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無能と神に切り捨てられた俺ですが、唯一授かった“影潜り”スキルで全てを飲み込み、気づけば勇者も王も凌駕してました  作者: 妙原奇天


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第4話「初めての仲間、孤児少女ルナ」

 路地裏に、しんと静けさが戻っていた。

 倒れ伏す盗賊団の頭・バルゴを見下ろしながら、俺は息を整える。拳に走る鈍痛と、影にかけた負荷が全身に重くのしかかっていた。


 ルナが恐る恐る近づいてくる。

「おじさん……ほんとに、勝ったの?」

「ああ。まだ息はあるけどな。とりあえず脅威は去った」


 ルナの小さな手が俺の袖を握った。

 その瞳は怯えと、同時に確かな信頼で揺れている。


 翌朝。

 街の広場に足を踏み入れると、人々の視線が俺に集まった。


「影潜りの奴だ……」

「バルゴを倒したって噂、本当なのか?」


 侮蔑の眼差しは消え、代わりに畏怖と好奇の混じった視線が突き刺さる。

 俺は肩をすくめ、パンを二つ買い、路地裏へ戻った。


「ほら、朝飯だ」

「ありがとう!」


 ルナが笑顔で頬張る。

 俺もひとかじりしながら、言葉を探した。


「なあ、ルナ……お前、これからどうしたい?」

「どうって?」

「家族とか……帰る場所は?」


 ルナは首を横に振った。

「もういない。ずっとひとりだった。でも……おじさんが助けてくれた」


 言葉は幼いが、その声音には覚悟があった。


「だったら、俺と一緒に来るか? 影に潜れば、ある程度の危険は避けられる。二人なら、生きやすくなる」


 ルナの瞳がぱっと輝いた。

「いいの? わたし……足手まといじゃない?」

「足手まといじゃない。お前は……俺にとって必要だ」


 ルナは涙をこらえながら大きく頷いた。


 それから、俺たちは本当の「相棒」になった。


 俺は影潜りで食料を調達するだけでなく、影の中に物を収納できることに気づいた。

 小さなナイフやパン、ルナの古びた人形さえも。


「わぁ……! 便利だね!」

「お前の荷物も持てる。影は無限じゃないが、工夫次第でどうにでもなる」


 俺が影の練習を重ねる間、ルナは市場で情報を拾ってきた。子供だからこそ、目立たずに人々の会話に耳を傾けられるのだ。


「ねえおじさん。盗賊団、バルゴが倒れたせいで分裂しそうだって」

「……そうか」


 力を示した結果、街に波紋が広がっている。

 俺は考えた。単に生き延びるだけでは駄目だ。この街で居場所を作るためには、盗賊団の支配を完全に崩さねばならない。


 ある夜。

 俺たちの前に、一人の青年が現れた。


「おい……お前ら、影潜りの奴だろ?」


 痩せぎすだが、目は鋭い。腰には短剣を帯びている。


「俺はリク。バルゴの手下だったが、あんたの戦いを見て決めた。……あんたに仕えたい」


 予想外の申し出に、俺は目を細めた。


「裏切り者が信用されると思うか?」

「それでも構わねぇ。盗賊団のやり方にはうんざりしてた。俺は……あんたと一緒に、この街を変えたいんだ」


 リクの眼差しは真剣だった。

 ルナが不安げに俺を見上げる。


 しばしの沈黙のあと、俺は頷いた。

「……いいだろう。ただし裏切ったら、影が容赦なく飲み込む」

「上等だ!」


 こうして俺たちは三人になった。


 その夜、ルナが俺の影からひょっこり顔を出した。


「ねえおじさん。わたし、強くなりたい」

「強く?」

「また盗賊が来たら、わたしも守れるようになりたいの。隠れてるだけじゃ、いやだ」


 その瞳には幼さを越えた強い光が宿っていた。

 俺はしばらく黙り込んだが、やがて笑った。


「わかった。お前にも影の使い方を教えてやる。ただし危険は俺が引き受ける。それが条件だ」

「うん!」


 ルナがにこりと笑った瞬間、影が小さく揺れた気がした。

 まるで彼女を歓迎するかのように。


 こうして俺は、孤児の少女と元盗賊の青年という仲間を得た。

 無能と呼ばれ、神に切り捨てられた俺が、初めて「居場所」を見つけた瞬間だった。


 影は確かに俺を拒まない。

 むしろ――仲間と共にあることで、影はさらに深く広がっていくように思えた。


第4話ここまで

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