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第27話 【ダイナス恐怖の10日間】~初日午後の部その1~

「きゃああああああああ!!」


人通りの少ない路地裏で若い女性の悲鳴が轟いた、何故ならそこには10人以上のごろつきが横たわっており全員の首が胴から離れている為だ。


「全く!ごろつきの変装程度で我々の命を奪えると思われるなんて舐められたもんだわ」


ミリンダが頬を膨らませながら先頭を歩いている、ハジメをギルド本部に案内する為だがごろつきに変装した刺客を全て返り討ちにしたのも彼女である・・・。


「あいつらって、もしかしてアーシュラさんが城壁を壊した事に対する報復で送られてきたの?」


「そう考えるのが妥当ですね、アーシュラ様の名は1世紀以上ま・・・


コキッ♪


なんだか軽い音と共にミリンダの首がありえない方向に曲がっていた、曲げたのはもちろんアーシュラさん。


「次、変な事を言ったらお仕置きよ」


どさっ! 口から泡を吹きながら倒れ痙攣するミリンダ、アーシュラさんは死ぬ一歩手前に追い込んだミリンダに何食わぬ顔で回復魔法を掛けた。


「ごめんなさいね、年頃の清純な乙女は年齢に関する話題を口にされるのが嫌いだから思わず手が出ちゃったわ」


(乙女?LBBAの間違いでは?)


ハジメの脳裏にこんな考えが浮かんだ次の瞬間、視界が暗転した・・・。それから5分後




「婿殿?街中で貧血を起こして倒れてしまうなんて、あなたらしくないわね。余計な事を考えると貧血を起こしやすくなるから注意しましょうね」


「・・・・はい、肝に銘じておきます」


心配そうな目でハジメを見るアーシュラさんだが、両手からはポキポキと指の関節が鳴る音が微かに聞こえてくる。セシリアとランの顔面は蒼白で何が原因で気を失っていたのか考えるまでも無かった。


「セシリアさんとランも婿殿みたいな事になりたくなければ、貧血には気を付けましょうねオホホ♪」


何度も勢い良く首を振るセシリアとラン、ミリンダとハジメを瞬時にいたぶる強さはやはり非常識だ。


「ミリンダさん、ギルドの本部へは本当にこの道で良いのかしら?また周囲から殺気が漂い始めているけど・・・」


「道は合っています、ただ先程の刺客と違って殺気を隠そうともしていませんから今度は正規兵でも送ってきたのでしょう。停戦交渉の話などが民に伝わっていない事を考えると国王や皇太子達は片が付いた後で功績を全て自分達の物にしようとしているのかもしれません」


短い時間で王から刺客が送られてきた意図を分析するミリンダ、ハジメのお仕置きの虜になって以降ややポンコツ気味になっていたが元々頭の回転も速く大の為に小を平気で切り捨てる事も出来る冷徹さも兼ね備えた女性なのだ。


「一旦大通りに戻りましょう、そうすれば下手な真似はしてこないと思います」


ミリンダの案内で大通りに出ると、純白の重甲冑で身を包んだ20人ほどの兵士と騎馬にまたがった1人の騎士が待ち構えていた。




「待っていたぞ凶悪犯ども!我らは国王ジェラール陛下からの勅命を受けてきた部隊である、王都の秩序と法に混乱を招いた責任を今この場で取らせる。皆の者!生死は問わぬ、陛下の剣としての役目を存分に果たすのだ」


(死人に口無しかよ!?)


一斉に剣を抜き徐々に近付いて来る兵士達、こちらからの言葉に耳を傾けるつもりは全く無い。かといって大人しく斬られるハジメ達では無いし、アーシュラさんに喧嘩を売った時点で何時この王都が灰塵と化すか分かったものじゃない。


「このまま殺されるのも嫌だし、折角だから前にティターニアから得た能力を試してみても良いかな?」


「えっ!?じゃあ、こいつらだけで止めておきます」


ミリンダが手を引くと右端に居た4人の兵士の首が少しずつずれて地面に落ちた・・・。さっきまで隣に居た戦友の首が落ちたのを見て兵士達の間に動揺が広がる、ハジメはその隙を突く様に呆然としている左側の兵士に右手を向けると使おうとする能力の名を口にした。


「プラズマボール」


右手の前に電流を纏った黒い玉が現れた、威力もそんなに高くなさそうだったのでハジメは軽い気持ちで投げつける。


「えいっ!」


ゆっくりと飛んでいった玉が兵士達の5mほど手前で破裂した瞬間、黒い稲妻が襲い掛かり10人の兵士が炭と化して地面に倒れながらバラバラに砕け散った。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


予想外の威力にハジメも兵士達も言葉を失った、少しばかり痛い目を見させて引いてもらうつもりだったが多分もう無理だろう。


「念の為提案だけどさ、出来ればここで引いてくれないかな?炭にしちゃった方々には申し訳無いんだけどそこまでするつもり無かったんだ俺」


返事の代わりに騎馬で突進してくる騎士、どちらかが命を失わない限り残る兵士達に退却する選択肢を選ばせる事が出来ないと直感で感じたのだろう。ハジメは兵士達が後に続く事が無い様に心を折る事を選択する。


「フレイムキャノン」


撃ち出された炎の弾が騎士と馬を木っ端微塵にする、それだけで終わらず周囲に散らばった欠片が燃え出して騎士が存在していた痕跡を全て焼き尽くし灰に変えた。


「う、うわああああああ!!」


残された6人の兵士はその場に剣と盾を放り投げると一斉に逃げ出した、隊長の騎士を含め15人をあっさり殺すハジメ達の姿はきっと化け物に見えただろう。


「この場所に留まると更に騒ぎが大きくなります、急いで本部に入りましょう!」


急かす様に本部に向かおうとしたミリンダの手をアーシュラさんが掴んだ。


「ミリンダさん、急いでも無駄よ。どうやら婿殿を本部所属にすると王都に呼び出したのは私達を消すのが本当の目的だったみたいよ」


アーシュラが指差した先には本部から続々と出てくる冒険者達の姿が有った。




「ルピナス支部ギルド長ミリンダ、とんでもない事を仕出かしてくれたものだ。これでは冒険者ギルドが裏で協力していない事を王に証明する為にそこに居る全員を始末するしかないではないか?冒険者ハジメ・サトウ共々その首貰い受ける」


「ほらね、さっきの兵士達はどうやら当て馬にされたみたいね可哀相に。しかし、ここまでコケにされたんじゃ王城を全壊させるだけでは反省しそうもないわねこの国の国王達は・・・」


アーシュラさんが抑えていた力を解放しようとすると周囲の空気が振動し近くの家の窓にヒビが入った。ハジメは慌ててアーシュラを止めに入る。


「アーシュラさん!これ以上暴れたら折角ルピナスの住人と魔族の間で停戦交渉を進めてきたのに一方的に破棄されて無駄になってしまいます。何とか王城に居る国王達を交渉のテーブルに座らせましょう」


ハジメの言葉を聞いてアーシュラは再び力を抑えた。


「そうね、今の私は魔王の妻だから暴れたら魔族側の侵略行為と同じ意味を持ってしまうのね。ならば、人族側の代表者を召喚しちゃいましょう」


「はい!?」


アーシュラはいきなり左手を天高く掲げると大声で叫んだ。


「我が名は元勇者アーシュラ!この世界を治める神システィナよ、汝が召喚せし次代の勇者とその伴侶を我が相応の魔力と引き換えにこの場に転移させよ。勇者の名誉と誇りに傷を付けようとする者達に神の裁きを与えん!」


空が急に黒くなると天から一筋の雷がアーシュラの左手に落ちてきた!そしてその雷が光の玉に徐々に変わるとアーシュラは徐にその玉を地面に置いた。


ポンッ!


玉が破裂し白い煙が周囲に広がった、そして煙が薄れていくとハジメ達と冒険者達の間に現勇者である佐藤 始とその妻であるセレスの姿が現れたのだが・・・


「あれ、ここは一体・・・?」


「あら、ごめんなさい。まさか昼間からお楽しみだとは思わなくて、そちらの状況を確認するのをウッカリ忘れていたわ」


「あ、ああ、あああ・・・・!?」


周囲を見て目から涙が溢れ出すセレス、始と愛し合っている最中に召喚されてしまい2人共全裸の状態だったのだ!


「い、いやあああああああああああああああああああああああああ!!!!」


セレスの絶叫が街中に轟く、アーシュラさんのお陰(?)で勇者始とセレスがハジメ側の味方として加わった。服も装備も無い素っ裸姿のままで・・・。

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