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日常怪異禄 あなたの隣に怪異を  作者: ま〜ち


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12/12

12 農家が経験した怪異について

 ねえさん、旅行で来たんか?ああ。そうか。こんな田舎まで電車で、よく来たもんだな。聞いても良いか?おう。どこから来たんだ?お、都会だな。俺も昔、高校の卒業旅行で友達と一緒に行ったもんよ。その時?ああ。浅草と銀座とか行ったな。なつかしいな。あのころとは違うんだろうな。風景とか。それで、ねえさん。仕事、良かったら聞いても良いか?おう。そうなんか。看護師とはこれはまた、大変だな。夜勤とかあるのか?…そりゃあまた大変だ。え?やめて旅行してたのか。そうか、そうか。これから、またどこか行くのか?もう家に帰るのか。ゆっくりできたか?…そうか。そりゃあ良かった。


 ところで、ねえさん。良かったらちょっと俺の話を聞いてくれやしないか。なに、電車が来るまでさ。そうさな、あと15分ぐらいか。それぐらいで終わる話さ。長い話でもない。いや、別に面白い話じゃないかもしれないが。これ、ちょっとうちのカカア以外の家族に言えなくてな。どこか吐き出したくて。良かったら聞いておくれ。


 ねえさん。夜勤の時、怖い思いをしたことがあるか?


 やっぱりあるかい。実は俺もな。


 怖い、いやあれは不思議なことがあってな。


 ねえさん。あんた山には行くことあるかい?


 そうか。その山で俺な、不思議なこと。いや。


 不思議な光景を見たんだ。


 俺はさ、普段農家しているんだけどな。ああ、キャベツとかジャガイモとか作ってる。まあ多くても2種類ぐらいしか年間作らないけどな。俺の場合だけど。ビニールハウスがあるんだけどな、そこで育ててるんだ。


 その日も、いつも通り作業していてな。あれは4月頃で種付けとかで忙しい日々でな。春まきの時期で、家族で一緒にビニールハウスで種まきをしていたんだ。桜も咲いて、暖かくて良い日だった。一月前の冬の寒さが嘘のような天気だった。それで、夕方あたりになって今日はこれくらいで終わろうとして後片付けをしていた時だった。確か…夕方17時近かったと思う。少し暗かったからな。


 うちの畑の近くに山があるんだけどな。その山の方からな声がするんだ。


 おーい。って。


 最初は熊の声かと思って警戒したんだけどな。その後続いた言葉で人だと、思ったんだ。


 こっちだよーって言われてな。


 何だ?迷子か?それとも知り合いが悪戯でなにかしているのか?と思ったんだ。ちなみに、一緒に作業していた家族、俺のカカアもその声を聞いてるんだ。二人して、顔見合わせてな。誰だ?あの人か?いやあの人は、今日、出かけるって言ってたとか、色々と話をしていたんだ。だけども知り合いの声に似ていたからな。


 ちょっと様子見てくるって言って山の方へ歩いて行ったんだ。


 そしたら山に近づくにつれて、声も大きくなってな。こっちだよ。ここだよー。おーい。という声が大きくなったんだ。


 そしたらその声、森の奥から聞こえるんだよ。

 その時点で、おかしいな?って思ったんだけどな。こっちから声をかけても、応えてくれないんだよ。こんな悪戯する奴は誰だ?って思ってな。俺も意地になっちゃって。森の奥に行ったんだ。もう夕方だったから、薄暗い森だった。4月とは言っても、夜になるとここら辺はまだちょっと肌寒くてな。少し寒い思いしながら山の奥に行ったんだ。獣道みたいなところを行ってな。途中、歩いてて気がついんだけど。


 こんな道、今まであったっけ?って。


 俺はここに暮らして50年以上なんだが。こんな道知らなかった。俺は生まれ育った場所だったらどんな道でも知っている自負があった。だけどもその日通った道は、生まれて初めてだった。


 そしたらな。


 そこで古びた神社があったんだ。

 なんか床の石もところどころ苔生えてて滑りやすいし、鳥居も苔やらなにやら生えててな。そんでその鳥居にはな、なんかお札が張ってあったんだ。何ていうのか五芒星のあるだろ?そうそう。あの陰陽師が使ってそうな。それが張ってあってな。奥の本殿…であってるか?ほら、お祈りする場所。そうそう。そこもなんか賽銭箱がちょっと汚れててな。すべてが古い神社って感じでな。大きさ?あーどうかな?有名な神社のように大きいところじゃなかったが。だけど、そんな小さな感じでもなかったな。そんな神社だったが…これは俺の主観というか、感想なんだがな。


 歓迎されている、まあゆっくりしていきないっていう空気があった。


 ようこそ。って感じだったな。久しぶりに会った友人の家に行って歓迎されているような。そんな感じなんだが。ちょっと俺も頭がいい方じゃないから良い言い方が思いつかないんだ。悪いな。だけども、怖いとかそういう感情はまったく思いつかなかったし、起きなかった。


 鳥居をくぐったあと、また声が聞こえたんだ。


 こんばんはって言われた。


 つい反射であ、こんばんは。って返しちゃったんだけど。今思えばおかしいよな。なんで返してるんだって話だよな。笑っちゃいそう。それでな、せっかく来たしお参りしてから帰ろうっておもったんだ。もうその時は声の正体とか、どうでもよくてさ。とりあえず、お参りしたくてしょうがなかった、というのが正しいかな。


 それで俺、ポケットに入ってた、仕事終わりに飲むコーヒー代のお金をお賽銭箱に入れて参拝したんだ。祈ったこと?ああ。それは秘密。なんか言葉に出したら願いが叶わなくなりそうでな。悪いな。だけど、ねえさんだったらどんなことを祈る?…そうか。まあねえさんの現状だったらそうかもな。悪いな聞いてばかりで。


 そのあとは、夜が近くなったから山を下りたんだ。その帰り道、あの神社、神主もいなさそうだったし、管理している人もいないのだろうかって思ってな。良かったら種まきが終わってからでも、うちのカカア連れて参拝ついでに掃除しに行くかって思ってたんだ。


 それで、最近種まきが終わって落ち着いたからな。うちのに事情を話して、掃除道具もって山に入ろうとしたんだ。


 俺が通ったはずの道は森になってた。


 道がなかったんだ。あれ?ここから行ったはずなんだが勘違いしたか。いたるところを探したんだが、一向にみつからない。歩き疲れて一度家に戻ったんだ。そしたらうちのがさ、言うんだ。


 「狐か狸に化かされたんじゃないか」って。


 そんなことはないと思いたいんだけどな。だけど、そしたら悪戯するだろうって言ったんだ。ただ、場所を案内するような、こっちにこいみたいには言わないと思うんだよな。昔話でもどんな怪談でも、狸や狐に化かされた人は酷い目にあうだろ?俺はそんなことはなかった。だから違うとうちのカカアに言ったんだ。そしたら、うちのカカアがな。


 じゃあ、神様のお住まいに招かれたのかねって言われてな。


 ああ、そうかもしれねえなって思ったんだ。だから、今回いけなかったのは呼ばれてなかったからなのかもしれないとも思ったんだ。次、呼ばれた時は掃除道具持って、行くつもりでいるんだけどな。次、いつ呼んでいただけるかは分からねえ。だけど、また行けたら良いなって思っている。


 すまんな。こんな落ちも何もない話をしちまって。だけども少し誰かに話せて良かったわ。ありがとうな、ねえさん。

 お、もう少しで電車がくるな。あと5分ってところだな。ところでねえさん、これからまたどこか旅行にいくんか?

 そうか。帰るのか。帰り道、気をつけてな。


 また今度会った時は、良かったらうちに遊びに来てくれ。


 そん時は歓迎するよ。

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