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第63話 【体内に取り込む者】~incorporater~

「お兄ちゃん、もう止めて。私達は兄妹なのよ、これ以上されたら壊れちゃう」


「安心して良いよアンナ、お前がどれだけ壊れてもお兄ちゃんはお前をこの世界で1番愛しているから」


そう言うとミシェルは再びアンナを求め身体を重ねる、豹変してしまった兄の姿が歪んで見えるのは頬を伝う涙の所為なのだろうか?それをぼんやりと見つめていたアンナは心にヒビが入る音が聞こえた気がした。


(どうしてこんな事に・・・)


徐々に瞳から光が失われ、輪郭を失い始めた意識が暗い闇の底へと沈んでゆく。自我が希薄になっていくのを感じながらアンナは兄ミシェルに拉致された夜の事を思い返していた。





ドンドンドン・・・・! 深夜、自室のドアを急に何度も叩かれた。


「アンナ、俺だすぐにドアを開けてくれ」


(こんな夜更けに一体何?)


アンナは目をこすりながらドアを開ける、するとドアの外ではミシェルが装備を纏って立っていた。


「急で悪いがすぐに町を出立する、準備してくれ」


「日が昇ってからでも良いでしょ、お兄ちゃん?今日、回復で使った魔法力もまだ回復していないし」


「それじゃ遅いんだ、着替えも多目に用意してくれ」


「どうせ日帰りで町に戻ってくるのに、どうして着替えが必要なの?」


「答えは後で、早く準備するんだ」


「は~い」


この時、目が完全に覚めていたならば下の階から上ってくる血の臭いと兄の異変に気付けたのかもしれない。だが血の臭いにようやく気付けたのが1階に下りてからだった事がアンナにとって最大の不運と言えるかもしれない、血生臭い臭いの元をその目で見てしまったのだから・・・。


準備を終えたアンナの手を強引に引く様にしてミシェルは階段を下りていく、何故か剣を片手に持っている事に疑問を抱いたが明るければ大量の血糊が付いた刀身を見て卒倒しかけていただろう。


「待ってお兄ちゃん、父さんに出る事を言っておかないと」


「そんな事を気にしなくたって平気だよ、親父はもうお前の声なんて聞こえないだろうし」


「えっそれはどういう・・・」


そこまで言い掛けてアンナは宿の入り口の方から血の臭いが漂って来るのに気が付いた。


「お兄ちゃん、入り口の方から血の臭いが」


「アンナ、もう会う事は無いんだ。親父に最後の挨拶でもしていくと良い」


兄の不穏な言葉に不安を覚えたアンナが急いで向かうと、父親が血溜まりの中で倒れていた。すぐに回復魔法を掛けるが反応は無い、その背中には何度も剣で刺された跡が残されていた。


「魔法を掛けても無駄だよ、既に死んでいるからな。アンナに俺の子を産ませたいと言ったら反対してきやがったから、邪魔出来ない様にしたんだよ」


振り返ると兄の鎧は父を殺した際に付いた返り血で真っ赤に染まっていた、それを見たアンナは気を失って父親の死体の前に倒れる。


「何だ、挨拶するんじゃなかったのか?挨拶をしないのなら次はソニアとキャシーを迎えに行こう」


ミシェルはアンナを肩で担ぐと実家の宿を後にする、そして自身の父親と同様に抵抗するソニアとキャシーの家族の命を奪うと2人を連れて生まれ故郷を捨てた。


「お前達は俺の物だ、俺と一緒に堕ちよう」


正気を既に失っているミシェルの後を追うソニアとキャシーの瞳の奥には狂喜が宿っていた。家族を殺して奪い去ろうとするミシェルの所業を目の前にして、思考を放棄してまともな判断力を欠落させた結果といえる。




そして現在4人はルギーから幾分離れた森の中に在る洞窟で身を隠していた。1人で行動している旅人や商人をソニアとキャシーが身体を使って誘惑し、森の奥で行為に及ぶと背後から襲って殺しその際に奪った水と食料で生活していた。


「このままじゃ、いずれこの場所も見つかってしまうわ。どうするのミシェル?」


肌を重ね胸の上で息を荒くしているソニアが今後の方針を尋ねる。瞳から完全に光が消え何をされても反応しなくなってしまった妹の頭を撫でながらミシェルはある提案を出した。


「そうだな、川沿いを移動しながら・・・俺達もハジメ達の真似事でもしてみるか?」


「真似事?」


「ハジメの奴が言っていたじゃないか。スライム以外のモンスター、ゴブリンやコボルト等は怪物喰いを持っていなくても食べれるって」


「そうするしか無さそうね、でもスライムを倒すのにも苦労している私達でゴブリンを倒せるのかしら?」


「やるしか無いだろう、ハジメ達異世界から来た連中を排除する為にも俺達は強くならないといけないんだ」


そう言ってミシェルは身体を起こすと、未だ消化不良の状態となっている欲求を再びソニアにぶつけた。システィナによって理性を奪われてからのミシェルは性欲が急激に増した、理性が失われた事で欲求は満たされなくなり際限無く身体を求め続ける獣に近い。


それから数時間後ソニアだけで満足出来ずキャシーまで犯したミシェルは新鮮な空気を吸おうと洞窟の外に出た、すると洞窟の前で1体のモンスターがミシェルを待ち構えていた。


「エティン・・・・」


月明かりに照らされているそのモンスターはこれまで聞いた話のものとは明らかに違っていた。2つの頭に4つの顔、更には4本の腕を持つエティンは禍々しくもどこか神々しい神の力を感じる。


(あなたの糧となる者をそこまで運びました、目の前に居る化け物を取り込みあなたの力とするのです)


ミシェルの頭の中にシスティナの声が響く。


(あなたには【捕食融合】の加護を与えました、生きている者でさえあれば人でもモンスターでも捕食し融合する事でその力を己の物と出来ます。異世界から来た者を喰らい尽くす存在へと進化するのです)


システィナの声に導かれるままミシェルは身動き1つしないフュージョンエティンに触れる、次の瞬間エティンの身体が液状に変わるとミシェルはその液体を飲み始めた。飲む度にミシェルの身体が地面に沈んでゆく、外見はそのままだがエティンの体重の分だけ重くなった様にも見える。


(どう?その化け物に与えられていた加護が融合する事であなたの物となった筈よ、更にエティンの筋力や体力まで得たあなたは格段に強くなった。さあ、今度はその洞窟の中に居る女達も取り込みなさい。そうする事であなたは彼女達と本当の意味で1つとなり共に生きて共に滅ぶ事が出来るのです)


「・・・・・・・俺は、皆と1つになる。そして共に生き共に滅ぶ」


ふらふらと洞窟の中に戻るミシェル、数刻後洞窟の中から若い女性の叫び声がこだました。


(ふふふ、これであなたは文字通り人喰いの化け物となった。残る1体のエティンも取り込めば完成体となり、生けとし生ける者全てから恐れられる存在となる。だけどその力に耐えられるのも精々数百年、それを過ぎれば身体は崩れ塵へと変わる。用済みの異世界人を排除して再び私好みの世界に戻るまで、束の間の強者の愉悦を楽しむと良いでしょう)


この日、アンナ・ソニア・キャシーの3人はミシェルに喰われその身体の一部となった。そして3人の魂を己の魂と融合させると次の獲物を求めて洞窟を後にするのだった・・・。

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