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第52話 【ダイナス恐怖の10日間】~9日目朝から夕方の部~

「・・・・・・っという訳で何故か近衛騎士団を率いておりました私が国王になりまして、こちらに居るエイラという女性を后に迎えご息女のクレアを王女とする事となりました」


(出来れば、・・・・・・の部分をもう2・3回聞かせてもらえませんか?)


翌朝ダイナスの住人が広場に集められ近衛騎士団長のアインの口から王族の不正が明らかにされ国王夫妻と皇太子は逃亡、他の一族の者達も拘束された事が告げられた。


またこの混乱に乗じてコルティナイト公爵が簒奪を企み挙兵、それが失敗すると周辺の領主達がコルティナイト領に攻め込もうとして義勇軍により殲滅されたと伝えられるとあまりにも多くの事が起こりすぎて住人達は頭の中がパニックになった。しかも冒険者ギルド本部の壊滅やマミー徘徊事件等がさらっとスルーされているし・・・。


「それと国王達は公表しておりませんでしたが、魔族との間で停戦交渉が進んでおります。数ヵ月後には魔界との行き来も可能となり、新たに冒険者となられる方々の活動範囲も広がると思われます。無論、魔界へ出向き魔族と交流を結ぶ事も商売を行う事も出来ます。先程話したコルティナイト領へ攻め入ろうとした周辺領主の軍を殲滅されたのはコルティナイト公女セレスティーナ様の救援依頼を受けた魔族の方々で結成された義勇軍だったのです」


(クーデターという訳でも無さそうだし、国も良くなるみたいだからまあいいか)


処理しきれない情報が一気に流れ込んできた時、人の思考はフリーズする。畳み掛ける様に一気に説明したおかげで何でこうなったのか良く分からないまま、なし崩し的にアインの国王就任がダイナスの住人に受け入れられた。




「無事に即位が認められたみたいですね、お義父上」


「何で国王になってしまったのか、何で君にお義父上と呼ばれているのか未だに良く分からないのだが?ラーセッツ君」


アインとラーセッツのやり取りを見て、『アインの言っている事の方が正しい』と思うハジメ達。ちなみにこの場にアーシュラさんは居ない、夫である魔王に息子がやらかしてしまった事を報告しに1度魔界に単身で戻っている。まあ、母親が母親だけに似た者母子と言えるだろう。


(婿殿、帰ってきたら覚悟しておいてね)


突如、頭の中に聞こえてはならない声が響いた。大丈夫だ、流石に魔界から俺の思考を読み取る真似なんて出来る筈が無い。


(私が戻れば答えはすぐに分かるわよ、それはそうと初日にミリンダさんとした約束を守ってあげないと彼女拗ねてしまうから気を付けてね)


約束?そういえば、初日にギルド本部の連中とやり合う時に彼女と約束していたな。ダイナスに滞在するのも明日までだし約束を果たしておくべきかもしれないな。ハジメはミリンダに尋ねてみた。


「ミリンダ」


「はい、どうかされましたかハジメ様?」


「ほら、初日の日に約束しただろ?ダイナスに居る間の一晩で望むだけの褒美を与えるって。ダイナスに居るのは明日までだから今晩辺りどうかと思ってな」


「本当ですか!?」


ミリンダは一瞬目を輝かせた、しかしすぐに元に戻るとハジメに別のお願いをしてきた。


「出来れば今夜一晩中可愛がって欲しい所ですが、それは別の方に譲ろうと思います。代わりに午後から半日私とデートして頂けませんか?」


「デート?」


「はい」


ハジメがセシリア達に了承を貰おうと振り向くと、セシリアは無論だがランやサリーネも頷いていた。どうやら彼女達の中である程度の話し合いは出来ていたみたいだ。


「分かった、じゃあ少し早いけど昼食を食べてその後2人でデートしよう」


「はい♪」




先に待ち合わせ場所になっているダイナスの中央広場横の噴水前で待っていると予定時間を少し過ぎてからミリンダはやってきた。


「遅れてすいませんでしたハジメ様、ちょっと露天や衣料品店で色々と買い物をしていたので」


「買い物なら一緒に回れるじゃないか」


「いえ、一緒に回っているとあそこに行く時間が無くなってしまうので」


あそこ?あそこって一体どこだ?


「では、ハジメ様行きましょう」


ミリンダは袋を幾つも抱えたままハジメの手を掴んで近衛騎士の詰め所へ向かい馬を借りると、ダイナスの外へ駆け出した。そして走る事数時間、ミリンダの目的の場所に到着した。


「着きましたハジメ様!私、ルピナスに帰る前にもう1度ここに来たかったんです」


「ここに?」


そこはダイナスの南西、暗殺者の育成組織の在った洞窟前だった。ミリンダが抱えていた袋を開くと、中には子供の玩具や衣類がギッシリと詰まっていた。


「ここでは玩具代わりにナイフとか木で作られた人体模型が置かれていました、どの方向からナイフを刺せば急所に届くか学ばせる目的も兼ねていたみたいです」


「ミリンダ・・・」


「それにボロボロの服をずっと着せられ、汗や浴びた返り血の臭いで眠れない日も有りました」


淡々と自分が育てられた頃の記憶を語るミリンダ、本当は思い出したくも無い過去なのに1つ1つ語る事で過去の自分に別れを告げている様だった。


「ハジメ様、実はこの施設の中にも仲の良い友達が2人居たんですよ!私はミリーと呼ばれていましたが、残りの2人の事はアニーとキャシーって呼んでいました」


突然2人の女の子の名前が出てきた、そして2人の名前を出した途端ミリンダの目に涙が浮かんだ。


「でもある日の事です、突然私達3人は1つの部屋に入れられました。そして暗殺者としての最後の訓練として『情を捨て他の2人を殺せば施設から外に出られる』と告げられたのです」


ミリンダの言おうとしていた事が分かった、彼女はそこで友達2人を殺めたのだろう。もしかするとアニーとキャシーのどちらかが勝者となっていた可能性も有るが今こうして生きているのはミリンダだ、仮定の話を想像するのは彼女が存在する意味を否定しているみたいになってしまう気がした。


「施設を出た私は暗殺者として数え切れないほど多くの人の命を奪いました。女子供だろうと容赦はしません、花束の中に短剣を仕込んで胸を突いたり鋼線を用いて首を落としたりだってしました」


両手を広げながらミリンダはハジメに問いかける。


「私は罪の無い人も殺してきた女です、こんな私が幸せを願ってもいいのですか?ハジメ様の妻の1人になっても良いのですか?」


ハジメはミリンダの背後に回ると後ろから抱きしめながら耳元で呟く。


「俺はお前を受け入れると決めた時から、過去も丸ごと受け止めるつもりでいる。お前が生涯悔いる過去だというなら、俺がその過去を全て喰って消化してやるよ」


「ハジメ様、まるで私の過去がモンスターみたいじゃないですか?」


「ああ、お前を悲しませるモンスターは俺が全て喰らう。何せ俺は怪物喰いだからな、何を喰っても平気な丈夫な胃袋の持ち主だ」


「【首狩狂の暗殺者ミリー】」


「何?」


「私の暗殺者時代の異名です、昨晩宿の主人から他の支部長達からルピナス支部のギルド長辞任申請を承諾する旨の書簡を手渡されました。この異名と一緒に過去の自分もここに残していこうと思います、全て喰らい尽くしてくださいますか?」


返事の代わりに唇を重ねるとハジメはミリンダの服を少しずつ脱がしていく。


「全部食べさせてもらうけど、ここで眠る子供達にとても見せられる光景じゃないな」


「馬鹿」


時に冗談を交えながら2人は太陽が地平線に沈むまで求め合うのだった。

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