボンを履いた可愛らしい恰好をした子に告白されているのである
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「...で?お前はまた告白されて振ったと」
「まぁ、一応」
昨日の出来事を俺は俺の無二の親友である海原圭介と会話をしていた
たまたまクラスで俺を呼び出したのが圭介で、その後の出来事をなんとなく察したらしい。
それで結果を気にしていたらしく、そのあとの出来事を話していた所だ
「お前も酷い事するな。せっかく向こうは勇気を振り絞って告ったと言うのに...」
「仕方がないだろう...俺には好きな人が居るんだから、あぁ言う事は早めに言ったほうが良いと思ったんだよ。」
俺がこの学校令成学園に来た理由はただ一つ。
この学校に推薦で来たある人を追い掛けて入学したのである
その人の名は同じ学園にいる令成学園の2年生で名前は天宮平良
容姿端麗・品行方正・成績優秀の3拍子が揃っている上に
彼女は天宮グループという『揺かごから墓場まで、あなたの生活に寄り添います』
というキャッチコピーで有名な会社の社長令嬢である
俺は彼女と中学の同級生で初めて会った
あまりの迫力に周囲からは『氷結の麗人』なんて呼ばれたりしている。
...まぁ俺が好きになった理由はそこじゃないんだけどね
「...で、お前は中学時代の成績を無理やり上げて、この難関と言われた令成学園に来たと..」
「まさか、この学校がそんなにも凄いとは思わなかったんだよ。」
この令成学園はあらゆる才能の持ち主が来る学園である
基本的に日本各地から中学で何かしらの成果を残した奴が推薦で来るのが当たり前という学校であり、
入試で入ろうとしたらまさに鬼門
ある年によっては、1000人受験者が居て合格者は三人だけだったってケースも珍しくはない
うちの両親なんて入学が決まった瞬間にまず確認した事が、これ詐欺じゃないかと疑っていたほどだ。
因みに俺自身も入学式までずっと不安だった。本当に受かっているのかと
そして入学した後も振い落としに掛けられて、辞めていったものもいると聞く
その理由はたった一つ。レベルが高すぎてついて行けないからだそうだ
しかし、この学園を卒業まで行った者には、華やかしい未来が待っていると言われている
芸能人、政治家、トップアスリート、弁護士等、更には石油王も産み出したともいう
それを叶えるために様々な道のエキスパートが講師としてこの学園に来ており、
様々なカリキュラムをオリジナルで組んでくれたりもしている。
何でも3年の先輩にはもう進路先の重役ポストまで獲得している人も居るとか...
因みに校風自体は自由で俺自身は割と気に入っている。
まぁ、俺自身は生き残るのに必死な一年だったから何をしたいのかなんて、全然決めてないんだけど
その為、現在この学園に残っている入試組は俺含め五人程度だそうだ
「まぁ、俺は期待してるぜ現にうちの学年じゃお前だけだよ。この学園に残っている入試組は」
「茶化さないでくれよ。俺なんていつも気分はまるで、氷の上にでも立っているような気分なんだぜ」
「危なげなことをしてるのか?」
「してねぇよ。バァ〜カ」
そんな下らない会話をしつつ俺達は、下駄箱に向かい、靴を取ろうとした時下駄箱の中に小さな便箋があった
それを誰にも見られないようにそっとポケットの中に入れた。
「ちょっと悪い。俺トイレ」
「おう、予鈴に遅れんなよ」と返す圭介を尻目にして俺はトイレへと向かった
可愛らしいハートマークのシールが貼られている。所謂ラブレターと呼ばれるものだった
裏を見てみたけど差出人は不明
書いてある内容を読んでみた
常盤先輩へ
木々の緑が目にまぶしい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか
単刀直入に申しますと、あなたに大事なお話があります
放課後、学校の屋上で待ってます。
絶対に来て下さい。さもないと絶対にあなたを許しません
まだ海開きをするには早い時期でしょうから
怖っ
え、何?最初の方は爽やかな感じだったのに、後半の部分すごく怖いんだけど
しかも、この学園本物の金持ちも結構いるから、冗談じゃ済まないって可能性も否定出来ないんだけど。
金持ちがこっちの思考を理解するのに苦労するように、逆もまた然りだからな
「...行くしかないか」
俺は取り敢えず、予鈴に間に合うためにトイレを出て、教室へと向かった
今日も今日とて、俺の気分はまさにマリッジブルーも良いところだった。
この時の俺はまだ知らなかった
この小さな便箋から始まった恋物語はこの学園中の歴史に大きく刻み込まれる事件へと発展していく事を
そして、俺、常盤礼治の人生が大きく変わっていく転機でもあるという事を...