ピー
義樹はあてもなく街を歩いていたが、
暇だなぁー、オイ。なんか面白い事でも起きないかなぁ。
と、心の中でグチをこぼしていた。勉強をしようとしないところから、彼が真面目でないことがわかる。
一人しりとりでもするか。しりとり……リトマス紙……新聞紙……色紙……獅子……「し」ばっかだな。やめるか……
やっぱり勉強をする気は無いらしい。
ん?あれは確かクラスの……そうだ、田中と鈴木だ。
義樹はコンビニで立ち読みしている二人のもとへ歩いて行った。
「お前ら、何してんの?」
「うわぉい」
田中の方が、大袈裟に驚く。
「急に話かけるなよ」
そう言った鈴木は妙にそわそわしている。
「で、何してんの?お前ら確か塾だろ?」
「もう、塾は終わってその帰りだ。なぁ田中?」
「そうだとも鈴木。俺達は決して、サボりではないぞ」
「真面目なんだな。でもその本……」
田中と鈴木の手には、成人向けの雑誌があった。
「ここここれは、決してこういう事に興味がある訳じゃないぞ。なぁ鈴木」
「そうだとも田中。俺らはただ、勉強のためにこの『巨乳女教師の放課後授業』を読んでいる訳じゃないぞ。なぁ田中」
「そうだとも鈴木。あくまでも勉強だ。そういう斉藤君は勉強しないのか?」
田中が義樹に聞いてくる。知っていると思うが、義樹は勉強をまったくしない奴だ。
「うるせぇな。ところでそれって、何の勉強?」
「ピーだよ」
―――――このピー音は自主規制です―――――
田中が即答する。
「ピーって何だよ」
「ピーも知らないのかい?」
やれやれといった様子で鈴木は肩をすくめた。
「いやいや、お前らただ放送禁止用語言っただけじゃん」
「しょうがない、そんな君の為に僕がピーについて、教えてあげるよ」
「別にいいから……って聞けよ鈴木」
鈴木は構わず説明を続ける。
「ピーというのはピーでピーをピーにする事なんだ。なぁ田中」
「そうだとも鈴木。そもそもピーは、十九世紀のフランスでピーベルト・ピー伯爵が使用人とピーする事を目的に考案され、その後ピーは多様な変化を遂げて現在のピーに……
―――――義樹、立ち読み中―――――
「そうだとも田中。しかし現代のピーではピーが不足した事により、ピーで無くなってきている傾向もあり、ピーでは無くピーにしたらどうだ?という案も出されているが、ピーはあくまでもピーであるからそれをピーにするなん……
―――――義樹、お会計中―――――
「そうだとも鈴木。だから最近では、ピーでピーをピーする事でピーからピーをピーして、尚且つピーのピーを保てる事からピーのピーはピーにピーする事が重要視され、ピーはピーにピーする事がピーの為にもピーである事が……
「ピーピーうるせぇ!」
田中に義樹のドロップキックが炸裂した。