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おさんぽ日和
好きなもの、きらいなもの。
自分で選んだもの、選べなかったもの。
自ら望んだもの、望まぬもの。
いろんなものに囲まれて、私の世界はできています。
それら中で生きていると、ふと、胸が締め付けられるような、息が詰まる瞬間があり。
そんな時に、必ず向かう場所があります。
数限りなく並ぶ、茶色くて四角い箱の中。
そこには、目移りしてしまうほど色とりどりの、世界が並んでいます。
その中のひとつを手に取って、ひらいてしまえば。
あっという間に私は、私の世界から抜け出してしまうのです。
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穏やかな風が、頬を撫ぜます。
さらさらと木の葉がこすれ合う音が、にぎやかにお喋りするような鳥たちの可愛い声が、疲れた耳に心地よく馴染みます。
ここは森。
深い深い森の中。
美しく鮮やかな緑色に囲まれて、私は立っているのです。
さあ。
どこへ行きましょうか。
この物語には、きまりがありません。
順番もありません。
もちろん、順を追って読んでもらってもかまいません。
いっことばしでも、いきなりおわりの話を読んでしまってもいいのです。
どうぞ、あなたのお好きなように。