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第47話 【ダイナス恐怖の10日間】~7日目午前の部~

ハジメ達がダイナスに戻ってきたのは深夜に近かった、しかし肉体的にも精神的にも疲労がピークに達していた為その日は宿で休息を取る事を優先した。そして翌朝、朝食を済ませるとハジメ達は教会に向かった。


アルラウネが住人に危害を加える意思が無い事を証明する為にラーセッツが連れて行ったのだが神父は快く場所を提供してくれた、悪しき者は居続けるのを嫌がるのでその様子を見る為に彼女もまたここで一晩監視状態に置かれていた。待っていたアルラウネは4人で来る事を予見していたらしく、驚いた様子も無かった。


「お久しぶりです、アルラウネさん。あなたのお陰でハジメは命を失わずに済みました」


『そう?なら良かったわ』


セシリアがアルラウネに礼を言う、彼女がアーシュラの許に行かなければハジメはあの時消し炭となっていただろう。


「彼女は俺の命の恩人なんだ、済まないが解放してもらえないか?」


「一晩念の為監視しておりましたが危害を加える様子も見られませんから大丈夫でしょう、彼女には不都合を掛けてしまい済まなかったと詫びを伝えて下さい」


『待って』


見張りの任に就いていた兵士が立ち去ろうとするとアルラウネが声を掛けて制止させた。


「私に何の御用でしょうか?」


『あなたの大切な人、両親が無理やり別の男性に嫁入りさせようとしているわ。今日中に2人でダイナスを出てルピナスまで駆け落ちすれば、ここに居る人達があなたとその女性を必ず守ってくれる。地位も名誉も捨てる覚悟が有るのならば、今の言葉忘れないでね』


「!?」


驚く兵士、しかし時間が経つにつれて優しい顔から覚悟を決めた男の顔に変わっていった。


「分かりました、何もせずに諦めるのは嫌だったのでその言葉で決心が付きました。私自身の心に従って行動してみます」


『覚悟が出来たのなら、もう1つだけ教えてあげる。男性が家を訪れるのは昼頃よ、両親が玄関で出迎えている隙に裏口から連れ出しなさい』


「ありがとうございます!」


教会から駆け出す兵士の顔に迷いは無かった、きっとハジメ達がルピナスに戻った後に女性と2人で町を訪れる事だろう。


『ごめんなさいね、ちょっと世話を焼きすぎてしまったわ。急いで墓地に行きましょう』


そうだ、墓地には俺達が戻るのを待ちわびている子が居るのだった。ハジメはアルラウネの手を掴むと教会を出た。


『なんで、私の手を握るの?』


「ほら、こうしておけば誰も君を怖がったりしないよ」


ハジメは気にせずに進むが、アルラウネの頬が微かに茶色に変色しているのをセシリア達は見逃さなかった。


(これって、もしかしてもしかするの?)


(流石にモンスターの嫁入りなんて聞いた事有りませんよ?)


(でもハジメさんを助ける為に街に出る決断は中々出来ませんよ?)


後ろから3人の声が聞こえてきたが先頭を行くハジメには会話の中身まではよく聞こえなかった、しかしアルラウネには届いていた様で茶色の頬がこげ茶色に近くなっていた・・・。




『私よ、あの人が戻ってきたから出て来て』


アルラウネが声を掛けると、マミーの女の子が姿を現した。前回と違って、セシリア達が加わっているのに驚いた様子でアルラウネの背中の後ろに隠れてしまっている。


『怖がらなくても大丈夫、あなたの為にこの人達も頑張ってくれたのよ?』


『本当?』


『ええ、本当よ。だから、まず始めに言っておくべき言葉が有るでしょ?』


優しく諭すアルラウネ、女の子は恥ずかしがりながら前に出るとセシリア達に頭を下げた。


『私のために、どうもありがとう』


それを見たセシリアとミリンダが目を輝かせながら、女の子の頭を撫で始めた。ツッコミを入れたくなったがその子はまだマミーだという事を忘れていないか?しかし、すぐにハジメはその輪の中にサリーネが入っていない事に気が付いた。


「どうかしたのか、サリーネ?」


「いえ、その子どこかで見た覚えが・・・」


首を傾げるサリーネの様子が少しだけ気になるハジメだった。


『そろそろ離して貰っても良いかしら?続きはこの子が甦った後で』


「そ、そうね!楽しみは取っておいた方が良いですからね」


「ええ、甦った後にまた楽しませて頂きましょう」


セシリアとミリンダが名残惜しそうに離れると、ハジメは懐から【再生の玉】を取り出した。


「ほら、これが君を甦らせる事が出来る秘宝だ。これを使ってママの許へ帰るんだ」


『うん!』


『待って、1度私にそれを渡してくれない?』


ハジメが女の子に【再生の玉】を手渡そうとすると、横からアルラウネが入ってきた。


「どうするつもりだ?」


『そのままの状態で渡すと、この子に【再生の玉】の力は強力過ぎて魂が戻る前に身体が保たないの。だから、こうするのよ』


アルラウネはそう言うと【再生の玉】に切り込みを入れ4分の1の欠片を作るとそれを女の子に手渡した。


『これで大丈夫、害は無いからそれを飲みなさい。私もすぐにあなたの姉に戻るから』


(姉?今、アルラウネはこの子に姉と言わなかったか!?)


女の子が欠片を飲むのを確認すると、アルラウネも残りの【再生の玉】を飲み込んだ。


『ありがとう、ハジメ。お陰で私もやっとモンスターから人間に戻れるわ、ドリアードには申し訳無いけどやはり私は人間として暮らしたいの』


「なんだって!君も元は人だったのか!?」


『ええ、そうよ。平民との間に生まれた子を残すと汚れた血が混ざると母さん共々無実の罪を着せられ絞首台送りにされた。けれども、私だけアルラウネとしてこの世で生き続ける事となりドリアードとの出会いや私自身の未来が視える様になった事で甦る好機を得たのよ』


「それじゃあ、俺達が喰ったマミースライムの子達も甦らせれたんじゃ!?」


『あの子達も本当は甦らせたかった、でもマミースライムから再生させてもマミーに戻るだけ。それならば、あなた達に食べてもらってあの子達の親に亡くなった事を伝えて欲しかったの』


施設址でハジメ達に食べるように導いたのは、アルラウネだったようだ。


『私もこの子も母親は違うけれど、父親が同じ異母姉妹なの。この子だけ組織に渡されて酷い扱いを受けたから、どうしても一緒に甦らせたくなった。この気持ち、理解出来ない?』


「俺は同じ境遇になった事が無いから分からないが、そんな事をする父親を絶対に許せない。一体、そいつは誰なんだ!?」


女の子とアルラウネの身体が徐々に光り輝き始める、墓地全体が白い光で満ち溢れ全てを白く染め上げる直前にアルラウネが口を開いた。


『国王ジェラール、それが私達姉妹の父の名です』

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