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第16話 第1回人族魔族合同会議(2回目以降も有るのかよ!?)

「え~この度は、我らの姫がとんだ騒ぎを起こしてしまいまして大変すいませんでした」


「そんな!私の一世一代の大勝負をそんな言い方しなくても。それに父上の度肝を抜かせる事が出来たじゃないですか?」


「確かに度肝を抜かせましたよ、大勢の魔族を前に突如停戦を持ちかけた挙句に姫の方から脅迫にも近いプロポーズをしたのですからね・・・。報告を聞いた瞬間、口から泡を吹いて倒れたのですよ!?」


(うわぁ、魔界もこっちと同じで今頃大騒ぎしているんだろうな・・・)


魔王の娘ランとお目付け役の会話を聞いていて、ハジメ達はげんなりしていた。ルピナスの町を突如包囲した魔族の軍勢、それを指揮していた魔王の娘ランの目的が実はハジメへの求婚だったのだと知れた時人族・魔族双方に衝撃が走った。現在は一応の停戦状態に入っており、魔族側から停戦破棄しない事を条件に【大型転移陣ビッグゲート】の建設続行が許可されたので工事は以前よりも順調に進んでいると言っても良いかもしれない。


「やはり結婚式には父上にも同席して頂かないと魔族の面目が立ちませんから」


っと既に1年後の結婚式が決定事項のランに対し、それ以外の面々(人族魔族双方)は魔王降臨即開戦の事態を想定して動かなくてはいけなかった。しかし魔王がこちらの世界に来るまでの間になんらかの話し合いを持たないとならない、そしてお互いのスケジュール調整が済んでようやく今日第1回の合同会議が開かれる事となったのだ。




魔族の代表がランとお目付役の2人で、人族の代表はハジメ、始、ミリンダ、セレスティーナの4人である。人族の人数が倍になった理由として皇太子の求婚を断った犯人がランだという言質を取り交渉を多少有利に進めたい思惑が有る。だが、これに対してランが提案してきた事はハジメ達の想像を超えていた。


「それでしたら、今回私がやった事の損害賠償として【大型転移陣ビッグゲート】を今後通過する際の通行料の7割を向こう10年間そちらの国にお支払いするって事でどうですか?10年以降は半々で」


ランは既にこちらの世界と魔界を行き来出来る様にして自由貿易を始める考えを持っていたのだった。


「私達の世界でも魔族に危害を加えるモンスターは駆除しております、こちらの世界の冒険者の受け入れも可能ですので新たな活動の場を増やせると思いますよ?もちろん商売の販路拡大も含めてですが・・・」


ハジメ達はランが魔王の娘なのだと再認識させられた、魔王が武力を用いた戦争を挑もうとしていたのに対しその娘は経済力を用いた戦争を引き起こせるだけの頭脳を兼ね備えていたのだ。しかし、その頭脳も直情型の突撃思考の為に活かし切れてなさそうではあるが・・・。


「では、まずは今回の最大の焦点となりますラン様とハジメ様の同棲開始の時期について話し合いを始めたいと思います」


ミリンダさんが議長を務め、第1回人族魔族合同会議が始まった。人族側に既に勇者が待ち受けている以上、魔王がこちらの世界に降臨した直後に即開戦した場合甚大な被害を双方に及ぼす事が想像出来た。なのでこの被害を出来るだけ減らす方法を模索するのが今回の会議の目的の1つであり、その手段の中に同棲の開始時期も含まれているのだ。だが、やはりこれもランの一言で即開戦の危機は去る事となった。


「父上がもしもすぐに開戦しようとした時は、同棲をすっ飛ばして即入籍した上でハジメ様をルピナスの領主に勇者始をモンドール領主に任命するのはどうでしょう?娘婿と仲人の領土に土足で踏み入るのは魔族でなくても恥ずべき行為なので一旦は引き下がるしかないと思うのですが」


しかしこれによって、ハジメとランの結婚がほぼ既定路線となりハジメは更に追い込まれる形となった。


「私とハジメ様が一緒に暮らし始めるのは父上がこちらに来られてから1ヵ月後という事で。そして仮に同棲が不調に終わっても【大型転移陣ビッグゲート】は破壊せず停戦状態をそのまま維持で。あとそちらの冒険者ギルドの支部を魔界に新設する際の建設費用はこちらで全額負担します。ただし、完成して以降は我ら魔族の中で冒険者となりたい者が現れた場合受け入れて欲しいのです」


魔族の中にも冒険者に憧れている者が少なからず居るそうだ、これを機会にその夢を叶えさせてやるのも魔族の新たな道を拓くキッカケになるかもしれない。ランの言葉に会議の場に居た面々は心打たれる・・・筈だった。


「それで、ミリンダさん。受け入れ可能になったらハジメ様の傍を離れずに済む様に冒険者になりたいのですが、手続きの仕方を今の内に教えて貰えませんか?」


(結局お前が冒険者になる口実をでっち上げただけなんかい!?)


思わず全員がツッコミを入れそうになったが大人なので声には出さなかった。




第1回の会議は終始ランのペースで進んでしまい、人族側が主導権を握る事が無かった。


「では予定の時間が来てしまいましたので、本日の会議はここまでで。次回の会議は1週間後ですが姫の提案ばかりではバランスが悪いかと思います、我らの方でも譲歩出来る部分を探しておきますので次回の会議では更に踏み込んだお話をしたいと考えております」


ランのお目付け役が軽く詫びを入れて会議が終わろうとしていた、しかしここでお目付け役が言い忘れていた事が有ったらしく最後に大事な事を付け加えてきた。


「あ、そうそう。次回の会議から我ら魔族側で代表がもう1人加わりますので承知しておいてください」


「えっ、私は何も聞かされてないわよ。一体誰が加わるというの?」


「ご母堂、姫の母君です」


「えっ、えっ!お母様がこちらに来るの・・・・!?」


「はい、大層ご立腹ですので覚悟されておくのがよろしいかと・・・」


先程まで余裕そうな顔で会議に臨んでいたランの顔が真っ青に変わった、ランのお母さんって一体どんな人なんだ?


「勇者様!!」


「はい?」


「防御結界はどれ程の強度の物を張る事が出来ますか?」


「一応最強度の物をルピナスの町全体に張る事だって可能だが、それがどうかしたか?」


「・・・・・では次回会議の前日1日だけで構いませんので、町を結界で防御しておいてください。モンドールは爺が守りますので」


「仕方ありませんな、第2回の会議前に周辺の町や村が消し飛んでしまったらシャレになりません」


2人が物騒な話をし始めたので、ミリンダが割って入った。


「あの・・・ルピナスやモンドールが吹き飛ぶってラン様の母君は一体どの様なお方で?」


「お母様は実質魔界で最高の実力者です、魔王である父上ですらお母様の足元にも及びません。父上と出会った際も父のあまりの不甲斐無さに『そんなんで、よくこっちの世界に来れたわね。私がみっちり再教育してあげる!』と父を魔界に引きずっていくと【大型転移陣ビッグゲート】を破壊して逆侵攻されない様にした上で、敵対していた筈の魔族の軍を再編してみせたのです」


(魔族と敵対?)


ランの言葉の中に気になる部分が幾つも有った。


「ラン、魔族と敵対って母上ってもしかして人族なの?」


「そうです、もしかしたら2回目の会議には私は出席出来ないかもしれませんのでご容赦下さい」


「姫、あの方がそれを許すと思いますか?例え全身が包帯で巻かれていても首に縄を付けて引き摺って連れてきますぞ」


どんだけ鬼畜なんだその女性、魔王より先にその方がこっちの世界に来るのが問題じゃないのか?ハジメはそう思った。


「つかぬ事をお聞きしますが・・・・ラン様の母君の名前ってもしかしてアーシュラではないですか?」


ミリンダからの質問にランとお目付け役は驚いた。


「何故、お母様の名前が分かったのですか!?」


「いえ、彼女の名前は最早伝説ですから。王城を全壊させたり山を吹き飛ばしたり・・・・始様には自重を覚えさせろでしたが、彼女に関してだけは『過ぎ去るまで何もするな、手出しすれば国が滅ぶ』とまで言われましたので」


「じゃあ、そのアーシュラって女性は?」


「多分、ご想像通りだと思います」


ミリンダは頷きながら珍しく脂汗を流していた。


「始様の前の代の勇者です」

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