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第81話 違和感

 システィナがその違和感に気付いたのは、ペインを魔界に送ってから4ヶ月近くが経ってからだった。

 自らが持つ神としての力が、ほんの僅かだが減っている事に気付いたからだ。


 不審に思い、システィーナと魔界を結ぶビッグゲートを遠視で覗くシスティナ。

 しかしそこで見えたものは、人と魔族が交互に行き来する姿だった。


(どうやらあの娘は失敗したみたいね。 もう少し、あっちの世界を滅茶苦茶にしてくれれば良かったのに……。 でもアーシュラが怒り狂って姿を見せると思ったのに拍子抜けね)


 実の妹のペイン(菊江)を化け物に変えて魔界に送る事で、アーシュラを怒らせて再度こちらの世界へ誘い出し殺すつもりだったシスティナ。


 あてが外れたのもそうだが、他にもがっかりしたのは自分の力が減った原因が凄くくだらない理由だったからだ。

 システィナの力の源は、この世界に住む人間や精霊等が神へ抱く信仰心である。

 その為、システィナを信仰するこの世界の住人が減ればそれだけ力も失う。


 最初はシスティーナの住人が魔界に移動でも始めたのかと心配したが、数日でまた戻ってきたので単なる観光目的で渡界しただけらしい。

 魔族の商人らしき者が渡ってくるのも見えたが、こちらもルピナスで用を済ませると魔界に帰っていくので問題は無かった。


 魔族がルピナスの他にも足を運び出したら、ビッグゲートを破壊する手段を考える事にして、システィナは自分1人しか居ない神界で怠惰な時間を再び過ごし始める。


 そして最初に違和感を感じた時から、1年が過ぎた。


 魔界とルピナス間の交易は相変わらず盛んで、さらにはルピナスを起点と世界中に散らばる様々な国に物資が運ばれている。

 暇つぶしにビッグゲートからシスティーナに渡ってくる魔族の商人を顔を暫く観察していたシスティナは、ある事に気が付いた。


(そういえば、魔界からルピナスに行商に来る商人は毎回違うのね)


 そう、行商で来る魔族の商人の数は多いのだが同じ者が再度訪れる事は無い。

 もしかすると商売のチャンスを均等に与えようと、アーシュラ辺りが考えたのだと判断したシスティナは久しぶりに己の世界を遠視を使って巡回を始めた。


 そして12ヶ所ほど大規模な都市を作るのか大勢で木々を倒し開墾している場所を見つけると、作業している者に神の加護を与え信仰心を植えつけようと思いつく。


『この世界の発展に寄与している者達よ、神の加護を与える。 疲労を軽減し、身体能力も向上させる加護だ。 今後も私の世界の為に、励むように』


 満足したシスティナは加護を与えた事で疲れを覚えたので、この都市が完成する頃まで一休みする事にした。

 実際にそこに何が作られようとしているのか、よく確かめようともせずに……。




 ガクンッ!

 突如身体から急激に力が抜け落ちるのを感じたシスティナは、一旦下界に降りようと試みたものの力を発動させる事が出来なかった。


(なに、一体なにが起こっているの!?)


 幸い遠視の力だけは使う事が出来たので、下界の様子を見るとシスティーナに住む人間の全てが開墾していた12ヶ所を目指しているのが見える。


 さらに目を凝らして見ると、何故かその場所には既に大量の魔族達が円を組むように並んでおり、集まる住人を歓迎していた。

 システィナの頭の中は徐々にパニック状態に陥った、何故ならこれだけの数の魔族が世界を渡っていれば、こうなる前に気付けた筈なのだ。

 彼女の探知能力すら上回る何かがある、そう考えた直後に彼女の目の前に想像すらしていなかった物が姿を現した!


「ビ、ビッグゲート!?」


 システィナが同時に見ている12ヶ所の映像その全てに映し出されたものは、ルピナスの近くにしか建造されていなかった大型転移陣ビッグゲートだったのである。

 システィーナの住人が、続々とゲートを潜り魔界へ移動してゆく。

 その度にシスティナの力は失われ、遠視の力さえ維持が厳しくなる。


 そして住人が一定数魔界へ渡ると、今度は魔界から魔族が同じ人数でこちらの世界へと渡ってくるのだ。

 視界から色が失われ、ノイズ混じりの白黒画面をなおも食い入る様に見つめているとゲートの上に誰かが立っているのが見えた。


「……ハジメ・サトウ!」


 12個のゲート全ての上にハジメが立っている。

 1人しか居ない筈の彼が何故全てのゲートの上に立っているのか、最早彼女の思考では追いつきそうもない。


 すると念の為に監視していた、ルピナスのビッグゲートからアーシュラとカールラともう1人、見覚えの無い男が姿を見せた。


「ほう、ここが貴様の住処か。 ここから多くの人間の命を弄び消えてゆく様を見ては、楽しんでいたのだな」


「な、どうやってここに!?」


 背後からの声に驚き振り向くと、先程アーシュラ達とこちらの世界に来た男が何故か神界まで瞬時に移動していたのだ!


「我が名はゴルトス、貴様が忌み嫌う魔界の神よ。 2度と会う事も無いだろうが、せめて別れの挨拶くらいはしてやろうと思ってな」


「ゴルトスだと? そうか貴様はハジメを唆してこの世界を侵略するつもりか!?」


 システィナの問いかけに、ゴルトスは呆れた顔をしながら返す。


「勘違いするな、これはハジメが立案した計画なのだ。 そして計画はまだ完了していない」


「完了していない?」


 不思議そうに見るシスティナを憐れむように、ゴルトスは答えを吐き捨てた。


「侵略ならこちらの世界の住人を歓迎する筈が無かろう、それに我が愛しの魔族達も渡らせたりもしない。 魔族達をこちらの世界に来させた理由、それはこちらの世界との縁を深め我がシスティーナへ渡界可能になるだけの親和性を持たせる為だ!」


 ここでようやくシスティナは気が付いた、魔界の神である筈のゴルトスがゲートを通り、このシスティーナに渡ってきたという事実に。


「システィーナの支配力も既に我が上回っておる、貴様にはもう草1本生えさせる力も残されてはおらん」


 睨み付けるシスティナに、彼はハジメの計画の最終目的を明かした。


「システィーナは我が貰い受ける。 そして貴様を神界に幽閉した後にシスティーナとの繋がりを完全に絶ち、全ての世界から完全に隔離する。 システィナよ、貴様はこの己以外何も存在しない空間で永遠に過ごすのだ。 ハジメは死よりも恐ろしい罰を、貴様に与えるつもりみたいだぞ」


 神であるシスティナは、自ら命を絶つ事が出来ない。

 裁きの瞬間が刻一刻と近づいていた……。

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