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第34話 【ダイナス恐怖の10日間】~3日目午前の部その1~

「・・・・・そんな訳でお前の馬鹿息子が女性達に婦女暴行を働こうとしていたから、糸で縛り上げて罰として一晩塔から吊るしておいたから」


「なんというかその、罪を犯す前に取り押さえてくれて事には感謝するが未だに解放されていないのは何故だ?」


「だってコイツ、サリーネに対してやった事をちっとも反省していないからだよ。両親を幽閉してまで妾にしようだなんて正気じゃないぞ」


「ムグゥ!ムゴォ!ングエェ!!」


ハジメの足元でジェラルドが糸を解こうと足掻くが、足掻けば足掻くほど糸が絡まり動きを封じていく。


「それからミリンダの調べで馬鹿息子なんだけど、人としてやっちゃいけない事をしていたのが分かったんだ」


前に出てきたミリンダが書状を王ジェラールに手渡した。


「私は冒険者ギルドルピナス支部ギルド長を務めておりましたミリンダと申します。本来はギルド本部を通じてご判断を仰ぐ予定でしたが、このタイミングで渡す事となったのが残念でなりません」


そうして手渡された書状を見たジェラールの顔がどんどん青褪めていった・・・。


「こ、これに書かれている事は本当なのか!?」


「ええ、残念ですが事実です」


ミリンダが顔を逸らす、書状の中身にはジェラルドの人間性を疑う所業の数々が記されていた。




「ルピナスにおいてベルンウッドという商人がグエンバルム伯爵と結託し捕らえた女性を売買していた事件が発覚し、当時捕らえられていた女性の中にセレスティーナ公女が居た事はご存知の筈です」


「ああ、そうだったな」


「その後の調べでグエンバルムが開いていた女性の闇市で最も多く買われていた人物がジェラルド殿下だった事が判明しました」


ジェラルドの目が大きく見開く、代理人を何人も経由させて足取りを掴めない様にしていた筈なのに気付かれていたからだ。


「殿下に買われた女性達は王家が秘密にしている地下通路を使って王城まで運ばれそこで人間以下の扱いを受けていた様です、食事や着る物を満足に与えられず飢えに耐えかねて殿下に恭順した者達から順に味を確かめられていたのですよね?味の本当の意味は説明しなくてもお分かりかと存じますが」


ジェラルドは力無く項垂れた、ここまで調べられている事はその後の女性達の扱いも把握されているのは明白だった。


「しかし殿下は味見された女性達を解放する事は有りませんでした、事が露見するのを恐れあろう事か殿下は人間と猛獣を戦わせるショーと称して彼女達の存在を闇に葬り去りました。武器を与えられず猛獣の前に立たされた彼女達の心境を思うと哀れでなりません、また彼女達の中には殿下の子を宿していた者も居たそうです」


ハジメはすぐにでも足元で転がっている男の首にナイフを突き立てたい衝動に駆られた、だがハジメは裁く側にまだ立っていない。許しも無くそんな事をすればセシリアやラン達まで巻き込んでしまうと自省したが、すぐにそんな時は魔界に逃げ込めば済む話だと気付くと衝動を抑える必要が無い事に安堵すらしていた。


「ところで陛下、陛下にも1つお尋ねしたい事が有るのですが?」


ミリンダの矛先が今度は王ジェラールに向いた。


「捕らえて護送された筈のグエンバルムとベルンウッドですが、ルピナスに届けられた報告書では即決裁判の後に重罪人として処刑されたと書かれておりましたが実際は王都に到着する前に既に死んでいたのは何故ですか?」


「な、何を急に根も葉もない話を作るのだね君は。彼らは重大な罪を犯した者として王都で処刑され墓地に埋葬された、そんな話が出る事自体でっち上げにすぎない。大体、何を証拠にしているのかね?」


あ、『何を証拠に』って自分が犯人なのを誤魔化そうとしている人のお決まりのセリフだ。国王、フラグを1つ立てちゃった・・・。


「証拠をご覧に入れても良いのですが・・・・30分ほど待っていてもらってもいいですか?墓地の木に縛り付けておいたので逃げ出してないとは思いますが何分臭うので」


臭う?臭うって何が?その疑問は30分後にミリンダが連れてきた者達で分かった。


「なるほど、確かにそれは生きた証拠・・・・いや、死んだ証拠になるな」


始が納得する中、ハジメの方は呆れていた。


「それ、どこで見つけてきたの?道端で変なの拾っちゃダメだって親から教わらなかった?」


「ダイナスの墓地です、ほら以前ハジメ様がブラッディマミーを食べて【体脂肪燃焼・肥満防止】の能力が付いたのを耳にしたので太らない内に私も身に着けておきたいと考えまして・・・」


ミリンダの言葉を聞いて何故かセシリアとセレスの目が光った、そういえば2人も食い放題で隠れながら結構食べていた気がする。主にミノタウロスの方を・・・。


「とりあえず、この者達が動かぬというか動く証拠です!申し開きが有ればこの2体の前で言ってください」


「ヒ、ヒィ!!」


ジェラールは涙目になっている、それもその筈ミリンダが連れてきたのは途中で口封じで殺され無念で何故かブラッディマミーと化したグエンバルムとベルンウッドだった。




「ねえ、あなた達。この間も言ったけど楽になりたければ、起きた事を正直に話してちょうだい」


ミリンダが話しかけるとグエンバルムマミーが口を開いた。


『アノヒ、ルピナスヲデタチョクゴに・・・ムネヲツカレ、コロサレタ。ソノゴ、カラダヲコオラサレテ、ダイナスニハコビコマレタ』


次に口を開いたのはベルンウッドマミーだ。


『デンカハオオクノオンナヲカッテコロシタ、ナノニワレラダケシヌノハ・・・・ナットク・・・イカナイ』


ジェラルドに襲い掛かろうとする2人、しかしミリンダに縛られているので襲う事は出来なかった。諦めた2人は最後の望みをミリンダに言った。


『『イウコトハイッタ、ハヤクラクニシテクレ』』


「それじゃあ、ハジメ様。燃やして楽にしてあげましょう」


「「お待ちなさい!!」」


ミリンダがハジメに焼却処分を頼もうとするとそこに割って入った者達が居た、セシリアとセレスだ。


「燃やしてしまうだなんて勿体無い!燃やすのでしたら、私達にください!」


「そうです、目の前の食材を食べずに破棄されるのは怪物料理人モンスターコックの名折れです」


「いや、あれを喰うのは流石にマズいだろセレス・・・」


「俺も同意見だ、あれは食材と呼んじゃいけない部類だろ?」


「「2人は私達が太っても構わないと言いたいのですか!?」」


2人の鬼気迫る勢いにハジメと始は思わず後ずさりしてしまった。勝利を確信した2人は国王と皇太子、更にはシスティナイト伯爵夫婦とサリーネの目の前で用済みになったマミーを堂々と食べ始めたのだった。




「「いただきま~す」」


「私はこっちのグエンバルムを頂きますね」


「では、私はこちらのベルンウッドを」


おいおいセシリア、仕方なかったとはいえお前を昔囲っていた男を喰う事に何の躊躇もしないのかい!?


「これは!結構辛いですね」


「ですが、クセになる味です。しかも身体の中がポカポカしてきます」


ああ、ポカポカするのはキムチの中にある唐辛子のカプサイシン効果だねってそんな訳有るかい!?しかし元愛人に喰われながら満足そうな顔をしているベルンウッドを見ているとハジメは何だか複雑な心境になった。


「「やりましたよハジメ(始様)!【体脂肪燃焼・肥満防止】の能力が身に付きました♪」」


「「そ、そうか。それは良かった」」


「「はい♪」」


念願の能力を手に入れて喜ぶセシリアとセレスに対して、乾いた笑いで応じるハジメと始。周囲に居た者達は2人が恋人の尻に敷かれる瞬間を目の当たりにしたのだった・・・。

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