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第66話 能力の落とし穴

「危なかった、再生が無ければ(オタマジャクシの元は)即死だった」


悶絶による気絶から復活したハジメはアーシュラから少し離れた場所で身構えている、自業自得なのだがまた蹴られては堪らない。


「それにしてもシスティナの加護を持つ者からの攻撃は反射するんじゃなかったのかよ?」


先日のエティンから得た能力が発動しなかった事にハジメは疑問を感じた。


「答えは簡単じゃない、婿殿にはまだ分からない?しかも分かった事が2つも有るわよ」


アーシュラさんが事も無げに話す。


「分かった事が2つ?」


「ええ、まず1つ目はどの程度までかは分からないけど殺意を含まない攻撃はスルーされる事。そして2つ目が婿殿の子種の元の1つを潰す位のお仕置きならこれから何度しても平気そうだって事ね」


ウィンクするアーシュラさんを見て、脂汗が大量に流れ始める。玉を潰されるお仕置き程度は無問題だと教えてしまった様なものだからだ。


「でもアーシュラ様。先程3人目が欲しいみたいな事を言ってましたけど、それならばアーシュラ様もブラックバグズを食べてみたら如何ですか?」


マリアが感じた事を率直に話す、しかし言い終えた時には既にアーシュラさんの姿は無くなっていた・・・。




「ここまでゴ◯ブリが苦手だったのか、仕方ないここはカルーラさんが男を見せる時ですね」


「ぐぬぬぬ・・・」


カルーラさんが苦虫を噛み潰したような顔をした、実は既に40匹近いブラックバグズを探して食べているのだが子宝に恵まれる能力の獲得には至っていない。


「3人目が欲しいというのは、あいつの照れ隠しみたいなものだ。本気で考える必要も無い事だがラーセッツの件も考慮すれば、3人目もいずれ考えねばならなくなるかもな」


(しかし、あいつがこの駐屯地に来てからキングブラウンスライムを少しずつ間引きしているのに気付いているのは居ないか。兵士達を無駄死にさせる訳にいかないからな、アーシュラに苦労を押し付けて申し訳無く思うよ)


「あの、カルーラ様?アーシュラ様がスライムを間引きされているというのは本当ですか?」


「な、何故それを!?」


「大変心苦しいのですが、カルーラ様の心の声が聞こえてしまったもので」


心を読まれていた事に驚きを隠せないカルーラ、しかし隠し続ける事も出来ないと悟るとハジメ達にキングブラウンスライムの本当の怖さを伝える事を決めた。


「キングブラウンスライムの本当に怖い所は、2体以上居る時の異常な生命力だ」


カルーラの説明によるとキングブラウンスライム自体の攻撃力は所詮ブラウンスライム50匹の融合体なので低く、数人で対処すれば1体は問題無く倒せるそうなのだが2体以上になると物凄く厄介なものに変わるそうだ。


「2体以上になるとどうして厄介になるか分かるかね?」


「多分2体にダメージを与えると元のブラウンスライムに分裂して、何体かにダメージを背負わせて身代わりとして生き残りでまたキングブラウンスライムとなろうとするんじゃないのか? でも周囲には融合出来なかったブラウンスライムが残っているから、そいつらが無くなるまで延々と繰り返される・・・と」


「正解だ、なので1体ずつ引き寄せて戦う必要が有る。 2体同時に瞬殺出来るのはアーシュラくらいだ、私もやろうと思えば出来るが周辺地域に傷痕を残してしまうからな」


広域魔法か何かでカルーラさんの場合は殲滅するのだろう、でもそうなると分裂される前に喰わないといけないな。どうすれば良いだろう?


「とりあえず今回は最初に食べる選択肢を捨てるのはどうでしょうか?」


サリーネがこんな提案をしてきた。


「ラン姉様も言っておりましたが、キングブラウンスライムはさして珍しい存在でも無いみたいです。とりあえず最後の1体になるまで魔法の集中砲火で削って、最後の1体になってから捕らえてハジメさんが代表して食べれば良いと思いますが?失敗してもブラウンスライムが繁殖するのを待てば済む話ですし」


言われてみれば確かにそうだ、最初に喰って確かめようと思うから何体も相手をしなければならなくなる。付近の住人の退避も出来ているみたいだし、その方が楽に違いない。


「カルーラさん、サリーネの案が今回は良さそうに思う。どこか拓けた場所にキングブラウンスライム達をまとめて誘い込むから範囲魔法を使える魔族の方達を集めておいて貰えないかな?誘い込んだら全員時間差で範囲魔法を発動させる。それで削っていこう」


作戦案が決まって誘い出す役を誰がするかという話になって、立案者であるハジメがする事となった。ただし、そのまま1人で歩いて行けば追い付かれて逆に喰われるだけなのでヒッポグリフのヒッポちゃんに乗せてもらっての作戦である。


「ヒッポちゃん、ハジメの事をお願いね」


『セシリア様、お任せください!このヒッポちゃんが必ず役目を果たしてみせます』


【役目を果たすだと?エサが混ざった出来損ないのお前に何が出来る!?】


突如脳に直接響く声が聞こえると頭上から1体のモンスターが降りてきた、鷲と獅子の身体を併せ持つ最もメジャーなモンスターの1つであるグリフォンだ。


【戯れにエサの馬に種を仕込んで出来上がったのが下等な存在であるお前だ、早く共食いをしに向かった方が良いぞ】


ここでケンカを売れば心の主であるセシリアにも危害が加えられるかもしれない、ヒッポちゃんはそう考えたらしく罵詈雑言に耐えていた。


【ここまで言われて何も言えないとはどうやら自覚していたみたいだな、そこをどけ俺様が代わりにやってやる】


後ろ足でヒッポちゃんを蹴り上げた瞬間、ハジメが逆にキレた。


「おいおい、トンビと野良猫のキメラが何を偉そうな事を言っているんだ?」


【何?】


鷲と獅子の身体をトンビと野良猫扱いされた事に誇りを傷つけられたのかグリフォンの動きが止まる。


「そんなにエサが欲しいなら、ニャーニャー言いながら飼い主に頬ずりしていれば良いんだよ。ヒッポちゃんをそれ以上侮辱するのは俺が許さん。返り討ちにして喰ってやるから覚悟しろ」


キングブラウンスライムの討伐の前に何故かハジメとグリフォンの一騎打ちが始まろうとしていた。

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