No 007 調査団発足
観察対象者000 観察対象者001 学校
俺はある教室に向かっている。有栖川の話によるともう誰も使っていない教室なんだとか。そこを活動の拠点にしようということらしい。
その教室の前につくとすでに谷口が入り口付近で待っていた。
「有栖川はまだ来てないのか?」
「うん……」
谷口はこれまで無口を続けてきたからか。喋り慣れていないようだ。
「おっ集まってるねー」
しばらくして有栖川がのこのこと遅れてやってくる。
「おい遅いぞ」
「悪いね。 先生からここの教室のカギもらうのに時間かかっちゃって」
有栖川は鍵を差し込んで扉を開ける。
教室の中は教卓とロッカーがいくつか、生徒用の机と椅子が端っこに集められた状態であった。
「ところで何と言って貸してもらったんだ?」
「そりゃもう色仕掛けよ」
「その貧相なムネでか?」
「し、失礼なやつだな。 Bカップはあるわ」
俺は有栖川がこっちを向いてない時を見計らってムネをチラッとみる。……Aカップだな。と俺は心の中で思いつつ、教室に入る。
意外と埃っぽい。何年も掃除していない感じである。
「で? 実際のところなんて言って貸してもらったんだ?」
「新しい部を作るって貸してもらったわ。 活動内容は部屋借りてから決めるって言って」
「3人いれば部活として活動できるか。 で部活内容はなんて嘘をつくんだ?」
「それをこれから話し合って決めるのよ」
「適当にボランティア活動なんかじゃダメなのか? ゴミ拾いとか」
「実際にゴミ拾いをして活動実績を残さなきゃいけないから却下。 私達にゴミ拾いなんてしてる暇ないわ。 なんかこう活動ついでにできる部活内容にしたいのよね」
「そりゃ難しいな」
しばらく沈黙が続く。
「あ、あのー調査活動なんてどうでしょうか?」
「なんの調査なんだ?」
「この町とその周辺で起きていることの調査活動を発表するってどうかなって…… これなら能力者のことを調査しながらできる活動だし」
「あっ それいいわね。 よし採用! あんたも文句ないわよね?」
「ああ。 特になにも思いつかないし、いと思うぞ」
「よし決定。 先生にはそう伝えておくわ」
「では本題に入るわ」
そういって有栖川は新聞を広げた。そこにはマーカーで赤く囲っている文章があった。
「このマーカーで囲った部分を見て」
そこには警官が散弾銃のようなもので襲われて死亡する事件が起きたことが書かれていた。 ……興味深いことが書かれている。 付近で散弾銃を発砲したような音は聞こえなかったというのだ。 それなのに撃たれた警官の体にはたくさんの鉛玉が発見されたという。
「これ能力者が関係していると思わない?」
「確かに音ぐらい聞こえてもいいはずだ」
「よしならばこの事件を調べるわよ。 次の日曜日に駅前に集合ね」
「それはいいが、大丈夫なのか? もしこれが能力者によるものなら相手はショットガンを持っていることになる。 ショットガンを持った男と対峙するなんて俺はやだぞ?」
「そのときは谷口さんがなんとかするわ」
「え? が、頑張ります!!」
「おい谷口。 大丈夫なのか? できないことは否定すべきだぞ。 自分の命がかかっているんだから」
「たぶん。 大丈夫。 鉛玉が当たる前に全部サバイバルナイフで叩き落とせると思う」
あのサバイバルナイフ。 そんなに速く動けるのか。
「よしよし。 これは土日に調査するとして、次は能力者について調べるわよ!」
「能力者について?」
「なぜ能力者になってしまったのか? なぜ能力が使えるのか? 使える法則はなんのか? そういうのを調べるのよ」
「難しい内容だな。 特に『なぜ能力者のなってしまったのか』 『なぜ能力が使えるのか』 については俺達じゃ調べようがないと思うぞ? これこそ国の研究機関とかで調べてもらうしか……」
「それは私もそう思っているわ。 何が問題でこのような現象が起こっているのかあらゆる面から考えて、考えだされた全ての案について調査する必要があるもの。 大学機関レベルの調査機器が必要な場合もあるし、とにかくお金がかかるし、私達じゃその案を考える頭脳も足りないわ」
「でも 『使える法則』 については私達でも調べられると思うの これは能力者であるあんたと谷口さんがいるから、色々試してみて使る状態と使えない状態を調べればいいのだもの」
「なるほどな。 じゃあ試してみるか。 俺は何をすればいい?」
「あんたはまだどんな能力が使えているのかわからない面が多いから、まずどんな能力なのか調べる必要があるわ。 えーっと、今のところは人格を消す能力ってことになっているけど…… どうやって調べたらいいのかしら?」
今思ったことだが、自分の能力はかなり危険な能力だ。だって相手の人格を消してしまうなんて、恐ろしいことだと思わないか?
「俺の能力は簡単に言うと相手の脳みそをいじくる能力だ。 だから何か試してみるとしても危険が伴う。 最悪相手を廃人にしかねない」
「それもそうね。 相手を廃人にしてでも調査を続ける気なんてないし…… そうだ! その能力の発動条件はどうかしら? 谷口さんに能力を使用した時、あんたどうだった?」
「その時は…… たしか谷口さんの腕をつかんだ時に起きたな」
「なるほどね。 今あんたの能力がどんなものかここに箇条書きしてみたんだけど、他に気づいたことはない?」
有栖川はノートを差し出した。 そこにはこう書かれていた。
どんな能力か?
・相手の人格を消す能力
発動条件
・相手に触れた時(詳細には相手の腕をつかんだ時)
「他には…… 俺が谷口のもう一つの人格を消すように願ったことだな」
「なるほど。 それは発動条件かしら?」
「わからない。 ただそう思って谷口の腕をつかんだのは確かだ」
「そう。 まだわからない項目としてここに書いておくわね」
「次! 谷口さん。あなた自分の能力がどんなものなのかわかる?」
「だ、だいたいは……」
「教えて」
「はい。 サバイバルナイフを高速で動かせます」
「それは知ってる。 うーん。 たとえばどれくらいの速度で動かせるかしら?」
「前、一度だけ雹が降ってきた時に、自分の頭の上に降ってくる雹を全部弾き飛ばして当たらないように遊んだことはあります」
「相当なスピードね あとは何かある?」
「あの…… まぶたの裏にサバイバルナイフがいる場所の光景が見えるです」
「まぶたの裏に?」
「はい。 だから寝るときはサバイバルナイフを暗いところに隠すんです。 明るい場所だとまぶたを閉じても明るいままで眠れないんで」
「ふむふむ。 他には何かあるかしら?」
「他には…… 自動防衛と自動攻撃って呼んでるんですけど、自動で相手を攻撃したり私を守ったりしてくれます」
「それって自分で意識して切り替えるの?」
「はい。 いつもは自分の意思で動かすんですけど、自動防衛か自動攻撃かに切り替えることができるんです」
「ふーん。 まとめるとこうね」
どんな能力か?
・サバイバルナイフを自由自在に動かす能力
発動条件
・自分の意思で自由自在に動かすことができる
機能
・自動で相手を攻撃する自動攻撃に切り替えることができる
・自動で自分を守る自動防御に切り替えることができる
その他
・速さは雹が空から落ちるよりも速い
・まぶたの裏にサバイバルナイフがある場所の光景を確認することができる
「そんなことをメモってなにかわかるんか?」
「なにがわかるかはまだなんとも言えないわ。 ただ、どんなことができるのか確認しておきたかっただけよ」
「そうか」
「うーん。 他に確認しておくべきことは…… わからないわね。 思いついたらまた招集するわ」
とりあえず日曜日に駅前に集合することが決定した。あと、放課後できるだけここに集まるようにと。