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第29話 【ダイナス恐怖の10日間】~初日午後の部その3~

「おい!父上の周辺が何やら騒がしいみたいだが何が起きているのだ?」


ハジメ達との交渉に向かう準備を慌しく始めている父王ジェラールとその側近達の動きを不審に思った皇太子ジェラルドは部下を問い質した。


「・・・・では、父上は王都を襲おうとしているモンスターの集団に対してどこの馬の骨とも知れぬ連中に頭を下げに行くつもりなのか?そんなものはギルドの連中に命令を下し全て任せておけば良いのだ、何を慌てる必要が有る」


報告の中にはギルドの崩壊と冒険者の全滅も入っているのだが、自分に都合の悪い情報だけは綺麗に聞き逃す天性の才能をジェラルドは持っていた。


(こ、このど阿呆が!ギルドは既に崩壊し冒険者達も居ないと散々言っているだろうが!?だからセレスティーナ公女の命を簡単に奪おうとするし、恥知らずにも再度の求婚を行い即座に断られるんだ)


皇太子付けの側近に命じられた当初は出世街道まっしぐらと大喜びしたが、今は早く誰か後任と変わって欲しいと切に願っている。それほど、この国の皇太子であるジェラルドは父王譲りというか更に輪を掛けた自己顕示欲と虚栄心の塊であり、自分の存在こそが最も尊いと勘違いし意に反した者を容赦無く不敬罪の罪をなすりつけ処断してきた。


ジェラールはそんな息子を叱るべき筈なのに叱るどころかそれを正当化させてしまう始末、その為この親子の国民からの支持は限り無く低いのが実情である。


「そういえば・・・さっきの報告の中にセレスティーナの名前が有った気がしたのだが?」


ジェラルドの側近は嫌な予感がした、得たいの知れない自分の命の危険性すら有る命令を出されそうな気がしたのだ。


「今すぐ私直属の近衛騎士団を招集しろ!馬の骨共がモンスター達を倒し疲弊している所を背後から襲い、この国を救ったのは私だという事にするのだ。セレスティーナの奴も頭の弱い馬の骨よりも私の豊かな才幹を目の当たりにすれば、己の間違いを詫びて今度こそ私の后となってくれるだろう」


(この国は終わった・・・)


言われた通り近衛騎士団の団長を呼び出すと、側近はすぐに家に帰り妻子を田舎の親類の許に逃がした。そしてハジメとの交渉に向かう国王の馬車の後を気付かれない様に追うと、ハジメに直接助命を願い出る事を決めた・・・。




「この度は私自身の浅はかさの所為で、王都に未曾有の危機が訪れようとしております。私はこの罪を認め、騒ぎが落ち着き次第王位を息子に譲り国を正しい姿に戻そうと思います」


「なあ、それはお前の息子でも大丈夫なのか?あいつはセレスを処刑しようとしたんだぞ」


「身贔屓に聞こえるかも知れませんが、息子は私よりも遥かに優秀です。愚かな真似は決して致しません!」


この時点で既に皇太子は最悪な命令を出しているのだが、そんな事をジェラールが知る由も無い。


「とりあえず、そのダイナスに迫っているモンスターの集団はオークやゴブリンばかりなんだな?」


「はい、ただ未確認ですがミノタウロスの姿も有ったとの報告が」


「オークやミノタウロスはまだ食べた事無いから味は分からないけど、ゴブリンの腕や足は手羽先風味だから飯代を浮かすには丁度良いか。明日の昼飯はモンスター食べ放題にするか?」


「俺とセレスは普通の飯を用意していくからな、食べるのはお前らだけにしてくれよ」


国の一大事の筈なのにモンスターを喰うだの喰わないだのの会話をしているハジメ達を見て、ジェラールは己が絶対に手出しすべきじゃない相手に喧嘩を売っていた事にようやく気が付いた。しかしそれまでに支払った代償はとてつもなく大きい・・・。


「俺達はダイナスに9泊する予定でいる、9日も有れば残敵を探して喰い切るだけの時間も有る筈だから安心して良いよ。だけど、俺達がモンスターを倒すのはあくまで王都に住む住人の為であってアンタの為じゃない事は先に言っておくよ」


「分かりました、あと何か必要な事や望む事が有れば遠慮無く言ってくだされ」


下手に出てきた国王に罰を与える意味を含めて、ハジメはアーシュラさん寄りの極悪な望みを伝えた。


「そうだ、大事な事を言うの忘れてた。実は俺って始の前に女神システィナに人違いでこちらの世界に呼ばれたんだよね。つまり俺も佐藤 始なんだ、だから今回俺が破壊したギルド本部やら何やらの賠償は全て国で何とかしてね。佐藤 始と結んだ契約なんだからさ」


(鬼だコイツ)


始はハジメの出した望みに呆れ果てた、勇者としての佐藤 始と結んだ筈の誓約を同姓同名だからって自分も有効にしろと屁理屈を押し通そうとしているのだ。


「承知しました、私の愚かさが招いた罰です王家で責任を持って償っていきましょう」


ハジメの意図に気付けた分は最低の王のレッテルを貼られずに済んだかもしれない、ジェラールは何度もハジメ達に頭を下げながら宿を後にした。




「さてと、とりあえず倒すのはそんなに難しい話じゃないと思うんだ。ここに居るメンバーを見る限り」


「何が言いたいんだ?」


「婿殿は私達にちょっかい出す気を無くさせたいのであろう?国王が少しまともになった程度でこの国が正しく機能するとは思うておらんという事よ」


「その通り、セレスの処刑を止める素振りを見せない連中ばかりだからね。国王以上の膿が巣食っていてもおかしくないと思うんだ」


コンコンコンコン!突然外からドアをノックされた。


「誰だ!」


「夜分恐れ入ります、私は皇太子ジェラルド殿下付きの側近をしておりますナリウスと申します。至急お耳に入れておくべき事がございますのでこうして失礼を承知で来た次第です」


「鍵は掛けてないから中に入ってきてよ、国王とは別の用件みたいだしとりあえず話しだけでも聞くからさ」


部屋に入ってきたナリウスの口から、ジェラルドが近衛騎士団を呼び出してハジメ達の背後を襲わせようとしている事を知るとこの場に居る誰もが呆れて物が言えなかった。


「どこが国王よりも優秀なんだ?国王を上回る馬鹿さ加減じゃないか!?」


「おっしゃるとおりで。私もいい加減愛想が尽きたので命を助けて頂けるのでしたら、このまま妻子を逃がした田舎へ向かおうと考えております」


「その方が良いよ、でもそうなると背後を襲うのを一瞬躊躇させるだけの何かをしていないとならなそうだな」


「精鋭の騎士達を怯ませる方法って何か有るのかハジメ?」


「まだ思い浮かばないんだけど、一応始もセレスを一緒に連れて行った方が良さそうだな。宿に置いておくとジェラルドの部下が攫いに来るかもしれないから」


「そうするよ、しかし直接求婚を拒否されているのに懲りないなんてこの国の皇太子は一体全体どんな頭をしているんだ?」


始の率直な疑問にセレスが簡潔に答えてくれた。


「どうしようもないアホです」


「・・・・・」


公女としての立ち居振る舞いを身に着け人を中傷する言葉も滅多に言わないセレスが即座にアホと評する皇太子ジェラルド、この国の未来はどうやら明るくなさそうだ。


「まずは明日皆でモンスターを倒す事を第一に考えよう、騎士団の動きも気になるけど今の俺達は運命共同体だからまとまって行動しよう」


「そうだな・・・・って何だこれ?急に頭の中に何かが入り込んできた」


「私もよ始、何か変な物が入ってきてる」


見るとミリンダも同じ様な反応をしているので、ハジメは話していた会話の中でうっかり能力を使っていた事に気が付いた。


「もしかしたら俺が【運命共同体】って言ったのが原因で皆に何か能力が与えられたのかもしれない」


「何?セレス、自分のステータスを今すぐ確認するんだ」


「あ、はい分かりました」


そして数分後、始・セレス・ミリンダの3人も【丈夫な胃袋】を得ていた事が判明した。またサブ職業もそれぞれ変わった名前で手に入れていたがそれは後日明かそうと思う。




「まあ、こんな形になってしまったけど始やセレスも無事にモンスターを喰える様になったみたいだし明日は皆でモンスター喰い放題を開催しよう」


「ハジメ、味付けや調理は私に任せてください!」


「セシリア、随分と乗り気だね?」


「ええ!オークやミノタウロスがどんな味か早く知りたいんです♪」


仕舞には鼻歌まで口ずさみ始めたセシリアを見て開いた口が塞がらなくなったナリウスを帰すと、ハジメ達は再度始・セレス夫婦を加えた部屋割りを決め直すと各部屋に別れて就寝した。



こうして、【ダイナス恐怖の10日】の初日を無事に終えた。




初日の被害(始がアーシュラから与えられた精神的ダメージ等は除外する) 


  建物関係 城壁の一部・ギルド本部(全壊の上焼失)

            

  人的被害 正規兵並びに冒険者等死傷者多数

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