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第46話 【ダイナス恐怖の10日間】~6日目午後の部その3~

「聖なる壁!」


サリーネは咄嗟に自分の中に秘めた力を行使した、見えない壁に弾き返された男の首が紫色の液状に変わり地面に触れると触れた場所からジュージューと音を立てながら白い煙が立ち上った。


「どうやらパープルスライムが変異した奴みたいだが、酸が思った以上に強力になっている様だ。酸を吐く攻撃をされたらひとたまりも無い、一旦距離を置こう」


変異体から距離を置きながら、ハジメは先程得た能力【鑑定眼】を用いてみた。すると、目の前のモンスターの詳細が脳裏に浮かぶ。



人に非ざる者=モンスターに喰われた性根の腐った男の魂が逆にモンスターの自我を奪い変質した異形の怪物。共に喰われた子供の魂もこの世に縛り付けており倒さない限り子供達の魂が安らぐ事は無い。喰われる際に【再生の玉】も取り込まれているので瞬時に炭に変えるだけの力を用いない限り幾度と無く再生される為、倒す事は不可能。



(炭に変える力?)


ハジメは右手に魔力を集めながら全力で攻撃する事を決断する。


「みんな、この広場から出るんだ!これから本気のプラズマボールを奴に放つ、どんな影響が起きるか分からないからサリーネは頭上から岩とかが落ちてきたら聖なる壁でセシリア達を守ってやってくれ」


「分かりました!ハジメさんは大丈夫なのですか!?」


「俺は・・・形態変化で岩の隙間を縫って逃げる事にするよ」


先程撃ち出した男の首が再生され元の状態に戻っている、こいつが洞窟の外に出たらどれだけの被害を周囲に及ぼすのか検討も付かない。瞬時に炭に変える力、そして子供達の魂を救う為の一撃をハジメは放った。


「プラズマボール!」


だがハジメの放った渾身の1発を人に非ざる者は見た目にそぐわない敏捷さで避けてしまった、もう1度放つ為に魔力を右手に集めようとするハジメの隙を突く様に人に非ざる者が突進してきた。


(弾よ、戻ってきてくれ!)


思わずそう念じてしまうハジメ、するとその願いが届いたのか岩壁にぶつかる直前のプラズマの弾が反転して背後から人に非ざる者に襲い掛かった。全身を焼かれ炭と化す人に非ざる者、だが黒い玉は更なる獲物を見つけたかの様にハジメに向け残る黒い稲妻の全てを放った。死神の鎌が迫るのを見ながらハジメの意識はそこで途絶えた。




どれ位の時間が過ぎたのだろうか?ハジメは両耳の痛みで目を覚ました。手を伸ばすと耳から血が流れていたので、どうやら鼓膜が破れたのが原因らしい。血は止まっているので再生でしばらくすれば耳も完全に治るだろう。


しかしハジメの今の力であの稲妻を防げたとは到底思えない、一体何が起きたのだろう?その答えはハジメの前で立っていた。


「全く、婿殿には本当に参るわね。この私の左腕を完全に炭化させるなんて、ウチのパパでも出来ない芸当なのよ」


「アーシュラさん!?」


ハジメを黒い稲妻から守ってくれたのは、ダイナスを守っている筈のアーシュラだった。だが何でここに彼女が居るのかさっぱり分からない、ハジメは混乱しそうになった。


「実はあなた達が出立して少し経ってから私とラーセッツの前にアルラウネが現れたのよ、『このままだとハジメが死んでしまうから助けてあげて』と言ってきた。今、彼女の身はラーセッツが保護しているわ。モンスターが昼間からダイナスの街中を徘徊したものだから大騒ぎよ。それでも彼女は命がけであなたを救おうとした、だから私がここに居るの」


プスプスと音を立てながら焼け焦げた臭いを放つ左腕を隠そうともせずに、アーシュラさんはここに来た事情を説明してくれた。様子を見に来たセシリア達もアーシュラの腕を見て絶句する。


「ごめん、俺の所為でアーシュラさんは片腕を・・・」


「ああ、これ位気にしないで良いわよ。こうすれば済む話だし」


悲痛な顔で謝罪するハジメを見たアーシュラさんは平然と話しながら右手で左腕を肩から切り落としてしまった!


「アーシュラさん!?」


「まあ、見ていなさいって♪」


次いで息を思い切り吸い込みながらアーシュラが気合を入れると肩の切り口から新しい左腕が生えてきたのだった!!


「ねっ!気にする必要なんて無いでしょ?」


(あなたは本当に昔、人間だったのですか!?)


ハジメはアーシュラが魔王を未だに半殺しに出来る理由の一端を見た気がした・・・。




パラパラパラ、炭と化した人に非ざる者の表面が崩れ始めた。そして身体を支えていた脚にヒビが入ると地面に倒れ粉々に砕け散った。


「ハジメ、見てあそこ!」


セシリアが指差した先では白く半透明に透き通った子供達の魂がそこに居た、8人の子供達がそれぞれお辞儀をすると一斉に天に向かって飛び立っていった。


「よくやったわね婿殿、あの子達の魂を救ってあげる事が出来たのは間違い無くあなたのお陰よ」


柔和な笑みで労をねぎらうアーシュラ、だが救う価値の無い者もまたしぶとく残っていた。黒い小さなロウソクの炎の様に揺らいでいる首領の魂、アーシュラはそれに近付くと右足を上げながら侮蔑の言葉を吐き捨てた。


「あなたには地獄に落ちる必要すら感じない、このまま無となり永劫の闇の中でその罪を償いなさい」


上げた右足で魂を踏みつけると、左右に動かして魂の痕跡を消す。ミリンダを暗殺者にした組織はこれで完全に壊滅したのだった。


「ねえ、ミリンダ。あなたの暗殺者の頃の肩書きを婿殿に教えてあげたらどう?そしてその肩書きをこの場に捨てて新しい人生を歩み始めるのはどうかしら」


アーシュラの提案にミリンダは首を振った。


「ハジメ様に教えるのはギルド長の辞任申請が通った時にします、それまではルピナス支部のギルド長であり元暗殺者のミリンダのままでいます」


ミリンダなりのケジメなのかもしれない、それ以上言う事をアーシュラはしなかった。そしてハジメは人に非ざる者の炭の残骸の中から光り輝く【再生の玉】を回収すると洞窟を後にした。

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