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根っこ広場
怖がりのクマが、ひとりきり。
根っこ広場の根っこにむかい、なにやらちいさく呟いています。
「ぼくは、この森の仲間たちを大切に思っている」
呟いたあと、クマは目をつぶります。
「ぼくは、この森の仲間たちのことを、心から大切に思っている」
もう一度そう呟いて、クマは、ぎゅっと目をつぶったままうごきません。
しばらくそうしていましたが、大きく息をはいたあと、ゆっくりと目をひらきました。
ここは、根っこ広場です。
嘘をつけば、瞬く間に、根っこにからめとられ、捕まってしまいます。
自らの心を確かめるように、あるいは戒めるように。
怖がりクマはときどき、こうして呟くのです。