表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふくらし魔女と苦労性伯爵  作者: 上田 リサ
1.ばぁーちゃんの結婚
1/81

序章

平日を中心にこまめに更新していきます。

どうぞよろしくお願い致します。

 ここは港町ローウェスの大きな酒場。

 樽酒のイスに座って飲む男達は、そのほとんどが今日陸に上がってきた船乗りだ。

 焦げたような肌に傷、老若問わずに体格は良く声も大きい。良く食べ良く飲み、良くしゃべる。おかげで注文が聞き取れないなんてザラだ。

 「アリス、6番テーブルだ」

 「はーい」

 この店はそこそこ繁盛し、大きい。

 昼は定食屋としても開けており、夜は酒場と化す。だが、それだけではない。

 この店には2通りの女の子がいる。

 1つはわたしがやっているウェイトレスだ。黒い服を着て長いスカートに白いエプロンが目印で、軽いボディタッチ以外のお触りは厳禁だ。

 もう1つはウェイトレス兼接客嬢だ。こちらは色とりどりの派手な色の服、というより衣装。胸もがばっと開けてるし、スカートには深いスリットが入っていて、別途料金を払うと席についてくれる。あとはその席の飲食代が彼女達の給与に反映されるので、容姿もだが話術も必要とされる。なかなか気も使うし大変な仕事だ。

 ただ、共通してこの店は女の子の服が小さめ。体の線をしっかりだしている。

 「お待たせしました、麦酒と若鶏の唐揚でーす」

 笑顔で2つの木のカップと大皿を置くと、常連のおっさんが軽く酔ったまま肩をたたく。

 「アリスも接客嬢になれよ、毎回指名してやるぞ」

 同席する何人かも笑ってうなずくが、わたしは「えーっ」とわざと困ったようにあいまいな笑みを浮かべたまま首を振った。

 「無理でーす。わたし美人じゃないし、座るよりこうして動いてるほうが性に合ってるの」

 「大丈夫だ。お前はかわいいし、胸もでかい。座ってるだけでいいじゃないか」

 「おーい、注文いいか」

 隣から声がかかった。

 「あ、注文だ。じゃ、ごゆっくり!」

 さっと身を翻して注文を受けにいく。

 その際に少しお尻を触られたが、このくらい何とも思わなくなってきた。むしろ次料理を運んだ時に触り返してやろう、という発想がでてくる。中には下心丸出しで危険な触り方をしてくる人もいるが、そういうのは接客嬢がさっと対応してくれる。ここは本当にいいお姉様方が多い。

 今日は平日。店の営業は日付の変わるまでだ。

 片づけをして、今日の分の日当を貰う頃には商業区であるここもほとんど暗闇になる。

 「お疲れ様でした」

 「じゃあまたねぇ~」

 白い息を吐きつつわたしが頭を下げ挨拶をすると、同僚達は手を振って見送ってくれた。

 (よし、これで今日も終わりっ!)

 にこやかな笑顔を崩さないまま顔をあげ、わたしは1人店の裏にまわった。

 きょろきょろと周りを見て、誰もいないのを確認してわたしは小声で呼んだ。

 「フーちゃん」

 ひょこっと、店の裏に積まれている酒の空樽の向こうから薄い茶色の()の部分が出てきた。

 そっと駆け寄ると、そこにはひょこひょこと動くホウキがいた。薄茶の柄の先には筆状に黄色い長く柔らかな毛がついている。毛をまとめる紐が赤と黄色の編みこみ紐で、リボン結びされているから『彼女』だろうと推測している。

 なぜホウキが動くか。

 それは知らない。ただ、魔法使いの秘密道具だという義祖母の話を信じるしかない。

 「お迎えありがとう。帰ろっか」

 フーちゃんに横座りすると、彼女はすーっと空高く舞い上がった。



まずは序章でした。

読んでいただきありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ