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きのみの小道
茶色、オレンジ、きいろ、みどり。
たくさんのきのみが彩るちいさな道で。
大人しく座っている怖がりのクマに、いたずら好きのリスが話しかけています。
「ほほひほー。
まはまははふはんひほひははふほひ。
へえ、ほほはひはひららい?」
その両方のほっぺたは、はち切れんばかりにきのみを詰めて、ぷっくりふくらみ、
うまく喋ることができていません。
「ざんねんだけど、ぼくの頬にはふくろがないからなあ」
それでも、クマにはちゃんとわかるようです。
ほかのどうぶつであれば、チンプンカンプンだったことでしょう。
「いちど巣穴においてきて、また採りにくればいいよ」
そう言いながら、クマは地面すれすれに、その頭を下げました。
慣れたようすで、リスはその頭の上をすたこらのぼり。
クマの首の毛にしっかりと掴まりました。
その感触をたしかめて、クマは起き上がり、ゆっくり歩きだしました。
歩いている間、リスはいつも、こっそり毛づくろいをしているので、
クマの首元の毛は、いつもつやつやしています。
自分ではみえないところですから、クマはそれに気づいていません。
リスのひそかな自慢です。