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日常怪異禄 あなたの隣に怪異を  作者: ま〜ち


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28 幼い時の怪異

 ねえ。そろそろまた、うちのおじいちゃんの家に行ってみない?ほら、うちの子供たちも少し大きくなったことだしさ。前に言ったのは下の子が生まれた時ぐらいでしょ?ちょっと遠いけど良いかしら?…うん。そうね。私と貴方で交互に運転しましょ。車がないといけないところで不便だけど、あの家から出るのは良くないって言ってたから。うちのおじいちゃんたち。


 え?それは初耳だった?嘘…言ってなかったかしら。ごめんなさい。私てっきり…もう伝えていると思っていたわ。


 教えてほしい?まあ…本当の事なんだけど。


 うちのおじいちゃんの家って座敷童が出るの。


 え?見たことある?いつ?泊まった時?ああ…それで、どうだった?走って通り過ぎた姿かー。もしかして、恥ずかしかったのかな?


 だって小さな女の子だから。


 結構、うちの座敷ちゃん…あ、これ私が勝手に呼んでいるんだけど。座敷ちゃんね、恥ずかしがり屋さんなの。私の友達を連れて家に行った時も、いるんだけど、絶対に出てこなかった。代わりに、野イチゴが縁側に置いてあったり、綺麗なお花が置いてあったりしたのね。しかもその友達の人数分。家族以外の前に出るのは恥ずかしいけど、拒絶しているわけではないと思うの。だから貴方の前に姿とか音を出したってことは、少し恥ずかしいけど家族だからってことだとは思うの。


 私が見た時?そうねー…あれはいつだったかしら。初めて見た時は、確か6歳ぐらいだったかしら。小学生になるかならないかぐらい。なんでか覚えてないんだけど、私、一時期、うちのおじいちゃんの家に預けられたのね。確か期間は1週間ぐらい。それで私、ちょっとしたイベントみたいですごく楽しくて。山に行ったり、畑を手伝ったり、うちのおじいちゃんと川に釣りに行ったりしたの。そんな中、いつも現れるの。夜に座敷ちゃんが。そろそろ寝ようかなって時。疲れ果てて、布団に行こうと寝室にいるとね。ちょこんと寝室の真ん中に座っているの。


 どんな姿?そうね、おかっぱ頭ででも紫色の着物を着ててね。年は6歳か7歳ぐらいかな。目つきがどこか鋭くてね。でも怒っているわけじゃないの。きっと元から何だと思う。座敷童のイメージと違う?そうかも。でもうちの座敷ちゃんはそんな感じ。


 その座敷ちゃんがちょこんと正座して待っているの。最初見た時は驚いて、固まっちゃって。え、誰?って思ったの。私のそんな姿をみた座敷ちゃんはすっと立って、私の横を走って通り過ぎたの。もしかして、挨拶しに来たのかなって思う。でもびっくりさせちゃったから、どうしたら良いのか分からなくて走って行っちゃったんじゃないかな。びっくりした私は、半泣きになりながらおじいちゃんがいるところに行って、話したの。抱き着いて今あったことを、たどたどしくね。そしたら、うちのおじいちゃん。私の頭をなでながら言ったの。


 それはうちの座敷童であり守り神様だから、怖くないよって。


 静かに、あやすように言われたわ。下から見上げるおじいちゃんの顔は穏やかな顔をしていた。ああ、大丈夫なんだ。って思って。反対に怖がって悪かったなっていう気持ちにもなったの。じゃああの子に謝らないと。って言ったら。うちのおじいちゃんが、なんでだい?って頭を撫でながら聞いてきたの。だって、私、怖がっちゃったしって言ったら。優しいね。でも大丈夫だよ。って言ってくれたわ。でもやっぱりなんか悪い気がして。だから私、お詫びのつもりでうちの近所にある和菓子屋さんのところにいってね。いちご大福を買ったの。


 それでいつ渡したら良いのかなって思って、今度はおばあちゃんに聞いてみたの。そしたら寝室のちゃぶ台に置いておいたら良いよ。って言うの。だから次の日に、和菓子屋さんに買いに行って、すぐにちゃぶ台の上に置いておいたの。小さな花柄のお皿に乗せて。これで良いのかな?って思ってね。少しの間、そのイチゴ大福をじっと見ていたんだけど。なにか足らない気がするのね。少し、考えた後、あっと気が付いて、とりあえず……私ね。


 手を合わせて。昨日の事を謝ったの。


 心の中でね。


 その日は、おじいちゃんの家の周囲に住んでいる私と年の近い子たちと遊ぶ約束をしていたから、すぐに外に出ちゃったんだけど。え、友達がいたのって?まあ、年末年始とかお盆の時とか、遊びに行ってたからね。外で一人で遊んでいたら自然と友達が出来たの。何か声をかけられてね。当時の私がかわいかったからかしら。まあ、今でも美人でしょ?旦那様。照れなくていいわよ。え?照れてない?ちょっとーどういう事よ。


 え?その後?…まあいいわ。


 それでね。友達と遊び疲れてへとへとになりながら帰ってきたら、うちのおじいちゃん達も畑から帰ってくるところだったのね。玄関で2人にばったり会ってさ。それで、今日あった事とか、話しながら靴を脱いでいるとね。


 後ろから誰かが走っている音が下の。


 廊下を裸足でね。


 小さな足でトトトっていう音。子供が木造の廊下を走る感じ。そうそう。貴方が聞いたのもこんな感じだった?んで、あ、あの子だ。そう思っておじいちゃん達を見ると、静かに笑って頷いていてね。急いで、私、いちご大福の様子を見に行ったの。


 ちゃぶ台にあったイチゴ大福は。


 半分に手でちぎられていたわ。

 

 あれ?半分しか食べてないのかなって、思ったんだけど。私の後ろを歩いてついてきてた、おばあちゃんがお皿を見た時にね。


 あら、あなたと半分こしたかったのね。


 そう言われたの。そうなの?って振り向きながら少し上にいるおばあちゃんの顔を見たら、穏やかに笑っていたわ。なんか、嬉しくてね。分けてくれるんだって思って、私急いでいちご大福のところに行ってね。手を合わせて頂きますって言って食べたの。手でちぎられていたからイチゴは不格好になっていたけど、甘くて、イチゴの酸っぱさもあって、美味しくて。あのいちご大福の味は今でも忘れられないわ。


 その日以降、少しずつ…本当に少しずつなんだけど、私に心を開ていくれるような気がする。最初は寝る直前ぐらいにしか姿を表さないようなとても、恥ずかしがり屋な子だったけど。昼に少しずつ、その子の気配というか…音を聞くようになったの。昼におじいちゃん達とご飯を食べていると、勝手に仏間の障子が開いたり。あとは…廊下を歩いている音だったり。


 あ、そうそうあと、あと縁側のところに、花が置いてあったり。私もお返しにお菓子あげたり、綺麗な石をあげたりしたの。え、綺麗な石?川が近くにあったじゃない?そこのところで地域の友達と一緒に遊んでいる時に見つけたの。それをあげたの。その時、見つけた石は2つ。一つは座敷ちゃんに。もう一つは私に。おそろいってこと。珍しい?そうかしら?私の周りの友達とか、結構持っていたわよ。


 それで最後の日になった時、私また来るねとお手紙書いたの。地元の文房具屋さんに行った時に、可愛らしい便箋を買ってね。それにおばあちゃんに教わりながら、へたくそな字だったとは思うんだけど、一生懸命に書いたわ。書いたお手紙を仏壇に置いて、そのまま寝たの。それでね。その日の夜に。布団で寝ていると。


 誰かが布団に入ってきたの。


 誰だろうと思ったんだけど眠くて、目もあけられなくて。そしたら私の事をぎゅっと抱きしめてくれてね。正面から。顔にさらさらとした髪の感触、太陽の匂い、それだけであの子だって分かったわ。背中に回された手が優しくて、どこか暖かくて。まるで母親に抱きしめられているような、そんな風に思ったの。寂しいのかな。そう思ったんだけど、私も抱きしめ返してね。小声で、また来るね。と言ったの。そしたらさっきより少しだけ強く抱きしめられてね。それが、座敷ちゃんの返事だった。


 それ以降、小中高と毎年遊びに行くと、最終日は私の布団に入ってくるようになったの。


 今回?うーん。分からないわ。だって子供いるしね。でも…もしかしたら。もしかしたらなんだけどね。


 今度はうちの子が、座敷ちゃんと遊ぶのかな。


 そう思うと、ちょっと昔の私を見るようで


 懐かしい気持ちになるわね。


 きっと。

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