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第17話 修羅場勃発!?

ドンドンドンドン・・・・!


玄関を叩く音でハジメは目を覚ました。


「・・・ん、どうしたのハジメ?」


「誰かが家に来たみたいだ、俺が出るからセシリアはそのまま寝ていて良いよ」


セシリアの額にキスをすると、ハジメは寝室を出て普段着に着替えた。


ドンドンドンドン・・・・!


「はいは~い!今、出ますよ」


(この叩き方は始じゃないな、一体誰だろう?)




ハジメとセシリアが恋人同士になって、始とセレスティーナは近くの宿で泊まる様になった。やはり健康的な男女2組が同じ屋根の下で暮らすのは無理だと判断したからだが、始達にはギルドを通じて近日中に王家から家が下賜される運びとなっている。公女セレスティーナが冤罪である事を知った皇太子の代理人から謝罪と改めて結婚の申し込みが書かれた手紙を手渡されたセレスティーナだが


「10歳前後の子供を刺客として送られても許してくれる女性こそ皇太子様には最も相応しいかと存じます、私にはそこまでの真似は出来ませんので申し訳有りませんが辞退させて頂きます」


今度は本人の口から申し込みを拒否してみせた、更に子供を刺客として送ってきた事にも触れておき不敬罪に問おうとすればこの件を公表すると皇太子達を逆に脅したのだ。その口止め料として家が下賜されるのである。


「そもそも私は間もなく家を離れ公女では無くなるのですから后に迎えるメリットは何1つ有りません」


そう、セレスティーナは実家である公爵家さえも捨てて始と共に生きる決意を固めていた。現在彼女はセシリアから少しずつ家事を教わり花嫁修業を邁進中である。


ドンドンドンドン・・・・!


相変わらず何度も玄関を叩き続ける来訪者、ちょっと非常識すぎる。ハジメは少しだけ不機嫌になりながら玄関の扉を開けた・・・。


「ハジメ様、会いに来たぞ~!!」


「うわっ!?」


開けた瞬間、何者かに抱き着かれハジメは倒れ込んでしまった。後頭部を打ってしまい、眩暈を覚えたが抱き着いてきた相手が誰かを知るとハジメは仰天した。


「ラ、ラン!何故ここに!?」


「もちろん、ハジメ様に会いに来たに決まっておろう。ミリンダに聞いてみたら、すぐにこの場所を教えてくれたぞ」


そう言うとランは胸元から1通の手紙をハジメに手渡す、そこにはミリンダからの伝言が短く書かれていた。


『ごめん、後は任せた』


(ミ、ミリンダ~!?)


ハジメはミリンダにいずれお仕置きをしてやると決意を更に固めた。だが、それよりも先に恐れていた事態が発生する。


「ハジメ、随分と騒々しいですが始さんとセレスさんでも来たのですか?」


セシリアがシーツのみを羽織った姿で階段を降りてきた、始達とはお互いの行為の内容さえ知られてしまっているので多少の事では動じなくなっているが今回の様に始達以外の客だった場合を忘れているみたいなので後でそれとなく注意しておこう・・・。


「ハジメ様、この女はお主の何なのだ?」


ランの視線がセシリアに向いた。


「ハジメ・・・もしかして、この方があなたの言っていたランという魔王の娘さんですか?」


「ハジメ様を呼び捨てにするとは、良い度胸だのう?」


「私の名はセシリア・ドゥーチェ、ハジメの恋人であり既にプロポーズも受けております。昨夜もお互いの愛を確かめ合った後、彼の腕の中で眠っておりました」


次々とランに対し攻撃を仕掛けるセシリア、相手が魔王の娘だという事を無視し同じ男を狙うライバルだと認識した様だ。


「・・・・ハジメ様、この女の言っておる事は本当か?」


「ああ、そうだ。俺は時期を選んでセシリアを妻に迎える、だから・・・」


「なら、一緒に結婚式を挙げてしまえばいい。セシリアとやらが正室で私が側室でも別に構わん」


ランが事も無げに話すので、セシリアはすっかり毒気を抜かれてしまった。




「いやいやいや!ランさんでしたっけ?結婚は愛し合う男女のペアでないと出来ないのですよ」


「ペアで無ければならぬと何時誰が決めた?女神システィナとやらが決めたこの世界の法でも有るまい?英雄色を好むと言うではないか、ハジメ様は私達2人を同時に愛せない様な器量の狭い方では無い。だから何も心配せずに抱かれておれば良いのだ」


「なっ!?」


セシリアは絶句した。


「家の中の事はお主に任せる、家事も含めハジメ様の居ない間の家を守れるのはお主だけだからのう。だが家の外の事は私に任せて欲しい、ハジメ様に危害を加えようとする者は絶対に通さないと約束しよう」


「ハジメを独り占めしたいとは思わないのですか?」


「確かに私にだって独占したい気持ちが少なからず有る、だが私はそなたの様に共に暮らし愛を育んできた訳では無い。後から割り込んできた者が前に居る者を押し退ける事など出来ぬよ」


「・・・・・」


「私は末席でも良いからハジメ様の愛の一欠片を受けたいだけなのだ、この気持ち分かってもらえるか?」


セシリアは弱々しく頷いた、だがランはこれまでの空気を台無しにする言葉を口にした。


「安心せい、ハジメ様は己の愚息を何本にでも増やせるではないか。我ら2人と言わず4人でも8人でも同時に相手する事だって出来るわ」


セシリアは拳を握り締め、こめかみに青筋まで浮き出てきた。


「私はそこまで寛容じゃありません!あなた1人までなら許しますが、それ以上は絶対に認めません!!」


怒ったセシリアは階段を登り着替えに戻った、そしてランの方はというとハジメに向かいピースしている。どうやらわざとセシリアを怒らせたらしい。


「ラン、お前セシリアをわざと怒らせただろ?」


「気付いていたかハジメ様、ミリンダから一応彼女の事は多少なりとも聞いた。母親の治療費を稼ぐ為とはいえ、あの娘はハジメ様にも言えぬ暗い過去を背負っておる。それを思い出す暇すら与えない様にお前様はあの娘に愛情を注いでやらねばならぬな」


「ああ、そのつもりだ」


「その時のついでに私にも愛を注いでくれると有り難いのだがな」


「俺は2人を同時に相手にする程、色ボケしていない!?」


だが結局ハジメやセシリアも徐々にランに感化されていき、住んでいる家が近所の人達から【色ボケ館その1】と呼ばれる様になるとは知る由も無かった。ちなみに【色ボケ館その2】と呼ばれるのは始・セレスティーナ夫婦の家である。




「それで?俺に会いに来た理由を教えてくれないかラン」


「私はただハジメ様の普段の生活を見てみたかっただけだ、冒険者としてのお前様のな」


「冒険者の俺の生活?」


「ああ、ハジメ様が普段どこへ行くのかどんな装備をしていくのか見ておきたいのだ。私がすべきは足りない部分が有ればそれを補う事、1人では無理でも2人でなら出来る事も有るからな。子作りもそうだが」


(どうしてこいつは余計な一言を言いたがるのだろうか?)


でも確かにランの言いたい事は分かる、以前始と2人で出掛けた際は話し相手が居る事で獲物が見つからなくて焦る気持ちを抑える事が出来た。何か違う狩りの方法も見つけられるかもしれない。


「会議やら何やらで最近ルピナス周辺のスライムの数を減らしていなかったらブラウンスライムの数が少し増えているらしい、今日はそいつらを狙うとするか」


「ほほ~スライムの中では好戦的な奴だな、面白いぜひ見せてくれ」


「魔界にもスライムが居るんだ?」


「当たり前じゃ、空間の歪みを通って魔界からこちらの世界に渡ってきたのが繁殖して増えたのだ。モンスターの生息数は魔界の方が遥かに多い筈だぞ?だが・・・」


「だが?」


ランが言おうか言うまいか迷っているみたいだったが、覚悟を決めてハジメに話してくれた。


「前回の歪みの際に私と一緒に大量のモンスター達もこちらの世界に渡ってきている、自ら来たというよりもお母様が怖くて逃げてきたって表現が正しいのかもしれない」


動物的な本能でモンスター達が危険を察知して別の世界に逃げ込むだなんて前の勇者のアーシュラって人は一体どんな化け物なんだ!?ハジメはそう考えながら、名前が阿修羅に似ているのに気付いて何故か納得するのだった。

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