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日常怪異禄 あなたの隣に怪異を  作者: ま〜ち


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6/12

6 飲み会後のサラリーマンと旅での怪異について

 こんばんはー!カウンター空いてる?お!久しぶりー元気にしてた?高田さん。あ、今日から厨房じゃなくてカウンターになったんだ。へえーじゃあ、またオリジナルカクテル作ってもらおうかな。ん?ああ。今日、会社の飲み会だったんだ。ほら、これからお盆休みになるじゃない?その前にビアガーデンで皆でご飯会。そう、ご飯会。飲み会って言うとさ、最近はうるさいからさ。でも、今年の新卒は結構飲むんだよねー年によって色が違って楽しいけど。昼暑かったけど、夜になったら少し涼しくなって助かったよ。あのままの暑さが続いていたら、俺、倒れてたし。


 そういえばさ。少し酔っているから言える事なんだけどさ。もしかしたら酔っているから思い出したのかもしれないんだけど。


 大学生の時にさ、ちょっと不思議なことがあったんだ。


 まあ、ちょっとだけ。ちょっとだけだから聞いてよ。酔っ払いの戯言だと思ってくれていいからさ。もう少し夏休みになるからっていうのもあってさ。急に思い出したんだ。


 自転車の旅ってしたことある?高田さん。


 そうそう。テレビとかでよく見るやつ。俺さ、自然環境を良くしましょうみたいなサークルに入ってたのね。テニス部と兼部で入っていたのね。そのサークルでさ、夏休み何しようかって会議があってさ。それで、自転車で旅をしながら自然環境を大切にしましょうって訴える旅に皆で出ようって話になったのね。しかもホテルとか泊まらずに。キャンプ場をはしごするの。それでさ、関東から東北まで行こうって言う話になって。道中、色々大変だったよ。道に迷うわ、夕立にあうわ、近くでクマが出たから気を付けてねって警官に呼び止められたりさ。でも、今になって思うと青春してたなーって思うんだよ。今でも一緒に旅した仲間たちと先輩たちは連絡取ってるんだけどさ、時々飲むんだけどね。その時に決まって話に上がる話題があるんだ。


 幽霊を目の前で見たっていう話がさ。


 あれは…どこだったかな?忘れちゃったけどさ。多分東北に入って、もう少しで旅が終わるって時だった。ん?あーそうそう。青森まで行ったら解散っていう流れだったんだ。青森まで行ったら、あとは自由解散。そういう形の旅。


 それで、どこのキャンプ場だったのか忘れたけどさ。あるキャンプ場で、テント張ってさ。張った後で、夕飯の食材を買いに行く班と留守番する班で別れたんだ。俺は留守番する班になった。留守番することになったみんなでさ、グーたらしてたの。同学年の男女でまったり話していてさ。他愛ない話だった気がする。今日も暑いねーとか、東北だから夜は少し寒くなったね、とかさ。そんな感じの事を話してたんだ。それで、俺たちがテントを張ったところって、トイレの目の前だったのね。そのトイレっていうのがさ、よく駅前とかにある小汚いトイレあるじゃん?あんな感じのがあったのね。


 そこに着物を着た、おばあさんが入っていったのね。


 こんなキャンプ場で着物着てくるなんて、近所の人なのかな?って思ったけどさ。でも着物着ている人なんて当時、珍しかったしさ。何か記憶に残ってるんだよね。色も思い出せるよ。色は黒。何か白く描かれている花が足元あたりに描かれていてさ。何の花だったのか分からないし、名前もしらないんだけど。でも綺麗に描かれていたよ。トイレに入った後、皆で話したんだ。今トイレに行った人、着物着てたねーって。みんなも、こんなキャンプ場で着物着ている人っているんだね。何か、お祭りでもあるのかな?とかさ。夏祭りかな?あるんだったら行ってみたいね、とかそんな話をしていたんだけどさ。


 30分経っても、1時間経ってもその着物のおばあさんは出てこなかった。


 俺さ、そん時ババ抜きしててさ。友達と。もうとっくに出てきているもんだと思っていたのね。一緒にいた、女の子がさ。俺の肩を叩くのね。「ねえ、ちょっと。お願いがあるんだけどさ」ってぐあいに。なんだよーどうしたん?って聞いてみたら。トイレに入った、おばあさんがトイレから出てきた気配がないって言うんだよ。その子が座っていた場所ってずっとトイレが見える場所でさ。みんなと話していても嫌でもトイレが目に入るようなところにいたらしいんだけど。その子が言うんだ。もしかして、高齢だからトイレで倒れてるんじゃないかってさ。おばあさんだから、それもあり得るかもってことでさ。どうする?救急車呼ぶ?って話にもなったんだけど、とりあえず様子を見に行こうって言う話になってさ。万が一、倒れていたら男手が必要になるだろうから、女子トイレに一緒に様子を見に行ってほしいって言われたんだ。その時、男は俺と、もう二人いたんだけどさ。自慢じゃないけど、一番体格良かったの俺だったし、高校はラグビーやってたから力には自信があったんだ。だから女子2人と俺ともう一人で女子トイレにいったんだ。トイレの中は薄暗くてさ、どこか床もなんか濡れているように湿っててさ。昼間なのに、すごく暗かったんだ。3つさ、あったんだ。トイレがさ。俺たちから見て、奥から2つ目。今でも覚えているだけど。


 そのドアだけが閉まっていたんだ。


 あとは無人のトイレがあるだけ。きっとそのトイレにいて、なんか具合でも悪くなったのかなって皆で話したんだ。そして、ある女子がさドアをノックして「大丈夫ですか?」ってちょっとトイレに響くような音量で声をかけたんだ。どうも俺さ、トイレに響いた声が気味悪くてさ。変に響いているっていうかさ。何ていうのかな…あー言葉が出てこない。酔っているからってことにしようかな。それで、何回か声かけたんだ。女子がさ。埒があかないから、救急車呼ぶかっていう話になった。


 その前にドアに鍵がかかってないかもう一度、トイレのドアノブに俺が手を伸ばした瞬間―


 強烈な静電気が俺を襲ったんだ。


 夏なのに。指先にドアノブが触れた瞬間、火花が散ったような感触があった。夏の湿気の中でありえないほどの乾いた音だった。

 冬だったら分かるけどさ。そうなるのも。しかも昼過ぎの時間。え?って思ってトイレのドアを見ているとさ。

 

 ドアが音を立てて開いたんだ。


 …ゆっくりと。


 ほら、ホラー映画とかであるじゃん?ゆっくり金属の音を立てながらドアが開くっていうシーン。あんな感じ。


 …その中には誰もいなかった。


 女性陣はパニックになっちゃってさ。俺たち男性陣は呆然自失って感じ。とりあえず出ようって話になって。外に出たんだ。


 トイレから出た瞬間、空が夕方になってたんだ。


 俺たちがトイレに行ったのはまだ日が高い時間帯だったし、トイレにいたのもせいぜい15分ぐらいだったと思う。これは体感ね。え?って思うじゃん。そしたら女性陣がもう嫌だって言う風になってさ。どうしようって思いながらテントに戻ったら食材を買い出しに行っていたやつらが、もう戻っていてさ。「お前らーどこ行ってたんだよ!」って少し怒ってるの。留守番だったのにテントに誰もいなかったら、そりゃあ怒るわな。だけど買い出しに行っていたやつらも俺たちの後ろで泣いている女性陣を見てさ、なんかとんでもないことが起きたんじゃないかっていうのが分かったらしくてさ。それで事情を聞いてきたんだ。あばあさんがトイレにいったこと。長時間出てこなかったから様子見に行ったこと。それらを話したらさ、買い出しに行ってたやつがさ「今日はもう、ホテル探してそこに行こう」って言うんだ。


 反対する奴は一人もいなかったよ。


 そのあとホテルで皆で話したんだけど。多分、幽霊を見たんだって言う話になったんだ。何のためにいたのか、なんで皆が見えたのか分からない。だけど、こういう時もあるもんだっていうことになったんだ。とりあえず、その日は早く寝て、翌日は早く出た。その時は皆無言で自転車をこいでたよ。


 そんな話。あれ以来、トイレで静電気が起こるんじゃないかって不安になる。あの空間というかさ、空気を思い出すから。

 …いや、なんかゴメンね。そんな面白い話じゃなくてさ。あ、そういえば高田さん、なんか飲む?一緒に乾杯しようよ!良いって。今日は俺のおごり。話聞いてくれたしさ。

 

 …え?

 もう一人?

 帰ってきてから?

 高田さん、なに言ってんの?


 俺、今日--


 一人で来たんだけど。

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