表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と神に切り捨てられた俺ですが、唯一授かった“影潜り”スキルで全てを飲み込み、気づけば勇者も王も凌駕してました  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/41

第5話「追放者の逆襲」

 夜の街に、ざわめきが広がっていた。

 盗賊団が動き出したのだ。

 頭バルゴを失ったことで統率を欠き、残党が勝手に暴れ回っている。店を荒らし、民家に押し入り、女や子供を狙う。


 俺たちはそれを見過ごせなかった。


「……やるぞ」


 リクが短剣を構え、ルナが影に潜り込む。

 俺は路地裏に広がる夜の闇を見渡した。

 影が、ざわりと蠢く。

 まるで「今こそ逆襲の時だ」と告げるように。


 最初に狙ったのは、酒場を占拠していた盗賊たちだ。

 酔っ払いながらも刃を振り回し、店主を殴っていた。


 俺は影に沈み込み、カウンター下の暗がりから飛び出す。

 拳で顎を砕き、再び影へ。

 背後に回って一人を引き倒し、リクがすかさず短剣を突き立てた。


「ひっ……な、何だコイツら!」

「影だ! 影に呑まれる!」


 恐怖に駆られた盗賊たちは逃げ出し、酒場は解放された。


 店主は震えながら頭を下げた。

「た、助かった……! あんたは……」

「ただの影潜りだ」

 そう告げて去る俺の背に、民衆の視線が集まった。


 次は広場。

 子供を連れ去ろうとする盗賊を、ルナが影から突き飛ばした。


「や、やめろ!」


 まだ幼い体で必死に立ちはだかる姿に、俺は胸を打たれる。

 影の中から俺が現れ、盗賊を殴り倒す。

 子供たちは泣きながらも、ルナを「すごい!」と抱きしめた。


 ルナの頬が赤く染まる。

 その顔は、俺がかつて欲しかった「居場所」を思い出させた。


 だが――。


「よくも好き勝手やってくれたなァ!」


 咆哮と共に、巨大な影が現れた。

 バルゴだった。

 まだ完全に倒れていなかったのだ。

 巨体は包帯だらけで、片目に血が滲んでいるが、その斧は健在だ。


「影潜り……今度こそ叩き潰してやる!」


 斧が振り下ろされる。地面が裂け、石畳が砕ける。

 俺は影へ飛び込むが、奴の動きは速い。出口を読まれ、斧が迫る。


「おじさんっ!」

 ルナの声。


 その瞬間、俺は閃いた。


 影は“繋がる”。

 ならば、複数の影を同時に繋いだらどうなる――?


 俺は市場の屋台、街灯、家々の隙間。すべての影を一気に結びつけた。

 闇がうねり、巨大な網のように広場を覆う。


「なっ……!」


 バルゴの足元が沈む。斧を振り上げる腕も影に絡め取られる。

 奴は必死に抗うが、俺は全身の力を込めて影を締め上げた。


「お前の暴力はここで終わりだ!」


 最後の一撃を叩き込み、バルゴは血を吐いて崩れ落ちた。


 静寂。

 広場に人々の歓声が広がる。


「盗賊団が……倒れた!」

「影潜りの男がやったんだ!」


 誰もが口々に叫び、俺を見上げる。

 侮蔑の視線は、もうどこにもない。


 ルナが駆け寄り、笑顔で抱きついてきた。

「おじさん! 本当に勝ったんだね!」

「ああ……」


 リクも笑みを浮かべ、肩を叩いた。

「これで俺たちは……ただの最下層じゃなくなったな」


 だが俺は知っている。

 この勝利は始まりにすぎない。

 街を蝕むのは盗賊だけではない。

 王都から流れてくる陰謀の影――それが、じわじわと迫っているのだ。


 神に無能と切り捨てられた俺。

 だが今は胸を張って言える。


「俺は……影と共に、生き抜く」


 ルナとリクが頷き、闇が静かに寄り添った。


第5話ここまで(第1章完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ