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政治経済エッセイ2 25年8月~

25年補正予算案は「ココがいけない」

作者: 中将

◇規模の不足



筆者:

本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。


今回は25年11月21日に閣議決定された補正予算について個人的な意見を述べたいと思います。


閣議決定の内容がそのまま予算になるわけではなく、僅かには変わると思いますが、

基本的な路線としてはまず変わらないと思いますので解説させていただきます。



質問者:

私からすると、コロナ渦以降で過去最高の21兆円以上の補正予算ということで高評価だと思うんですけどうどうなんですか?



筆者:

まず全体の規模からお話しますと「不足」としか言いようがありません。



質問者:

えっ! これでも足りないとはどういうことなのでしょうか……。


24年度補正の一般会計歳出額は約13.9 兆円から、

25年度補正では一般会計歳出が約17.7 兆円程度になるそうなのですが……。



筆者:

「補正予算のみ金額の規模」で見れば確かにそうなのかもしれません。


しかし、春の予算と総合的に合わせて考える必要があります。


24年度予算112兆5717億円から25年度予算は115兆5415億円と3兆円ほど増えています。


しかし、24年度から比べて国が支出が最も増えている部門は社会保障費が37兆7000億円⇒ 38兆2000億円 国債費27兆円 ⇒ 29兆9000億円となっています。


税収は一方で24年度予算は69.6兆円(実際は78.4兆円に上振れ)から78.4兆円と増え、新規国債発行額は28兆6490億円と17年ぶりに30兆円を下回っています。


つまり「現役世代から最も搾取に成功した」のが25年度予算なのです。


その上で11月21日の閣議決定後に、高市総理と片山財務大臣は今年度補正後の国債発行額について、


『当初予算と補正予算を合わせた補正後の国債発行額は、昨年度の補正後の42.1兆円を「下回る見込みだ』


としているのです。


少なくともこの閣議決定前にあった「PB黒字化を複数年度」という目標からはかけ離れており、「単年度PB黒字化」を意識した見方です。

「複数年度PB黒字化」であれば30兆円や40兆円以上の補正予算があっても問題なかったはずです。


このことから「凄いことをやっているように見せかけて」いて実は石破政権を引き継いだ形にしか見えません。


※PB黒字化を複数年度にする意義はこちら https://ncode.syosetu.com/n8019li/



質問者:

えぇ……報道では「放漫財政」みたいなイメージで報道している上に、

長期金利(新発10年債利回り)は一時1.835%まで上昇(08年以来の水準)で円相場は1ドル=157円台半まで行ったんですけど問題は無いんですか?



筆者:

なぜだか報道では「金利の上昇=マーケットの拒否感」みたいな報道姿勢になっていますが、

金利の上昇に関しては2%を切る水準であることには変わりないです。


また、新興国や経済成長している国は利回りが2%どころではありません。

これは「将来の見込み経済成長率」という見方も利率にはありますので


円安に関しても岸田政権で160円近くになったことからそれと同等程度の円安水準ともいえるので165円以上の水準になったら問題かもしれませんけど、現状は想定の範囲内だと思われます。



質問者:

えぇ……マスコミの報道って改めて思いますけど意図的なんですね……。



筆者:

国際的信認がどうか測れる指標として「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の保証料率があります。

これの日本の国債では21日終了時点で「20.08」 とあります。


因みにどれぐらいの水準か分からないと思うのですが、

日本では東日本大震災直後に跳ね上がりアベノミクスが始まった2012年は140まで上がったこともありました。


その水準には遠く及ばないですが、それについては全く触れられていないです。



質問者:

市場としては問題ないはずなのにそれを触れてくれていないとは……。



筆者:

意図的にマスコミは「補正予算規模が大きすぎる」と情報操作をしていると言えます。


彼らは基本的には超緊縮財政で国債を全額返済するまで煽り続けると思います。

これは、日本が発展して欲しくないからだと思われます。



◇個別の内容について



質問者:

補正予算の全体規模についてご不満があることはとてもよく分かったのですが、

詳細についてはどうなんでしょうか?



筆者:

ちなみに補正予算21兆円というと消費税収が25兆、安倍政権末期の全国民への10万円の特別定額給付金には17兆円かかりましたのでそこが比較対象になります。

つまりは、消費税を廃止する規模や10万円給付のインパクトがなければ不十分と言えます。



ガソリン税の暫定税率廃止   1.0兆円


所得減税         1.2兆円


電気・ガスの支援       0.5兆円


重点支援交付金         2兆円


物価高対応子育て応援手当   0.4兆円


中小企業支援       6.5兆円


危機管理投資       7.2兆円


防衛関連予算       1.1兆円


外交力強化        0.6兆円


震災などの備え 0.7兆円



とまぁ、こんな感じです。



質問者:

うーん、消費税廃止に相当するかと言われるとちょっと……。



筆者:

特に中小企業支援は介護報酬の支援ぐらいしか僕は評価できるポイントはありません。


消費税廃止は世間一般の感覚とは違って価格を下げる効果はあまりなく、現実は「中小企業を救う効果」「給料を上げる効果」があります。


逆に消費税廃止を超える中小企業支援というのは逆になかなか見つからないのです。


介護に関してはお客さんが高齢者であることから、年金生活者が多いためにサービスの値段を上げることができません。


そのためにどうしても介護に携わる方の報酬を上げることも同時にできないので、絶対に政府がテコ入れを行う必要があるのです。



質問者:

所得減税って壁を178万円に引き上げるためには7兆円とか予算が必要なはずじゃありませんでした?


1.2兆円ってどれぐらいまで上がるんですか?



筆者:

これについて分析されている方がいないのは驚くべきことですが、

今年の春の国会では密かに階層的にではありますが「160万円」まで所得税の壁は上がっています。


しかしこのように、


挿絵(By みてみん)


階層的に減額される複雑な構造になっている上に、保険料を考えるといきなり160万円まで働くようになるのか? と言われると結局働かないのが現状で「働き控え」に対する根本治癒にはなっていません。


恐らくはこの「160万円の壁引き上げ」が1.2兆円分の予算なのでしょう(予算案成立後に引き上げの法案が成立したため)。


つまりここでも「石破政権の延長線上」にしか行っていないことを示しています。


「所得制限なく178万円に拘りたい」としている国民民主党がどう対応するのかが所得税の壁の注目と言えます。



※ちなみにそれまでの所得税控除は所得金額2500万円以上はゼロ、2500万円未満は48万円と一律でした。



質問者:

なるほど……そう言うカラクリがあったのですか……。


危機管理投資が項目ごとのボリュームゾーンとして一番大きいんですけどこれについてはどうなんでしょうか?



筆者:

イギリスサセックス大学教授のマリアナ・マッツカート氏は国家の投資なくして今のアップルもiPhoneはなかったと言われているぐらい国のスタートアップへの投資というのは非常に大事になりますので必要性は高いです。


この発表の当時はその方法までは言及されていませんでしたが、重点分野17項目に対して減税をするという似たような話がありました。


スタートアップ企業であれば利益が出ていないことは当たり前のようにあるために、同じような審査をするのであれば赤字企業も恩恵を受ける給付一択だということを申しあげておきます。



質問者:

「重点支援交付金」というのはどういうものなのでしょうか?



筆者:

これは報道されている中では「低所得者へのお米券配布」などです。

その他にも地方公共団体へその場所に応じた裁量権を持たせた給付方法も追加で含まれるそうです。


お米券配布は暫定的な措置としては良いと思うんですけど、結局は農家の個別補償に基づいた増産が無ければお話にならないです。


なんで農業だけ手厚いのか? と言いますとご飯は誰もが生きていくうえで食べていかなくてはいけないですし、自然を保護する上でも必要があります。


また、日本は耕作できる土地面積が狭く大規模化も難しいために保護していく必要があるのです。


資本主義の競争社会にさらされていくと農業は必要なのにも関わらず採算の合わないために淘汰されてしまいますからね。



◇現実ベースで分析すると……



質問者:

……金額規模で言ったら減税が無理なら、10万円一律給付の方がマシじゃないですか?



筆者:

そう思われても仕方ないですね。


ただ、減税は「増税地獄の将来不安を無くす」という精神的な副次的効果があります。未来に希望が持てないことが結婚や少子化の根本原因だと思っていますからね。


純粋にプラスだと思えるのはガソリン税の暫定税率廃止、

一過性の物であれば電気料金負担軽減ですかね。

この2つは手間もかからず関係各所に指示するだけで十分成し遂げられますから。


簡単に申し上げるのであれば、介護以外の中小企業支援金を廃止して消費税を廃止、所得税の壁を178万円に引き上げれば、

僕の「全体規模で不足」分を補うだけの支援をすることができると思います。


程遠いので10点ぐらいしか価値が無い内容と言えます。



質問者:

なんだか、報道で見聞きした印象と全く違うなという感じが凄くしました……。



筆者:

高市氏を「画期的なことをしている」と過剰に持ち上げたい勢力と、

高市氏を「日本を財政破綻させたい奴だ!」としたい勢力という別方向に現実からズレた2軸が判断を誤らせているんじゃないかなと思っています。


実際のところは全然画期的なことをしていなければ、この程度では全く財政破綻もしません。

むしろ、全く財政出動も減税も足りないという定番の結論になってしまうのです。



質問者:

結局「いつもの自民党」ということなのでしょうか……。



筆者:

高市氏は彼女が尊敬されている安倍氏同様、「凄いことやっているアピール」が上手いんじゃないかなと思います。


固定の岩盤支持層を味方につけて解散総選挙をいつ行うのか? そのことに頭がいっぱいだと思います。


しかし、質問者さんがおっしゃるように自民党である限り根本的には何も変わりません。


そのことを今後も政治・経済などあらゆる分野から分析していこうと思いますのでどうぞご覧ください。

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